第8章-159 祭りの男達
僕は少し暗くなった街を歩いた。
お店にかけられたランプが街を照らしている。
「どうしよう。全然決められない。」
悩んでいると、香ばしい香りがしてきた。
香りに釣られて、店を覗くとオシャレな飲食店だった。
「すごい料理。
僕もあんな風に作れたら、すぐに卒業できるのに……。」
僕はその場を離れようとしたが、足を止めた。
「あれ、香り……香りか。
そういえば、ガイさんの家も、コウさんの家も、お嬢様の家も……どの家も、お茶を楽しんでた。」
僕はあたりを見渡し、お茶が売っているお店を探した。近くにケーキやクッキーを売るお店があった。
僕はお店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。」
店内は、カフェになっており、若い店員たちがケーキやお茶をお客に運んでいた。
「お茶の葉って売ってますか?
お世話になってる病院の先生に贈りたくて……優しい香りが欲しいんだ。」
僕は高いカウンターに背伸びをした。
店員は笑顔で、カゴに入ったたくさんのお茶のパックを持ってきた。
「優しい香りで選ばれるなら、このシリーズが人気です。
あとは、爽やかな香りならこちらが……よろしければ、選びますがいかがですか。」
「じゃあ、人気のお茶を少しずつください。」
「かしこまりました。失礼ながら、ご予算は?」
僕が予算を言うと、店員は可愛い袋に金額分のお茶を詰めてくれた。
「ありがとうございました。」
「うん。ありがとう。」
僕はお礼を言い、店を出た。
人気のない場所に行き、そっとバッグを開ける。
「フク、買えたよ。」
フクに見せると、フクはじっと見つめたあと、満足そうに目を細めた。
「次はフクの毛布だね。
さっき、毛糸屋さんがあったから、あそこにあるかも……そろそろ、閉まっちゃうかもしれないから、急いで行こう。」
僕はバッグを締め、急いでお店に向かった。
曲がり角に差しかかった時、誰かの足にぶつかりふらついた。
「うわっ!え……子供?おいおい、大丈夫かよ?」
男の声だった。
僕は声の主を見上げた。
端正な顔立ちをしているが、体は筋肉質でたくさんの紙袋を持っている。
「怪我してねえか?」
僕が頷くと、後ろから金髪の軽そうな男が、大量の荷物を持って歩いてきた。
「大将、まさか子供相手にカツアゲですか?
それとも、子供に誘拐宣言?」
「ちげえよ!勘違いされることを言うな!!
とにかくさっさと、馬車まで荷物運んどけ。」
大将と呼ばれた男は、紙袋の半分を地面に置き、金髪の男をこづいた。
「ちょっと大将!暴力反対!!」
「とっとと行けって。」
金髪の男は笑って去っていった。
僕は2人のやり取りを見て、目をぱちくりした。
「あの、どうして、こんな時間に大量の荷物を運んでるの?」
僕が質問すると、大将は紙袋を持ち直しながら答えた。
「俺たちは祭りの仕事をやってるんだ。
この荷物はその準備。
かなり遅くなったけど、やっと裁判所から、許可が出たからな。
んで、そっちは?
こんなにちっこい子供が、こんな遅い時間に何してんだ?
学校から逃げ出したのか?」
「違うよ。寒いから毛布を買いに……。」
「毛布なら学校が用意してくれるだろ?」
僕は首を横にふった。
「ううん。僕だけのものが欲しくて、買いに来たんだ。
今から、あそこの毛糸屋さんに行こうかと……。」
大将は少し不満げな顔をした。
「あそこはやめとけ。
毛糸は大量にあるが、毛布の種類は少ないし、重い生地ばかりだ。」
大将は毛糸屋とは違う方向に指をさした。
「ここから少し歩くと、左手に雑貨屋がある。
あそこの毛布は質も良いし、柄もたくさんあるし、比較的安い。」
「ありがとう。行ってみる。」
僕がお礼を言うと、大将は真剣な顔をした。
「いいか、終わったら、学校にちゃんと帰れよ?
マジ、今夜ふらついてるの見たら、即、拘束して誘拐するからな。」
「……えっ?」
「冗談だ。ほら、早く行かないと閉まるから急げ。じゃあな。」
大将はそういうと、行ってしまった。
「お祭り……か。
あ、早く行かなくちゃ!!」
僕は雑貨屋に小走りで急いだ。




