第7章-134 黄色のペンダント
「贈り物?僕、お金は寮で……。」
「私がお金に困ってると思う?」
「ごめんなさい。
リュウさんに連れてこられたから、渡せるものは何も……。」
「へえ、ないんだ。」
お嬢様は揶揄うように、僕のバッグを指差した。
「その中の、黄色いフクロウは?」
僕はバッグを強く抱き寄せた。
「フクはダメだよ。
僕のものじゃない。友達だから。」
「へえ、友達をバッグに入れる趣味があるんだね。」
「違う。フクは珍しいから、守ってるんだ。」
僕とお嬢様の言い合いに、バッグからフクが顔を出した。
虹色の羽を咥えている。
「フ……フク!?」
フクはバッグから飛び出すと、虹色の羽をお嬢様に差し出した。
お嬢様は羽を受け取ると、まじまじと見つめた。
「へえ、虹色の子がこの羽を渡したの?
首周りしかない色なのに……珍しい。」
「ホウッ!」
フクは力強く鳴いた。
その姿にお嬢様はほほえんだ。
「分かった、貴方の勇気に免じてあげる。
いいよ。この羽が贈り物でも。」
「待って!!」
僕はテーブルに手をついて立ち上がった。
「それは、フクの大事なものなんだ。
ずっと……この世界に来てから、大切にしてた宝物なんだ。」
「じゃあ、どうするの?
私に忠誠でも誓って労働でもする?」
僕は頭を抱えた。
ふと、リュウが病院に来た日の記憶が蘇った。
お嬢様はコウが好きだ。
僕はそっとバッグのサイドポケットを触った。
まだ小箱が入ったままだった。
「思い出したんだ。
僕も宝物が……一つだけあるんだ。」
「へえ、何?」
「僕、コウさんが大好きなんだ。」
コウという言葉を聞いて、お嬢様の目が少し柔らかくなる。
「私もコウが好き。それがどうしたの?」
「実は……コウさんから前にもらったペンダントがある。
これじゃ、だめかな?」
お嬢様に小箱を差し出した。
「コウのプレゼント?」
お嬢様は受け取り、小箱を開けた。
黄色い雫型の宝石が静かに光った。
宝石の周りは、美しい銀色の羽で縁取られていた。
お嬢様は細部まで見ると、ペンダントをテーブルに置いた。
「コウの行きつけのお店のものだね。
いいものだけど、私には似合わない。」
お嬢様はそう言うと、扉を開いて叫んだ。
「リュウ!来て!!」
しばらくして、リュウが入ってきた。
「お嬢、どうしました?」
「これ、着けて。」
お嬢様はリュウの手にペンダントを押し付けた。
「これ?なんかめちゃくちゃ高そうっすね。」
リュウは不思議そうな顔をしてペンダントを受け取った。
「リュウさんに着けるの?」
僕が聞くと、お嬢様が振り返る。
「私に贈られた物を、私のものに着ける。
何も問題はないでしょう?」
リュウが首に紐を通した。
「なかなか似合うね。リュウはこれ好き?」
「まあ、好きか嫌いかって聞かれたら、好きな方ですね。」
お嬢様は満足げに僕に向き直った。
「贈り物は、今のところこれでいいよ。」
「……今のところ?」
「うん。また次も来てくれるんでしょ?」
僕が硬直するなか、フクは虹色の羽を咥え、バッグに飛び込んだ。




