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君といきたい ー不要品AIと小さなフクロウの旅ー  作者: yunimituki
第8章ー裏側の中心へー

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141/160

第8章-141 過去の新聞

診察が終わり、最後に渡された道具を消毒してバッグに仕舞い込んだ。


セキはまくり上げていた服を整え、僕をまっすぐに見た。


「名前は、ゼロユイだったな。」


名前を呼ばれ、自然と背筋が伸びた。

コウは残りの水を飲んでいる。


「お前はコウの助手になりたいのか?」


僕は思わず下を向いた。


「分からないけど、お医者さんが格好いいとは思ってるよ。」


セキは腕を組み、軽く指で肩をトントンと叩いた。


「そうか。私の診察の補助までして、軽い覚悟だな。」


「……ご、ごめんなさい。

ねえ、セキさん。どうして僕をそんなに怖い目で見るの?

僕、何かしちゃったの?」


「怖い目……か。

いいだろう。教えてやる。」


セキはそう言うと、ソファーから立ち上がり、棚から書類の束を取り出した。


「読め。」


テーブルに放られるように置かれた資料を、僕は恐る恐る手に取った。


ところどころ文字が掠れた、古ぼけた新聞だった。


「う……うん。えっと……。」


僕は大きな見出しを目で追った。



――裁判長アサハがついに処刑される――


裁判長の最後の言葉は……。


『僕の最後の言葉?

じゃあ、僕の大切な人たちに捧げるよ。


僕を愛してくれてありがとう。

だから、僕は君たちが求めたものを用意したんだ。


君たちは喜んで全てをもらってくれたよね。


僕はそれが嬉しかった。


そして思い出したんだ。

この世界に送られた理由を……。


僕は自由を見に来たんだ。


そして分かった。

自由な世界とは、大切な者たちに囲まれて生きることだ。


それが君たちだったんだ。


――さあ、僕の大切な者たちを奪ったセキ。


僕を彼らの元へ送ってくれるんだよね。


夢のような世界だったよ……ありがとう。』



「……こ……これ、何?」


僕は新聞を読むのをやめ、テーブルの上に戻した。


セキはソファーに座り直した。

淡々と語った。


「私はお前と、この記事の人物が同じに見えている。

座れゼロユイ。コウは席を外せ。」


コウはカップをテーブルに置き、セキを穏やかに見た。


「ゼロユイさんは僕の助手ですよ。

勝手に取られては困ります。」


「……生まれて1年も満たない子供に、なぜそこまで肩入れする?」


「セキさんこそ、こんな小さな子供相手に、何をそんなに心配しているんですか?」


セキはテーブルを強く叩いた。


「過去のことを忘れたのか!?

あいつも、この子供のように、頭が良く……人を虜にした。

瞳の色も同じ……瓜二つと言ってもいい!!」


セキの怒号が室内に響く。

コウは笑うのをやめ、顔を引き締めた。


「セキさん、落ち着いてください。

ゼロユイさんと前裁判長は、確かに似ている部分が多いと思います。

ですが、本人ではありませんよ。」


「根拠のないことを話すな!


そいつが過去に、

『こんな世界に連れて来られた』と言っていたという報告もある!!


コウ、お前はその子供に魅了されているんじゃないのか!?」


怒鳴り声を上げるセキに、コウが穏やかに話した。


「セキさん。魅了されているなら、僕がこの子に使われているはずです。


それに、小さな子供の言葉ですよ。

言い間違いなんてよくあるでしょう?」


「小さな子供が、そのような発想をすることがおかしいとは思わないのか!?」


「ずいぶんと極端ですね。

セキさんは、今この子が何をしたか忘れたのですか?

僕の補助をする姿は、危険に見えましたか?」


僕が体を縮こませる中、2人は強く睨み合った。


暫くの沈黙が続いたあと、

セキはソファーに座り直し、足を組んだ。


「くそっ!話がまとまらん。」


「そうですね。

これ以上、話をしても平行線です。


セキさん。

この件は保留にしませんか?


危険かどうか……また改めて話しましょう。」


コウは新聞を棚にしまうと、ソファーに戻り、震える僕を隣へ手招きした。


「ゼロユイさん。こちらへ。」


僕が近づくと、静かに抱き寄せた。


「驚かせてしまいすみません。

レイさんたちが戻るまでに、お茶を飲んで落ち着きましょう。


今度は僕が淹れますから。」


僕は小さく頷いた。

僕を抱きしめるコウの手はとても温かく優しかった。


セキは僕達を暫く見ていたが、無言で裁判長の椅子に戻り、書類の処理を始めた。

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