第8章-154 屋敷の2人
――お嬢様の屋敷/黒い扉――
風呂から上がったサクは、脱衣所で素早く体を拭き2階へ上がった。
扉が並んでいくつかある先に、巨大な白い扉と、黒い扉が2つ並んでいた。
サクは黒い扉をノックした。
「セキ様、サクです。」
「入れ。」
サクは中に入り室内を見渡した。
室内は落ち着いた茶色をベースとした部屋だった。
黒と白がアクセントとして使われている。
革のソファーや、大きなテーブルがあり、ベッドはとても大きく大人3人は寝られそうだった。
ソファーに座っていたセキが話しかけてきた。
「サク、今日は私の部屋にいろ。
また、何か仕掛けられたら面倒だ。」
「承知いたしました。」
サクは深く頭を下げ、セキと反対側のソファーに座った。
「サク、今日はもう疲れただろう。
私の布団を使え。私はソファーで寝る。」
急な申し出にサクは首を横に振った。
「いえ、俺がソファーで眠ります。
セキ様に風邪をひかれては、補佐官として困ります。」
セキは鼻を鳴らした。
「サク、ここは私の部屋だ。命令が聞けないのか?」
「仕事の命令なら従いますが、今は健康面の話ですので。
どうか、暖かい布団をお使いください。」
「まったくお前は……本当に口煩い。
まるでコウのようだ。」
セキは自分の言葉にハッとした顔をした。
だが、すぐに表情を戻した。
「何でもない。忘れろ。」
「かしこまりました。」
しばらく沈黙したあと、セキが口を開いた。
「分かった。
ベッドは私が使う。
だが、お前にも使ってもらう。
広さは問題ない……いいな?」
「一緒……ですか?
しょ……承知しました。」
サクは戸惑いつつ頭を下げた。
セキは立ち上がり、ベランダに出た。
冷たい風が部屋に流れ込んでくる。
「サク、こっちに来い。」
サクがベランダに出ると裏庭が見えた。
中央には光る木が静かに光り、その奥には湿地帯が広がっていた。
サクが目を見開く。
「湿地帯……しかも光る木?
広場と同じ……いや、かなり小さい。
セキ様、これは?」
「お嬢様はこの光る木にエネルギーを流し、広場の光る木に送っている。
エネルギーはそこから世界に渡っている。」
「エネルギー?
草木が枯れないための?」
「そうだ。おかげで全てが生きている。
……地球という世界がある。
エネルギーは、そこから抽出したものだ。
光る石、光る木、光る鳥……光っているものは、その影響が強く出ているせいだ。」
「……なぜ、この話を俺に?
レイ様もご存じなのですか?」
「さあな。
……レイにはまだ教えていない。
そろそろ寝よう。」
ベランダから部屋に戻る。
セキは鍵を閉めると、布団に静かに入った。
サクも布団に入り込み、なるべく端の方に体を寄せた。
「明日は早くにここを出る。しっかり休め。」
「はい。おやすみなさい、セキ様。」
サクは、セキの寝息が聞こえてくると、布団から出てソファーに寝転んだ。
「誰が国のトップと背中合わせで寝られるんだよ。」
サクがソファーで寝ようとした時、そっと扉が開いた。
細い光と共にお嬢様が入ってきた。
サクは薄目を開けて、寝たふりをした。
お嬢様はセキの顔を覗き込んだ。
「やっぱり、相当疲れてたんだね。
疲れてる時は、セキはぐっすりだもん。
……私みたい。」
お嬢様はしばらくセキを見ていたが、やがてゆっくりとセキの布団に潜り込んだ。
しばらくして2人分の寝息が聞こえてきた。
「……まじかよ。」
サクはソファーから起き上がり、そっとベッドを覗いた。
お嬢様はセキに抱きつき、安心したように眠っていた。




