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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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泳いだ後のお楽しみ

「全隊遊泳開始!」

「了解!」

「いくぞー!」


 大騒ぎの後、ようやく泳ぎ始めた。波はおだやかで、海面(みなも)は光を受けてキラキラと輝いている。絶好の海水浴日和だ。

 全員浮き輪やビート板などの、浮き具を身につけてるので、溺れる心配はないだろう。

 俺もバイタルサインをチェックしてるしな。

 

 基本的に自由行動。


 水をかけ合って遊ぶ者もいれば、ホセリアとクララ先生から真面目に指導を受けてる者達もいる。

 すでに何人かは見事に泳いでいた。コツを掴んだのだろう。

 女達の運動神経は良いし、基礎体力はあるので覚えるのも早いようだ。


 まあ豪快に泳いでる奴もいるが……。


「どりゃあ! どりゃあ! どりゃあ!」

「ぶはっ! こらあー紅美! 近くでバタフライをするんじゃない!」


 水泳というより、力任せに暴れているだけ。

 腕や足を思い切り水面に叩きつけるので、大量の水しぶきが周囲に飛び散ってしまう。

 近くにいる者達に水が引っかかるので、エラい迷惑だった。


「わりい、わりい」


 と謝りつつ紅美は離れて行った。それでも飛沫は飛んでくるが……。

 


「ンニャ、ニャニャニャ!」

「海は楽しいニャ!」


 年少組と遊んでいたのは獣人達。夏美は水に脅えることもなく泳いでいた。

 密林では川に入ることもあったようだから、慣れているのだろう。

 とはいえ普通の泳ぎ方ではなく、手足をバシャバシャと動かして進む、いわゆる犬かきだ。

 俺に言わせれば猫かきだが。


「ン――――ニヤッ!」


 その夏美の姿が突然消えた。

 溺れたかと思って焦ったが、バイタルに異常はなく、どうやら自分から海に潜ったらしい。

 やがて、夏美の頭が浮かんでくる。


「獲ったニャアアア!」

「すごい、すごい!」


 夏美が掲げた手には魚があった。長い爪に突き刺さっている。

 どうやら素潜り漁をしたらしい。これも昔の名残りかな。

 道具を使わず仕留めるのだから大したもので、獣人の身体能力は計り知れない。

 バケツは魚で一杯になり、年少組も喜んでいた。



「さて、俺も海に入るとするか」


 昔は泳げたような気もするが、少年の身体になってからはどうだろう?

 超能力ばかりに頼ってはいられないので、運動して体を鍛えねばならない。


 俺は打ち寄せる波に向かって歩き、腰まで海水に浸かったところで、ゆっくりと身体を浮かせた。


「よし」


 手足の動きを確かめるように、クロールでゆっくりと泳いでみる。

 体が覚えてるのかもしれんが、問題はなさそうだった。


 それより、女達の視線が気になって仕方ない。全員俺の体をジッとみていた。


「じー…………」

「思ったより逞しいわ」

「これは将来が楽しみね……アッチも」


 ヒソヒソ話になっておらず、なぜか俺は値踏みされてるようだった。


 ……何を期待してるんだ、お前ら?

 

 そして、次々と声を掛けられる。


「アラシお兄ちゃん、泳ぎ方教えて!」

「私達と競争しましょう、司令!」


「わかった、わかった」


 さっきとは違うし、子供らのお願いを断るわけにはいかなかった。

 しょんぼりした顔を見るのは辛い。俺も甘いな。

 順番に相手をしていたのだが、他の女達も列を作って並んでしまう。


 流石に疲れた……。

 


 そして夕方になり、初日の訓練が終わった。


 点呼をとった後、俺達は浜辺から臨時キャンプ場へと向かう。

 軽くシャワーを浴びたあと、着替えずに全員で炊事場へと移動した。


「食いもんを持って来たぞ」

「待ってたぜ!」

「食べるの楽しみ!」


 やってきたのはアーロンと漁師達で、たくさんのクーラーボックスを肩にかけ、食材を持ってきてくれたのだ。


「下処理はしてあるから、あとは焼くだけで十分だ。海の幸を味わってくれ」


「助かる。ありがとな」


 俺が礼を言うと、アーロン達は手を振りながら港へ戻っていった。


「それでは各隊、予定通り焼き方を開始する!」

「了解!」


 すでに石で組まれた竈(かまど)があり、炭火の上に網が乗せられていた。

 炊事班は訓練を早めに切り上げて、準備していたのである。飯ごうで米も炊かれていた。

 今回は魚介類を焼くだけなので、調理は全員でする。小隊ごとにワイワイ騒いでいた。


「よーし、魚が焼けたぞ!」「おいしぃぃぃ!」

「あっ! 弥生。そのイカよこせー!」「……紅美にはあげない」

「タコも美味いであります」「焼いたハマグリ最高です! 静香様」

「うんうん、本当に美味しいわね」


 女達の嬉しい悲鳴が止まらない。初めて食ったせいもあるだろう。

 訓練の後で腹が空いており、フォークや箸が止まらず、焼き上がった物からどんどん消えていく。

 どれを食べても美味いからな。


 俺も適当につまみながら、あちこちを見て回る。

 夏美達は自ら獲った魚も焼いて、一心不乱に食べていた。

 素手での丸かじりで、まさに猫。エルフとノーム達が笑いながら面倒を見ていた。

 志乃も見回りをしていたが、部下達が次々と料理を持ってくるので、食べるしかなかったようだ。


 俺は一緒のテーブルに座って話しかける。


「ははは、やはり志乃には人望があるな」


「部下には厳しく接してるつもりですが、なぜか慕われてしまうんですよね」


「静香もそうだが、真剣に部下の事を思いやってるからだろう」


「はい、司令。それにしてもこんな日が来るとは、夢にも思いませんでした。泥と砂塵に塗(まみ)れて戦い、餓えに苦しんでいたのが嘘のようです。全てアラシ司令のおかげです」


「気にするな。俺は少し手を貸しただけで、これはみんなの力だ」


「それでも感謝します。この恩に報いるためにも、この星の平和を守って、もっと発展させたいと思います。ここだけが私達の楽園ですから、ふふふ…………あと子供をたくさん生んで、人口を増やさないと」


「そ、そうだな。うんうん」


 なぜか俺は背筋が凍ってしまう。一瞬、肉食獣に狙われたように感じたのだ。

 確かに志乃の言うとおりで、多少男は増えたものの、女達が圧倒的に多い。

 いずれはパートナーが必要になるが、今のとこは良い男を見つけてくるのが、難しいので保留だな。俺はガキだし。


 生活基盤を安定させるのが先だ。



「食った、食った、美味かった」


 大量にあった魚介類はすっかりなくなり、女達は満足そうに、腹をさすりながら寛いでいた。

 あとは順番にシャワーを浴びに行く。

 バーベキューの煙で体は汚れるし、食べこぼしが引っかかるから、水着のままでいたのだ。


 夜になって寒くなってきたし、シャワーを浴びた後はスリーピングシャツに着替えた。

 マイ・パジャマを持ってきた者もいる。


「おやすみなさーい」


 やがて全員がテントに入り、消灯となる。訓練で疲れてるので、すぐに寝息が聞こえ始めた。


「いやあああ! タコの触手が体の中にー!」

「あーん、静香様。もっともっと♡」


 ……やばい寝言を言ってる奴もいた。


 こうして一日が終わる。

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