第8話 ライラ隊長 (2611)
共存党支持者たちがニューヨークに去った後、ノードは数千人の人口減少となったが、残った1万数千人の市民はノード政府のピラミッド要塞建設とドームの地下施設建設に協力する姿勢を示した。ノード政府は市民の協力を得て対サラル防衛政策を続けていく事になった。ドームの地下施設建設は着々と進み7つの巨大ドームすべてに通路が完成した。
5年後の西暦2611年には、ピラミッド要塞P1の北西2百メートルに新たなピラミッド要塞P2が完成した。この頃には、ピラミッド要塞の近くにサラルの群れが度々押し寄せる事態となっていた。ある日オーロラも見えない夜間、サラルの群れがピラミッド要塞P1の上空に現れ、隊員達が待ち構えるコンクリート要塞に槍攻撃を仕掛けた。しかしサラルの投げた金属棒の槍は分厚いコンクリートに跳ね返され、何の効果もなかった。サラルの群れは隊員の居ない4階に侵入したが、室内に設置された赤外線センサーが作動し、十数台の機銃が一斉に発砲され多くのサラルが仕留められた。3階に襲い掛かったサラルは室内で待ち構えるユニコーン型ロボや隊員達による集中射撃で撃ち倒された。北西2百メートルのP2要塞からも援護射撃が集中し、サラルの群れは大きな被害を出し、仲間を助ける事もなく逃げ去って行った。ドラ山のレーザー砲も発射できる状態だったが、その必要がないほど完璧な防衛だった。
このカナク陥落以来初めてともいえるサラルとの本格的戦闘で、ピラミッド要塞の有用性が証明され、この要塞型陣地の評価が高まった。その結果警備隊はP1、P2に加えてピラミッド要塞P2の北西2百メートルにさらにピラミッド要塞P3を建設し、将来的にはこの北西方向に更なるピラミッド要塞P4P5・・・を建設し、レーザー砲台と水力発電所のあるドラ山方面にまでピラミッド要塞の列で連結する計画が立てられた。ピラミッド要塞P3の建設工事はサラルとの戦闘のない昼間に着実に進展して行った。
この頃5人の同週生、ジュリアとロビンはイレーネで結婚して新しい家庭を持ち、ライラ、アランとマシューはノードでそれぞれ電気技術学校、建設工学学校を卒業し、ライラは警備隊員、アラン、マシューは建設作業員となっていた。
ノードのドーム地下の建設工事は続行されていた。双子のアランとマシューも作業員として地下工事に従事する事になった。このころは中央ドームと住宅ドームの地下施設は既に完成しており、工事は生育ドーム・工場ドーム・ショッピングドームなどの地下施設を造り始めていた。作業員は一日3交代制でアランとマシュー達若手作業員は朝6時から昼14時までの担当だった。
「こんな頑丈な地下施設があるとノードも安心だな」
「この地下トンネル、もっと伸ばしていくんだろ」
「そのために俺たちが呼ばれたんだよ、しっかり働こうぜ!」
「ライラはピラミッド要塞に行くらしい」
「ライラの事だから頑張ってくれるさ」
「ライラは昔から元気だからな、みんなついて来て、カモーン! だからな(笑)」
「ニューヨークに行ったジュリアとロビンは元気かな」
「結婚して仲良くやってるさ、子供もできたらしい」
「ニューヨークじゃなくてイレーネか、そこではサラルと共存出来てるのか?」
「サラルを餌付けしているらしいが、そんなことできるのか?あのサラルだぜ!」
「分からん!」
「まあ、こっちもあっちもやれることをやっていくという事だ」
18歳で警備隊員となったライラは、小さい頃からの夢だったピラミッド部隊への入隊を果たしていた。ピラミッド要塞P1P2の総司令を務めていたのは、アルビン隊長からカナク警備隊を引き継いだマテオだった。マテオ総司令はピラミッド要塞P2での入隊式に出席し、直接ライラに就任状を手渡し、
「アルビン隊長の孫であるライラ隊員の入隊を歓迎する」と述べた。
ライラが、カナクの防衛で功績のあったアルビン隊長の孫である事を初めて知った隊員達はどよめき、大きな歓声が沸き起こった。
ライラは入隊後すぐにピラミッド要塞P2でのサラルとの戦闘に参加し、その能力を充分に発揮することになった。サラルの群れが密集して攻撃をかけてくると、隊員達の中には動揺して動けなくなっている者もいたが、ライラの
「みんな!サラルを一匹残らずやっつけるよ!ついて来て、カモーン!」
という言葉が隊員たちを勇気づけた。隊員達は笑みを浮かべ、
「ライラ隊長、みんなついて来てます!」と声を揃えた。
ライラは隊長ではなくヒラの隊員だったが、上官も含めたみんなから「隊長」と呼ばれていた。ライラはまるでサラルとの戦いを楽しんでいるように見え、その明るさはピラミッド要塞を照らす太陽のようだった。




