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【ノベル8巻10/7発売!】悪役令嬢の矜持〜婚約者を奪い取って義姉を追い出した私は、どうやら今から破滅するようです。〜  作者: メアリー=ドゥ
第六部/裏 濯ぐ手向けの花束を。

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222/225

支払われた対価。【後編】


「ラウドンの、義理のお父様が倒れてしまったの?」

「そうよ。エイデス、病状について誰かに尋ねられる?」


 ウェルミィは娘の頭を撫でながら、自分の席で食後のお茶に口をつけている夫に質問した。

 もし分からなくてもラウドンが戻ってきた時に聞けば良いのだけれど、どんな病状か次第ではしばらく休ませる必要があるかもしれない。


 特に、亡くなる程に病状が重い場合、一気に周りが忙しくなる。


 ガワメイダ伯爵家には後継ぎがおらず、養子を得たという話もないからだ。

 多分ガワメイダ伯爵自身は、娘が引き起こした事件の責任を取って、今代で伯爵位を王家に返還するつもりなのだろう。


 彼に与えられた領地そのものは、キルレイン公爵領の一部を小領として支配地に変えただけなので、書類上の支配者名が変わる程度。

 しかしガワメイダ伯爵は、王都に詰めているキルレイン法務卿の弟であり、公爵領で領主代理として長年仕事をしている、実質的な支配者である。


 与えられている資産の分配や、公爵領の仕事に関する影響は多少なりとも出る。


 一人娘であるローレラルと、その娘婿であるラウドンがそれに対して『自分たちは無関係』とそっぽを向いて不況を買ってしまうと、今度は貴族内の勢力バランスが崩れる危険があった。


 しかもラウドンは、オルミラージュ侯爵家家令、小さいながら子爵領の運営、『サバト』の実効支配と多忙である為、これ以上仕事が上乗せになると彼自身が倒れてしまいかねないのだ。


 そんな危惧をウェルミィが抱いているのに、エイデスは特に焦った様子もなかった。


「病状については、おそらく長年の心労とここ最近の過労が原因だろう。それが体に悪影響以上の病気を与えていないとは言い切れないが」

「……何か知ってそうな口ぶりね?」

「これは公開情報だが、キルレイン法務卿はご高齢もあり、職を辞す準備をなさっていた。それと合わせて、ガワメイダ伯爵から法務卿のご子息に、領地運営の主権を譲るという話が進んでいる」


 そこまで言って、カップの中身を飲み干したエイデスが立ち上がる。

 こちらに近づいてくると、スフィーアに微笑みかけた後、ウェルミィの肩を抱いて頬にキスを落としてきた。


「ねぇ、真面目に話してるんだけど? それで過労になったの?」

「引き継ぎは色々、普段とは状況が違うことが多いからな。疲労も溜まる。お前が心配しているようなことは起こらないが、ラウドンに休みを取らせても問題はない」

「次の法務卿は?」

「多分、第三王弟で、現在は法務卿補佐を務めているティグ・ライオネル公爵だろう。キルレイン公爵家は、次の爵位継承で侯爵家になる」


 それは、ライオネル王国のルールである。


 まず、国王即位等に際して王位継承権を手放して王室から出た陛下の兄弟姉妹は、公爵位を与えられる。

 そこから二代目になった際に、姓がライオネルから……『キルレイン』公爵家のように……別の姓に変わるのだ。

 そして三代目、孫の代まで降って治世や継承側の人柄に問題がない場合、爵位継承の際に『侯爵』位に変わり、以後は完全に臣下として認知される。


 王家の血筋、というだけで永世称号が与えられることは、まずない。


 ライオネル王国の歴史上においても、永世称号は、〝解呪〟という無二の特別性を持つリロウド公爵家と、前・王家の血筋であるアバッカム公爵家に与えられたのみである。


「ティグ殿下……もう閣下とお呼びすべきかしら……を、次の法務卿にっていう話が出たのはいつ頃なの?」


 ウェルミィが冷めた目でエイデスを見ると、彼は黒い笑みを浮かべた。


「当然、五年前にエサノヴァに求婚した頃には、うっすらと話が出ていた」

「で、また権力の座に近いところに、勝手に私(・)の影響力を強めたわけね?」


 おかしいとは思っていたのだ。


 ティグ閣下の熱烈な求婚を、エサノヴァが受け入れたのはまだ良いとして。

 オルミラージュの侍女だった彼女を、親切にもキルレイン公爵家の養子に入れて、侮られない後ろ盾まで作った上で嫁がせたのである。


 そして、キルレイン法務卿のご子息が、領主を継ぎ。

 王家の血筋かつ義娘の婿であるティグ閣下が、法務卿の地位を継ぐ。


 随分と綺麗な形に整えられた状況に、エイデスが一枚噛んでいない訳がなかった。


「私の意向ではない。エサノヴァは、デスターム伯爵家当主、ヌーアの姪だ。報告は受けているが、〝影〟の動向に関する人事は任せている」

「私の最愛の旦那様は、詭弁がお得意ですこと」

「私がウェルミィに『嘘』をつけないことは、最愛の妻自身がよく知っていると思うが?」


 最後のやり取りは、ただの軽口である。

 もうそろそろ、外務省に出勤しなければならないエイデスの頬に、自分の頬を擦り寄せながら、ウェルミィは囁く。


「で、ガワメイダ伯爵が倒れた原因である『長年の心労』の話は、誰から聞いたのかしら?」

「レオだ」


 即答したエイデスは、一度ウェルミィごとスフィーアを抱き締めてから、体を離す。


「彼をその役目から退けることを考えている、と、少し前に話した時に相談して来たからな。ちょうどいい機会と思い、先代陛下に話をしに行っている頃だろう」

「何で先代陛下に?」


 ウェルミィはそこの繋がりが分からず、首を傾げたけれど。


「ローレラルの一件で、自らの首をかけて娘の助命嘆願を行ったガワメイダ伯爵に、職務に殉じるよう勅命を下したのが先代陛下だからだ」


 エイデスが体を離して、いつものファー付きのローブを使用人から受け取りつつ答えを口にする。


「―――『死ぬまで国の為に身を粉にすること、罰を与えぬことが罰だ』、とな」

 

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10/7にノベル版8巻が発売されますので、宜しければお手に取っていただけると嬉しいです♪


今回もがっつり加筆しておりますー♪


どうぞ宜しくお願い致しますー♪

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