第7章-112 寝かしつけ
ー病院/ガイの病室ー
ゼロユイは毛布に包まれたフクと一緒に眠っていた。
コウはそっと布団をかけ、ソファーに座るガイに静かに話しかけた。
「ゼロユイさん、眠ってしまいましたね。
フクさんに会えてほっとしたのでしょう。
ガイさんも見てみてください。
ほら、とても可愛い寝顔ですよ。」
「いえ、私はけっこうです。
それより、先ほど言いかけた言葉は何だったのですか?」
コウはソファーに戻ると、ガイに静かな声で話し始めた。
「リュウさんの話ですね。
彼はそもそも学校に行っていません。
お嬢様の家に早くから入りましたから。」
「学校に行っていない!?
そんな筈ありません。学校は今は義務です。
あの歳ならば、とっくの昔に卒業してーー!!」
「ガイさん、ゼロユイさんが寝ています。
声を落としてください。」
ガイは手で口を軽く押さえた。
コウは軽く笑い、話を続けた。
「リュウさんが住んでいるお嬢様の屋敷は、不思議な空間なんです。
僕も初めて行った時は分かりませんでしたが……長くいると、よく分かります。」
「不思議な空間?いったい何が?」
声の音量を落としたガイに、コウはニコリと笑った。
「色々あって語り尽くせません。
……ガイさんも、そろそろ寝ましょうか。
夜更かしは、怪我にも悪いですよ。」
「コウ様、それはあまりにも……説明をお願いします。」
「仕方ありませんね。
お嬢様の屋敷に行くと、年をほとんど取らなくなるんです。
つまり、リュウさんは貴方よりも年上なんですよ。」
ガイは顔を顰めた。
「コウ様。さすがに、そのようなご冗談は……。
あの御者は外見どころか、性格まで子供だったではありませんか。」
「やはり、信じてくれませんか。」
「当然です。そんな子供騙し……。」
コウはソファーから立ち上がり、ガイの腕を軽く引っ張った。
「さあ、話は終わりです。
そろそろ、寝ましょうね。
ガイさんにも毛布と布団をかけて差し上げます。
寝られないようなら、子守歌や添い寝もお付けしますが、いかがでしょうか。」
「それは、けっこうです!」
「ガイさん、お静かに。」
コウは自分の口元に指を一本当ててみせた。
ガイは観念したように、黙ってベッドに入った。
「素敵な夢を見てくださいね。」
コウがガイに毛布と布団をかけた。
とても手慣れた手つきだった。
「……恐れ入ります。」
ガイはむず痒さを感じながらも、布団の中で鼻を鳴らした。
そんな中、ゼロユイとフクは、またお嬢様の庭へ行く夢を見ていた。




