↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君といきたい ー不要品AIと小さなフクロウの旅ー  作者: yunimituki
第7章ー世界の裏側ー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/160

第7章-104 処刑のあとに

ー訓練場/処刑終了後ー


ゼロユイを抱えたリュウが会場に入ると、警備隊達が一般客達を外に誘導していた。


会場の中央では、別の警備隊達が、拘束椅子を解体したり、処刑した男を布で包んだりしていた。


「あれ、終わっちゃってますね。

お嬢、どうします?」


リュウがお嬢様に話しかける。

お嬢様はリュウには振り返らずに答えた。


「リュウ、行くよ。」


「このゼロユイはどうします?

さっき強く握ったら、動かなくなっちゃいましたけど?」


「その辺に置いといて。あとで回収を忘れないで。」


「はいよ!」


リュウが会場の隅にゼロユイを置くと、お嬢様は傍聴席の間の通路をまっすぐに歩いていった。


止めようとする警備隊をひらりとかわし、あっという間に処刑された男の前まで来た。


追い払おうとする警備隊に、お嬢様は腕組みをした。


「私の邪魔をするの?……リュウ。」


「承知!!」


リュウは警備隊の顎めがけて蹴り上げた。


蹴られた隊員は平衡感覚を失い、その場にしゃがみ込んだ。


「なんだ。弱いじゃないですか。」


他の隊員が止めに入るが、すかさずリュウは、持っていたムチで足を絡め取り、一気に引っ張った。


隊員は派手に転んだ。


「一丁上がり!お嬢、お待たせしました!!」


お嬢様は、リュウの言葉に返事をせず、処刑された男の頭を両手で押さえ、顔をしっかりと見た。


「なんだ。ただの普通の人か。」


お嬢様は男から手を離した。

血に染まった手を気にもしていない。


「リュウ、ゼロユイを持ってきて。

そろそろ帰るから。」


「はいよ!!」


リュウはゼロユイを回収しに階段を駆け上がっていった。


お嬢様も階段を上がろうとした時、騒ぎを聞きつけたセキが戻ってきた。


「何の騒ぎかと思えば……貴方でしたか。」


セキはお嬢様の目の前に立ちはだかった。


お嬢様はセキを見て、軽く息を吐いた。


「なんだ、セキか……やっぱりいたんだね。

すっかり老人になっちゃって。」


セキは鼻を鳴らした。


「いったい、何をしに来たのですか?」


「今は答えたい気分じゃないんだよね。

失望中だし。」


セキはお嬢様の手を見た。

両手が赤黒い血で濡れている。


「手の洗浄が必要でしたら、案内させますがいかがですか。」


「その飄々とした態度、相変わらずだね。

別に必要ないよ。セキの方こそ早くお風呂に入ったら?

服も顔も血塗れになってるよ。」


「お嬢様も相変わらずのようで。私の事はどうぞお構いなく。」


「じゃあ、早く戻りなよ。

どうせ、この後また仕事でしょ?私はもう帰るから。」


セキはため息をついた。


「かしこまりました。

お気をつけてお帰りください。

またお越しになる際は、どうかご一報を。」


「やだ。面倒くさい。

セキこそ、私の屋敷に遊びに来なよ。」


「用事がある際は伺います。」


「本当につまらない。

仕事とでも恋人になったの?」


セキは何も言わず一礼して去っていった。

二人のやり取りに、警備隊達がざわついている。


一般席からコウとサクが様子を見に来た。


ガーディもサクの後についてきている。


「いったいあの子は何なんだ……コウ様?」


サクがコウに声をかけたが、お嬢様に集中しているのか、無反応だった。


ガーディはサクの肩を、後ろから軽くつついた。


「サク、あの方はお嬢様です。

私はあまり話したことはありませんが、間違いありません。」


「お嬢様?

それ、ガーディの恋人がいる屋敷だろ?

なんでこんなところに?」


お嬢様はサク、ガーディ、コウを見た。


どんどん三人の方へ近づいていく。


「おい、ガーディ……こっちへ来てるんだが……。」


「きっとコウ様に気づいたのかもしれません。

お嬢様はコウ様が大好きだと、フィナが以前言っていました。」


「マジかよ……。」


お嬢様はコウの前に立った。


「コウ、いたんだね。ガーディもいる。」


ガーディはお嬢様に一礼し、コウは穏やかに笑った。


「お嬢様、ちゃんと食べてるみたいですね。

顔色が良くなりました。偉いですよ。」


コウがお嬢様の頭を撫でると、お嬢様の顔が綻んだ。


「うん。コウのケーキまた食べたいし、ちゃんと夜は眠るようにしてるの。

コウがくれたぬいぐるみを抱くと、よく眠れるんだ。」


「そうですか。それなら、またプレゼントしないといけませんね。」


「ありがとう。待ってるね。」


お嬢様は満面の笑みでコウの手を握った。


コウも微笑んだ。


「それより、今日はどうしてこちらに?」


お嬢様は少し頬を膨らませた。


「あの頭の割れた男の顔を見に来たの。


ガーディが怪我したでしょ?

それで、私のフィナが毎日泣いたの。


いったいどんな顔って思って……。

でも、近くで見たら悪人でもなんでもなかった。


ただのつまらない人間。

そんな人に、私のフィナが泣かされたの。


コウ、あいつすごく酷いと思わない?」


コウはお嬢様を抱きしめ、静かに語りかけた。


「本当に酷い方ですね。

ガーディさんも、フィナさんも、お嬢様までこんなに困らせて……でも、もう大丈夫ですよ。

彼はいなくなったのですから。」


コウはお嬢様を抱きしめるのをやめ、まっすぐに目を見た。


「だけど、お嬢様。

これからは死体に触ったりしてはいけません。

手が汚れるだけでなく、血から病気がうつる場合もありますからね。」


お嬢様は少し悩んだ後、こくりとうなづいた。


「コウが言うならそうするよ。」


「ありがとうございます。」


笑い合う二人を見て、ガーディは俯き、サクは引いた様子で見ていた。


コウの服には、お嬢様が血に濡れた手で触った跡が、はっきりと付いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。