第7章-123 忘れた始まり
ーお嬢様の屋敷ー
フィナが自室で肌のケアとメイクをしていた。
リュウは後ろに立ち、腕を組んで見ている。
「フィナ。お前は綺麗なんだからメイクはいらないだろ?」
「今夜はいるの。ガーディが来るんだから。」
「それは、それは……恋する乙女はなんと大変なことか……。」
「揶揄わないでよ。」
ケタケタと笑うリュウに、フィナは頬を膨らませた。
「リュウだって恋人が出来れば分かるよ。」
「私は紳士だから女性には手を出さないんだ。」
「もう、本当に調子良いんだから。」
フィナはメイクを終わらせた。
次に髪を整え、ガーディからもらった髪飾りや指輪をつけた。
リュウが小さく拍手をした。
「完璧じゃん。」
「……ありがとう。」
少し赤くなるフィナの肩に、リュウは軽く手を乗せた。
「さすが私の妹。
これでガーディもフィナを見て呼吸困難だ。」
「……もう、突っ込まないからね?」
1階から微かに鈴の音が聞こえた。
フィナの顔がパッと明るくなる。
リュウを置いて、一目散に玄関へと降りていった。
「ガーディ!」
扉を開けると、赤いスカーフを巻いたガーディが立っていた。
「フィナ、会いに来ました。今日も綺麗です。」
「ありがとう。ガーディも格好いいよ。
今日はいつまでいられるの?」
「明日は休みなので、明日までずっといられます。」
フィナが満面の笑みになる。
「嬉しい!
たくさんお話ししたかったの。」
ギュッとガーディの腕にしがみつく。
ガーディはフィナに引っ張られるように屋敷に入った。
「よっ!バカップル。調子はどうです!?」
リュウは階段から2人を笑って見ている。
「もう!邪魔しないでくれる?」
「ヘイヘイ。邪魔者は消えますよ。
夕飯だけは忘れないで作ってくださいよ!」
リュウは2階の自室に戻っていった。
「行こう、ガーディ!」
フィナとガーディは裏庭に出た。
美しい湿地帯と、光の木が2人を出迎えた。
光の木の下のベンチに座る。
「フィナは本当にこの庭が好きですね。」
「うん。ここが一番落ち着くから。
ガーディと一緒だと、更に落ち着くの。」
フィナの銀の髪が風になびく。
ガーディはその髪を優しく押さえた。
「寒くはありませんか?」
「うん。ガーディがいるから。ガーディは?」
「私は暑さ寒さは感じません。」
「知ってる。でも、気になるの。」
「ありがとうございます。」
静かな時間が流れる。
短い沈黙のあと、ガーディは手を握りしめた。
金属の音が小さくなる。
「フィナ。貴方に謝らなければいけない事があります。」
「え、謝るって、何を?」
フィナが不思議そうな顔をしてガーディを見る。
ガーディはベンチから立ち上がり、頭を深く下げた。
「私はフィナが好きです。とても大切です。
フィナとの事は全て覚えているつもりでした。
ですが、最初にどこで知り合ったか、忘れてしまいました。
大切な事を忘れてすみません。
どうか教えてください。私は……フィナとどこで知り合ったのでしょうか?」
ガーディの突然の謝罪に、フィナは目を見開いた。




