第7章-118 良い護衛
病室のベッドの上で、僕はフクと向き合っていた。
「フク、よく聞いてね。
ガーディさんや、サクさん、フィナさん達には、威嚇したり叫んだりしないよね?」
「ピィッ」
フクは元気よく鳴いた。
「そう。同じようにガイさんも威嚇したらダメなんだ。」
フクは首を横に傾けた。
僕はため息をついた。
「あのね、フク。
白い鳥や虹色の鳥に、フクは突いたり、爪を立てたりしないよね?」
「ホウッ!」
フクは胸を張り力強く鳴いた。
「コウさんも同じ。傷つけたらダメなんだ。」
「ギッ!」
「フク、お願い。追い出されちゃうよ……。」
その最中、ガイが戻ってきた。
僕はフクを咄嗟に引き寄せた。
「あの、ガイさん。フクは、もう攻撃したりしないよ。だからーー」
僕の言葉をガイが軽く手を上げて止めた。
「別に追い出さなくて良い。
コウ様が決めた事だ。
だが、攻撃してきたら容赦はしない。
……それだけだ。」
「ほ、本当に?
ありがとう……そういえば、コウさんは?」
「コウ様は別の病室に行かれた。」
ガイは自分のベッドに座った。
短い沈黙のあと、ガイが口を開いた。
「ゼロユイ。」
「な……何?」
「その鳥は大切にしろ。良い護衛だ。」
「え?」
意外な一言に目が点になる。
フクは僕とガイを交互に見た。
ガイはおもむろに立ち上がり、棚からタオルをとった。
「俺はそろそろリハビリの時間だ。
ゼロユイ、あまりその鳥を好きに飛ばせるな。
物を壊されたらたまったものじゃない。
ペットは飼い主に似るというからな。」
ガイが、病室のドアノブに手をかけようとした。
その瞬間、フクは僕の腕から抜け出し、ガイの足元に着地した。
「なんだ!?」
ガイは身構えたが、フクは片方の翼を広げ短く鳴いた。
「ホウッ!」
ガイは唖然として、僕を見た。
「こいつは何と言ってるんだ?」
僕も戸惑いながら答える。
「多分、行ってらっしゃいとか、大丈夫だよとか……頑張って……かな。」
ガイは軽く首を横に振った。
「奇妙なコンビだ。」
ガイは今度こそ病室をあとにした。
フクは再びフワリと飛び、僕の腕の中に戻ってきた。
「偉かったね。」
フクは目を細め、僕の胸におでこを擦り付けた。
「ねえ、フク。聞いて。
最近、考えてる事があるんだ。」
フクをベッドの上に置き、向かい合って座った。
フクは僕をじっと見上げた。
「僕、最近ボランティアに行った町医者の先生に、『うちに来ないか』って言ってもらえたんだ。
社宅も小さいけどあるんだって。
学校よりも、たくさん時間がとれるから、フクとたくさん遊べるよ。
卒業したら入ろうかなって思ってるんだけど、どうかな?」
「ピピィッ!」
フクは嬉しそうに鳴いた。
「良かった。
じゃあ、学校の先生にも、相談してみるよ。楽しみだね。」
フクを優しくなでた。
病室の外では、コウが壁に寄りかかり、静かに二人の対話を聞いていた。
「なるほど……そうでしたか。」
コウは静かに病室から離れた。




