第8章-143 レイの治療
僕は医療バッグを持ち、コウと共に医務室に入った。
室内では、足に包帯を巻いたレイが簡易ベッドに座っていた。
レイがコウと僕を見て驚いた顔をした。
「コウさん……と、ゼロユイさん?」
僕がレイに頭を下げると、コウは診察用の椅子に座った。
「レイさん、災難でしたね。怪我は大丈夫ですか?」
「はい。私は体を押されて転んだだけなので。
先ほど、医療班に治療してもらったので、もう大丈夫です。」
コウはレイに巻かれた包帯を見た。
「おかしいですね。
転んだだけにしては、大袈裟な治療に見えますが……医療班はどちらに?」
「実は転んだ場所に折れた木があったんです。
その先端に足が擦れてしまって……。
医療班からは、しばらく安静にしていれば問題ないと言われました。
今は警備隊と一緒に、今回のことを書類にまとめてくれています。」
「そうでしたか。
それでしたら、今日はあまり体を動かさない方がいいですね。
診察はまた後日にしましょう。」
「いえ、せっかくここまで来て頂いたのに……。」
レイの言葉を遮るように、コウは穏やかに笑った。
「無理をしてはいけません。
今はしっかりと足を治してください。
セキさんも、貴方を心配していましたしね。」
「セキ様が?」
「そうですよ。レイさんは頑張っていますし、結果も出しているんですから。
監査も無事に終わったのでしょう?」
レイは顔を赤くし、静かに頷いた。
「そういえば、ゼロユイさんはどうしてここに?」
「ぼ、僕は……。」
いきなり話を振られ、口がうまく動かなかった。
コウが代わりに話し始めた。
「ゼロユイさんは、ボランティア中なんです。
今日は僕の助手なんですよ。」
レイが顔を上げた。
顔の赤みは完全にひいている。
「じょ……助手?ゼロユイさんが?」
「フフッ、セキさんにも、サクさんにも驚かれてしまいました。」
「そ、そりゃ驚きますよ。
こんな小さい子供が裁判所に助手として来るなんて……負担ではないのですか?」
レイは僕を心配そうに見た。
僕は医療バッグを握りしめ、レイの顔を見返した。
「うまく言えないけど……緊張とか、不安とか、それはあるけど、負担じゃないよ。」
「それなら、いいですが……。」
レイはまだ心配していた。
コウはレイを落ち着かせるように、ゆっくりと頭を撫でた。
「レイさん。確かに驚いたかもしれませんが、ゼロユイさんは大丈夫ですよ。
セキさんの前でも、完璧に動いてくれましたから。」
「セキ様の前で?それは……すごい。」
レイの視線がわずかに揺れた。
コウは撫でるのをやめ、軽く笑った。
「ええ、また連れてくるつもりですので、今後もよろしくお願いしますね。」
コウはそう言うと、僕の手から医療バッグをそっと取り、僕と手を繋いだ。
「それでは、僕たちはそろそろ病院に戻ります。
レイさん、お大事になさってください。」
「はい。ありがとうございます。
ゼロユイさんもお気をつけて。」
「ありがとう。レイさん、またね。」
僕は手を振り、コウと一緒に医務室を後にした。




