第7章-114 三頭の馬
リュウは屋敷の中を通り抜け、奥にある扉を開いた。
そこは先ほどの湿地帯とは違い、手入れが行き届いた芝生の庭が広がっていた。
僕はリュウを見た。
「ここ、裏庭?」
「何言ってんですか。
ここが前庭で、さっきの湿地帯が裏庭ですって。
それよりほら、あそこにいるんだ。」
端の方に、木でできた小屋があり、その近くには立派な馬車が置かれていた。
リュウは僕を小屋の前で降ろすと、わざとらしく手を広げた。
「私の友人達を紹介するよ。
寝てるから、静かに入ろう。」
リュウが小屋を開けた。
三頭の馬が身を寄せ合って眠っていた。
一頭は真っ白で、もう一頭は真っ黒。
残り一頭は二頭と比べると少し小さめで茶色の毛色をしていた。
「綺麗だろ?
あの白と黒は体力もパワーもあるから、馬車をしっかり引いてくれる、頼れるパートナーだ。
あの茶色は私の一番の古い友人だ。
パワーは並だが、体力とスピードが桁違い。
私一人で出かける時は必ず連れて行く。」
馬の話をするリュウの目は、キラキラと輝いている。
大切な家族を紹介しているようだった。
「リュウさんは馬が好きなんだね。」
「馬だけじゃない。
私はフィナも、お嬢も大好きだ。
……そろそろ閉めよう。風が冷たい。」
扉を閉めようとした時、茶色の馬の目が少し開いた。
リュウが笑いながら語りかける。
「起こしちゃったか。悪いがまだ夜なんだ。
明日の朝ご飯までゆっくりしててくれよ。」
馬はリュウの言葉を聞くと、耳をパタパタと動かし、また眠りについた。
リュウはヒラヒラと手を振って、そっと扉を閉めた。
リュウにずっと気になっていた事を聞いてみた。
「ねえ、リュウさん。
どうして、フクがフクロウって分かったの?
この世界にフクロウはいないんでしょ?」
「分かった、分かった。
話すからもう少し離れよう。
話し声が聞こえたら、馬がまた起きる。」
リュウと僕は屋敷の中に戻り、近くのソファーに腰掛けた。
「私がなぜフクロウを知ってるかって?
そりゃ、この屋敷がそのフクロウがいる世界と繋がってるからだ。」
僕は目を見開いた。
「どういうこと?
フクロウは、本物の人間がいる世界にいるんでしょ?」
「本物ってなんだよ、本物って……。
とにかく、お嬢がその世界……確か、地球って言ってたかな。
それと繋がってるんだ。
フクロウはその時に、お嬢が見せてくれた映像の中にいた。」
僕は頭を抱えた。
「それって、僕が電子世界で学んだ世界……なのかな?」
リュウも頭に手をやった。
「電子世界?それは知りませんけど……とにかく、お嬢は地球からの情報が流れ込みすぎないように調整してるらしい。
あまり流れすぎても、無くても色々と問題になるんだってさ。」
「よく、分からないよ。」
「だろ?
私も意味不明なんだ。
そういえば、ニャアや、白と虹色の鳥はお嬢様が作ったらしい。
地球の猫や鳥を参考に作ったって言ってましたね。
まあ、あの鳥達はデカすぎて、外に放したって言ってましたけど。
こんなにでかい庭が二つもあるし、最後まで近くに置いてやりゃ良いのに。」
「え?えっと……ごめん。混乱してきた。」
僕が唸っていると、フィナが裏庭からフクを抱いて部屋に入ってきた。
「撫でてたら寝ちゃった。」
フィナは笑顔で、寝ているフクを僕にそっと渡した。




