第8章-153 湯煙と真実
ーお嬢様の屋敷/風呂ー
セキとサクは、お嬢様に促され風呂に入った。
サクは息を呑んだ。
「これは……ヤバいな。
ガーディから聞いてたが、想像以上だ。」
湯気が立ち込める奥には、普通の湯以外に、薬湯や打たせ湯まであった。
セキは慣れた様子で体を洗い、薬湯に浸かった。
サクも追いかけるように、体を洗い薬湯に入る。
湯が波打ち、浴槽から溢れ出た。
「セキ様。この家は、どうやって維持しているのですか?」
「全てはお嬢様が抽出している地球という世界からのエネルギーだ。
食料や家具などは、私が出している。」
「……セキ様が?」
セキは濡れた髪をかきあげ、浴槽の縁に寄りかかった。
「正確には裁判所からだ。
つまりは税の一部……国民には内緒だがな。」
「マジかよ。」
呆気に取られるサクにセキが答える。
「この屋敷が無くなれば、この国の大地や植物は数年で枯れる。必要予算だ。」
サクは黙った。
打たせ湯の音だけが響いている。
「……もう一つよろしいですか?」
「言ってみろ。」
「お嬢様がもしお亡くなりになったら、どうなるのですか?
それに人間や鳥を作るとは、いったい……それと、お二人の関係も。」
セキは軽く息をはいた。
「質問が多いぞ。
お嬢様が亡くなれば、同じ役目を持つ者が、この屋敷で生まれる。
別の個体だ……性別も違うかもしれん。」
サクは驚愕した。
温かい湯が冷えたように感じた。
「まさか、あの2人も!?」
「リュウとフィナは違う。
あれはお嬢様が囲っている、ただの使用人だ。
人間や動物は、ただの気まぐれだ。
お嬢様は気まぐれで命を作る。
ほとんどが失敗して、すぐ消えるがな。」
サクはセキに近づいた。
「ま、待ってください。
新しく生まれて、フィナさんたちがいなかったら、一人で生活を?
しかも気まぐれで命って、どうやって……。」
「命の作り方は私も分からん。
それに、心配はない。
……世話係も同時に生まれる。」
「え?じゃあ、お嬢様の世話係は、今どちらに……?」
セキはサクから離れ、薬湯から上がった。
「もう、これ以上はいいだろう。」
サクは湯の中で頭を下げた。
「し、失礼いたしました。」
セキは掛け湯をし、サクに振り返った。
「サク、お前は賢い。
もう戻れない所まで私は教えた。
私が言いたい事は……お前なら分かるな?」
サクは震える手を湯の中で抑えた。
「もちろんです。
墓まで持っていきます。」
セキは頷いた。
「それでいい。私は先に上がる。
お前は好きなだけ入れ。貴重な機会だ。」
「ありがとうございます。」
「風呂が終わったら、2階の1番奥の部屋まで来い。
扉が2つある。黒い扉が私の部屋だ。」
セキは風呂から上がっていった。
「あーもう、何がなんだか……。」
サクは薬湯から上がり、打たせ湯を全身で浴びた。




