第7章-117 フクの嫌いな人
病室では、目覚めたフクがガイを警戒していた。
「ギー!ギギー!!」
僕は必死でフクを抱いて押さえた。
「だめだよ、フク。
ガイさんは僕たちをもう襲わないよ。」
ガイは片手でお茶を飲みながら、僕達を一瞥した。
「……俺から襲った事などないが?」
コウが笑いながら入ってきた。
「ずいぶんと賑やかですね。
ガイさん、お二人と仲良くなったのですか?」
ガイは鼻を鳴らした。
「子供と鳥の扱いなど分からん。」
コウが笑うと、フクはコウに気がついた。
コウを睨みつけている。
「フク?どうしたの?」
コウはフクに笑いかけた。
「フフッ、どうしてそんな目で見ているのでしょう?
睨んだ顔も可愛いですけどね。」
コウがフクを撫でようと、フクの頭に手を伸ばした。
コウの手がフクの羽に触れる瞬間、フクはコウの手を強くつつこうとした。
「ギッ!」
コウはサッと手を下げた。
「フク!?何してるの!?」
僕はフクを体に引き寄せた。
ガイは眉間に皺を寄せる。
「フク、どうして?
コウさん……怪我しなかった?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと避けましたから。」
フクはコウをしばらく睨み、ソッポを向いた。
「……ごめんなさい。」
僕とコウのやり取りを見ていたガイは冷たく言い放った。
「コウ様、その黄色い鳥は追い出した方が良いのではないですか?」
僕はガイの一言にギュッとフクを強く抱きしめた。
コウは軽く息を吸い、穏やかにガイを手招きした。
「ガイさん、隣の休憩室まで来てくれますか?」
ガイはコウに言われた通りに病室を出た。
休憩室に入り、椅子に座った。
「コウ様、なぜあの子供に何も言わないのです?
恐れながら、コウ様はあの子供の肩を持ちすぎです。」
コウはクスクスと笑った。
「なぜ?それは前にも話したでしょう?
あの子が僕の大切な助手だからです。」
「助手?あれはあの場限りの話では無かったのですか?」
「ええ、最初はそのつもりでした。
ですが、今は違います。
僕は本当にあの子を助手に、そして後継者にするつもりです。」
コウの真剣な顔に、ガイの体が僅かに震えた。
「ご冗談を……。
コウ様には、たくさんの助手や、育てられた医師達がいるではありませんか。」
「セキさんにも同じことを言われました。
でも、僕はあの子を気に入ってしまったんです。」
ガイは足に力を込め、無理やり震えを抑えた。
「セキ様ですか?」
「そうですよ。
セキさんにも話しました。
『勝手にしろ』と肯定してくれましたよ。
それと、先ほどゼロユイさんの教員とも話しましてね。
ゼロユイさんを病院に迎えるようにお願いもしました。」
ガイは低い声を出した。
「コウ様、それはあの子を働かせるという事ですか?
法律に違反します。」
「安心してください。
ただのボランティア推薦です。
少しお手伝いをしてもらって、少しお小遣いを渡して、社宅を用意してあげるくらいです。
専属ボランティアなら、よくある対応です。
法律には違反しないでしょう?」
「まだ若すぎます。」
ガイの問いに、コウは穏やかに笑った。
「ボランティアに、年齢制限なんてありません。
それにゼロユイさんが、腕の良い医者になれば、国のためにもなります。
警備隊の安心にもつながりますよ。」
「納得できません。」
「フフッ、あまり怖い顔をしないでください。
それに、納得してくださらなくて結構です。
僕は何も、違反はしてませんからね。」
ガイの顔がこわばる。
コウは椅子にゆったりと座り直した。




