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第12稿:『創世の謳』

 あなたは、かわりに金の表紙の本を押し付けられた。

 読め、と言わんばかりに、本は勝手にその頁を操った。


 ◇ ◆ ◇


 はじまりは『無』だった。


 創造神アテスは、世界の形を造った。

 続いて、海神ディエスが世界を水で満たし、地神ジールが大地を浮かべた。


 六柱の神々は、世界に降臨された。

 しかし、荒れ果てた大地と荒れ狂う海、そして闇から蠢く魔性が在っただけだった。

 アテスは、大地を四つの大陸と、無数の破片に分けて世界に散らした。


 そして、太陽神リザーブと月神ティアが、世界を昼と夜に分けた。

 昼を司るリザーブは銀の双剣でもって魔性を切り捨て、守護の証として太陽を空に浮かべた。

 夜を司るティアは、二神の子である双つ月、兄月エティス、妹月リエスと無数の星を空に散らした。

 火神カッツは夜を越す灯りを、世に与えた。


 アテスは世界の在り方を『神の理』に刻み、定義した。

 六神は世界を作り終え、次々と命を生み出した。

 空を飛ぶもの、地を這うもの、水に潜むもの。

 美しい花。深い森。


 そして、人を生み出した。

 神々によく似た、賢く、頑強で老いぬ、長命の種。

 失敗作。


 神々に似ていないが、賢く、愛らしく、緩やかに老いる種。

 愛された。


 翼を持ち、空を自由に舞い踊る短命の種。

 実験作。


 最後に。

 神々に良く似た、しかし愚かで、短命の種。

 普遍的な命。


 神々は、灰色の髪と瞳のまま生まれた人に『色』を与えた。

 生まれ持った神々の恩寵により、人は『色』を得た。

 この『色』を失えば、人は再び灰色となり『死』を迎えると世に定められた。


 神々は人から相応しき者を選び、己の代理人として、神の象徴たる『色』を与えた。


 神々の導きと知恵のもと、世界は繁栄を極めた。

 神々の起こす奇跡は、人には到底真似できぬものだった。


 文明が成熟した時代。

 神々はついに人に『神の奇跡の模倣』を■■として許した。

 人は、神の叡智と■■によって、繁栄を極めたのだ。


 火神カッツは、この時、人に■■■■■を与えた。

 これにより、アテスは激怒し孤島に追放し、これ以降悪神カッツとした。


『創世記』より


――――


 神々は定めた。


 人が信仰を持つ限り、常に我らは人のそばにいる。

 いついかなるときも、人を見守る。


 神々に捧げる信仰は、邪悪なるものから人を守る。

 神々の教えを記した教典を、左手に持て。

 神々への忠誠の誓いを、右手で示せ。

 神々を讃える祈りを、唇に灯せ。


 神々は人の行いを常に見ている。

 善いも悪いも全て。

 それらは全て、魂の記憶として刻まれる。

 死した魂は、神の御前でその御手により天秤の左皿にかけられる。

 善き行いを積み重ねれば天秤は沈む。

 その魂は神の揺籠で、約束の日まで眠りにつく。

 魂は再びこの世界に放たれ、新たな人生を歩む。


 神々は、そう定められた。


『祈祷答唱詩篇』より


――――


 遠い昔、世界の創造を終えた後。

 悪たる火の神は、全てを手中に収めようと善たる五柱の神を討ち滅ぼそうとした。


 そのために自らに賛同した一部の人間たちに、その力の一端を与えたという。

 与えた力こそが■■であり、それを操る■■■は、善神五柱――即ち、創造神アテス、太陽神リザーブ、月神ティア、海神ディエス、地神ジールに仇なす者とされる。

 特に、善神信仰の中で勢力のある、創造神アテスと太陽神リザーブを信仰する者からは、■■■たちはこと更に酷い扱いを受けることが多かった。

 善神五柱は、苦難の道を乗り越えた者に、豊かな実りと永久の平和を約束する。

 そして、神と、その忠順なる信仰者たちに仇なす、悪神と■■■を許さなかった。

 神に仕えればその生を終えた時、神の住む国に迎え入れられるという。


『善神五柱概論』より


――――


初出:2012/01/08

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