第7章-103 お嬢様と御者
僕は、外に並ぶ人々が処刑場に流れたのを待合室から見ていた。
もう、人はほとんどいない。
「良かった。これで帰れる。」
ほっと息をつき、外に出た。
だが、外に出た瞬間、僕の足は止まった。
「……なんで、子供がいるの?」
見たところ、12歳くらいだろうか。
女の子が無表情で処刑会場へ向かっていた。
髪は黒く、たれ目だが凛とした大人びた顔立ちをしている。
僕は女の子に駆け寄った。
「待って!そっちに行ったらダメだよ。
これから処刑が……。」
女の子は立ち止まり、僕を真っ直ぐに見つめた。
吸い込まれそうな紫色の瞳に息を飲んだ。
「誰?」
「僕は、ゼロユイで……。」
「ゼロユイ?ふーん……そうなんだ。」
女の子は淡々とした話し方だ。
「私は処刑される愚か者を見に来たの。
邪魔しないで。」
女の子はスタスタと会場に向かっていった。
「ま、待ってよ。処刑なんて……。」
僕は女の子の後を追いかけようとしたが、すぐに後ろから誰かに腕を掴まれた。
「うわっ!」
腕を引き上げられ、体が宙ぶらりんになる。
明るい男の声が聞こえた。
「ダメですって、お嬢の邪魔したら。」
僕はゆっくりと地面に降ろされた。
男は20代半ばで、美しい銀髪を後ろで1つに括っていた。
「ああ見えて、お嬢は今かなりお怒りですからね。
それにしても君、どこかで見たような……かなり記憶力いい筈なんですけどね。
どこだったかな。」
まじまじと見てくる男に、僕は数歩下がった。
男は何か閃いたように、姿勢を正した。
「あれ?警戒してます?
とりあえず名乗っておきますか!
私はリュウ。
お嬢の御者であり、護衛であり……まあ、雑用係って感じですかね。」
「ゼ……ゼロユイです。」
僕は体を引いたまま答えた。
「ゼロユイ?
それも聞いた事あるような……まあ、良いや。
さあ、一緒にお嬢の後を追いかけましょう。」
僕は軽々と担がれてしまった。
「待って、どうして僕が!?関係ないよね!?」
「それはもちろん、お嬢が『誰?』って君に言ったでしょ?
普段のお嬢なら、声をかけられてもスルー……つまり、あれは私へのメッセージなんですよ。
こいつは興味があるから連れて来いって。
初回でお嬢に気に入られるなんて、凄すぎでしょ!」
「意味が分からないよ!離してよ!!」
「ごめんごめん。私も心が痛いんですよ。
でも、お嬢に大きな恩があるから、裏切りたくないんですよね。
ささ、早く行かないと怒られるんで、あんまり暴れないでくださいよ。」
リュウはガッチリと僕を抱えながら、処刑会場へと足を踏み入れた。




