海浜訓練
俺はアーロンの隣に座って話す。
「少しは生活に慣れたか?」
「ああ、おかげさまでな。飯は美味いし昔に比べたら、天と地ほどの差がある。ところで俺達もそろそろ働きたいと思う。いつまでもタダ飯を食っていたら気が引ける」
「それは助かる。実は西海岸に港を作っていてな、漁業を始めようとしてたとこだ。アーロンは本職の漁師だそうだな? なので任せたい。もう船や道具は用意してある」
「そうか、分かった。是非やらせてもらおう。ところで税金は……」
「ないぞ」
「はあああぁ?」
アーロンが大げさに驚いたので、俺は思わず笑ってしまった。
今まで散々絞り取られてきたから、とても信じられないのだろう。
俺は詳しく話す。
「知っての通り、うちじゃ通貨は使ってない。だからアーロン達が必要な分をとってから、余った魚を回してくれればいい。今のとこはそれで十分だ。実際どれだけ獲れるかわからんし、月に一度相談しよう。あとはAIに計算させて、漁獲量や出荷量を決めるといい」
「……なんてゆるい物納だ。こちらに異存はないが、本当にそれでいいのか?」
「ああ、アーロン達はもう奴隷じゃない。俺達の仲間だ」
「感謝する……ここに来れて本当に良かった」
感極まったようで、アーロンは目頭を押さえた。大脱出した苦労もあったろう。
やることは多いので、これからが大変だが楽しみでもある。
俺は本音をもらす。
「実はな西海岸に調査隊を出したところ、竿で釣った魚が美味すぎて、女達が目の色を変えちまったんだ。それで『漁業をしましょう!』となって、俺は開発を急かされた。とにかく、美味いもんには目がないからなー」
「ははは、なるほどな。確かに海の幸はいい」
「それで数小隊が見習い船員として働くから、仕事を教えてやってくれ。あと炊事班も赴任する予定で、魚料理を研究する。そのうち漁村になるだろうな」
「ふふふ、了解した、アラシ」
すでにプレハブ住居は建ててあり、もうすぐ上下水道と電気も使えるようになる。
あとは鉄道で物資を輸送する。ああ、魚保管用の冷凍庫も建てんとあかんな。
連絡要員を除いて、元タルボット星の人達は全員移住することになった。
助けられたとはいえ軍隊と一緒の生活では、居心地が悪かったようで、フルーツ畑や農園に行く者もいた。
――こうして、三か月ほどが過ぎる。
辺境惑星同盟軍が共和国軍に勝った、という情報が入り俺はホッとした。
これで反政府勢力は勢いづく。上級評議員達は何もできず、共和国は弱っていくだろう。
いい気味だと思うものの、まだまだ国力はあるので侮れない。あとなぜか嫌な予感がしたが、それが何かは分からなかった。
日々の仕事に追われてるうちに忘れてしまう。宇宙での戦況は落ち着き、今のとこは平和が続いてるが、訓練は怠らない。
「これより、海浜訓練を行う」
「うおおおおおー!」
女達の盛り上がりは凄かった。建前は訓練だが、海でのバカンスである。
漁港に近い西海岸は広い砂浜があり、背後には森があって、緑豊かな自然な場所だ。
海から吹く風も心地よく、骨休みには最高である。
まずは軍服を脱いで水着に着替える……
「こらあー紅美! その場で脱ぐんじゃない! 丸見えだろうがー!」
「いいじゃん、天音。脱衣所まで行くの面倒くせえし、男は大将しかいないんだから、見られてもかまわねえーよ」
「そういう問題じゃない! 近くには新住民がいるんだから、少しは気をつかえ!」
「へいへい」
と言いつつ、紅美はそのまま着替えてしまう。でかい胸が見えた。
他にも面倒くさがり屋がいて、風紀をあずかる天音と口喧嘩になる。
女だらけで、羞恥心がないのは困ったものだ。
あとなぜか俺の近くに来て、見せつけるように着替える奴もいる……止めろって。
すったもんだの後で、ようやく全員整列した。ホセリアが用意してくれた水着は様々で、際どい物を着てる者もいる。
俺はとやかく言わないが、目のやり場には困るな。
軽いランニングの後で水泳訓練が始まる。実は天女団で泳げる者は、ほとんどいなかったのだ。これまでは陸戦ばかりで、遊泳の機会がなかったせいだ。
カナヅチのままでは、海で活動できないので、遊びがてらに訓練することにしたのだ。
いずれ水兵が必要になる時もあるだろう。
インストラクターは経験者に頼んだ。一人は自宅プールで泳いでいたホセリアと、もう一人はクララ先生である。
「うう、なんで私が……海でほんのちょっと、泳いだことがあるだけなのに……」
水着を着て恥ずかしそうにしながら、準備体操をしていた。
ホセリアと年少組が何度も拝み倒して、来てもらったのだ。
天女団で先生は信用されてるので問題はない。報酬に海の幸をご馳走することで、話がついた。
泳ぐ前に、全員座ってクララ先生の講義を聞く。嫌々引き受けてくれた割には、しっかり予習してきたらしい。やはり真面目だ。
「えー、海には波があり潮の流れも複雑です。沖にはでないように注意してください。あと体調がおかしい時は、すぐに陸に上がってください。周りを見ていなくなった人がいないか、常に注意してください。海では安全第一です」
「生命兆候を確認しますので、皆さんスマートウオッチを、必ずつけてくださいね。何かあれば救難ロボ、『人魚姫』が助けに行きます」
「はーい!」
年少組が返事をした後、ホセリアが補足する。
「それでは、心臓マッサージと人工呼吸のやり方を覚えましょう」
「えっ……」
ホセリアは用意してた人形で、手本を見せてくれた。どうやらこの日のために、練習していたらしい。
クララ先生は何も聞いてなかったようだ。なぜか青くなっている。
「それでは皆さんペアを組んで、練習してみてください」
そして浜辺は大騒ぎになる。
「静香様ー! 私とマウス・ちゅー・マウスを! はあ、はあ、じゅるるる!」
「ああ、悪いな天音。私は人形で練習したからもう十分だ。じゃ、そういうことで……」
「そんなあ……」
諦めきれない天音は、嫌がる静香を追いかけ回す。
「処女先生、私達と実践しましょう! お乳をマッサージします!」
「いやああああ!」
クララ先生も本気で逃げ回っていた。どうやら揶揄われてるらしい。
反応が面白いからな。だから呼んだのだろう。
ただみんなに好かれてるから、本気の奴もいるかもしれん……百合百合だな。
そして……俺も逃げるしかなかった。
「……アラシ、わたしとしよう」
「いやいや、小官とするであります!」
「大隊長を差し置いて、そうはさせんぞ! 司令とするのは私だ!」
真面目にやれ!と怒鳴りたいとこだが、三人の他にも大勢迫ってきたので、俺は思わず神影走を使ってしまう。
ああ、女は恐いな。
水着回ならぬ、セクシー回ですね。ポロリではなくモ……。
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