第7章-119 扱いづらい補佐官
ーその頃、裁判長室ー
裁判長室ではセキとレイが書類を処理し、サクが次々にファイルに整理をしていた。
サクは補佐官として、新しく支給された、金の刺繍が入ったローブを纏っている。
セキが書類を処理し、ペンを止めた。
「レイ、そろそろ休憩に行ってこい。」
レイは狼狽える。
「私よりセキ様の方こそ休んでください。
怪我がまだ治って……。」
「私の事は心配しなくていい。行ってこい。
サクはその後だ。」
レイは仕方なくペンを置いた。
「ありがとうございます。」
レイが出て行ったあと、サクはセキに話しかけた。
「セキ様。コウ様から、食事と睡眠はきちんと取るように言われてませんでしたか?」
セキは軽く笑うと、再びペンを書類に走らせた。
「サク、お前はコウに負けず劣らず口うるさい。」
「ええ、口うるさいですよ、俺は。
手のかかる弟と弟分がいるんでね。」
サクも軽く笑い、レイの机に腰掛けた。
セキと一緒に書類処理を始めた。
「サク、弟分はゼロユイの事だな。
お前の弟はガーディだったか。
どのような人物だ?」
サクは手をとめた。
セキからプライベートの話をされるのは初めてだった。
「はい。弟は警備隊で、鎧姿で生まれて今もずっと鎧です。
怪力で、子供の頃は力加減が分からなかったみたいで、大変でしたよ。
ペンをボキボキ折ったり、体育は他生徒が危険だと、見学ばかりさせられていました。」
セキは手を動かしながら話を聞いた。
「だけど、やけに馬鹿正直で、優しくて、繊細で、隙あらば恋人の話をします。
なにかと、俺を優先したり、抜けてるところもあって可愛いやつです。」
「処刑の際、お前の後ろにいた奴か。
やけに信頼しているな。」
「見ていたんですね。
そりゃ、小さな頃から俺の後ろをくっ付いて歩いてたら、愛情くらいわきますよ。」
セキはサクを見て、軽く机をトントンと指で叩いた。
「お嬢様に何か話しかけられていたが、何を聞かれた?」
サクは手を止め、セキを見た。
セキの目は鋭く真剣だった。
「俺は話しかけられてません。コウ様だけです。」
「ガーディの方は?」
「特に何も……。」
サクはそれ以上は何も言わずに、じっとセキを見た。
セキは腕を組み、息を吐いた。
「サク、お前も区切りがついたら休憩に行け。」
「恐れ入ります。セキ様も、後ほどごゆるりと。」
サクは書類をまとめ、セキにお茶を一杯入れ、部屋を出ていこうとした。
セキが引き止める。
「サク。」
「なんでしょうか?」
「その服、馴染んできたな。」
「ありがとうございます。」
サクは優雅に礼をし、部屋を出た。
「……なんとも、扱いづらい。」
セキは一人、サクの淹れたお茶を、ゆっくりと口にした。




