表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

第7話 ロビンとジュリアの結婚 (2611)

 共存党支持者達がノードからイレーネに移住して4年が経った。

20歳を迎えたロビンとジュリアは当然の様に結婚する事になった。ジュリア一家やこの日のためにノードから訪れたロビン一家や友人知人が見守る中、集会ドームで賑やかな結婚式が行われた。結婚式の後、新郎新婦を囲んで舞踏会が始まり、子供から老人までいろいろなペアになってダンスが始まった。「アマポーラ」というノードでは百年以上前から舞踏会で使われていた定番の曲が流れた。


【Amapola (English lyrics by Albert Gamse)】

  Amapola my pretty little poppy

  You're like the lovely flower so sweet and heavenly

  Since I found you my heart is wrapped around you

  And seeing you, it seems to beat a rhapsody  ・・・


 華やかなダンスが続く中、幸せそうに微笑むジュリアと見つめあっていたロビンは、ふとドームの外を見上げた。そしてこの時、集会ドームの上空にサラルが数匹飛んでいるのに気付いた。たぶん他にも気付いた人はいた筈だが誰も言いだす者はいなかった。


 この結婚式の後、ロビンとジュリアは独立した一戸建てのドームに住む事になった。ノードから結婚式に参加したロビンの父親と母親もサラルとの争いのないイレーネが気に入り、「平和な処で暮らしたい」とイレーネに移住する事になった。ロビンの母ベルタは「イレーネは良いところね。静かだし、みんな幸せに暮らしている!」と、すっかりイレーネでの生活が気に入ったようだった。ロビンの父マイケルは「だから言っただろ、サラルと戦って良い事はないんだ。ノードも共存党のいう通りにした方が良いんだ!」と得意げに言った。


 結婚したロビンとジュリアには、ルークという男の子とクレアという女の子が生まれた。ロビンはジュリアと子供たちのためにサラルへのエサ運搬係の仕事に就く事になった。


 ロビンは毎朝、ジュリアや子供たちに見送られて住宅ドームを出ていき、ショッピングドームに出勤する。同僚二人とともにジープに連結したリヤカーにイモ・サトウキビ・バナナ・パイナップルなどを積み込む。エサ運搬係の3人はジープに乗り込みドームから10キロ南のサラルパークの丘に向けて出発する。ジープがサラルパークに近づくにつれて、サラルが近くに飛来してくる。近寄って来るサラルの顔が笑っているのを見て、ロビンは不快な気持ちを抑えられなくなった。しかしマニュアルの指示通りサラルに敵対するような表情や身振りをしないように自制し、サラルに笑顔で手を振りつつサラルパークまでの長い道のりを進んでいった。


 ジープは約20分の走行でサラルパークのエサ場に到着する。エサ場には多くのサラルが待ち構えており、ロビン達は笑顔で手を振りながら、ジープを走らせ遠隔操作で後ろのリヤカーから魚や果物を落として行く。サラル達はリヤカーを追いかけてエサの奪い合いを始める。エサ場を一周してサラルにエサが行きわたったのを確認して、これもマニュアル通りジープの外に出て笑顔でサラル達に手を振る。その隊員達のパフォーマンスを見るサラル達は無表情あるいは敵意のある表情をしている。攻撃をして来るサラルがいない場合、ロビンたちは3分間ジープの外で笑顔で手を振るパフォーマンスをした後、ジープに

乗り込み、帰途につく。

 この様にして、ロビンは家族の生活を守るために、毎日サラルパークのエサ運搬係の仕事を頑張っていた。楽しい仕事ではなかったが、ロビンは「これは昔の動物園の飼育係、或いはテーマパークの係員の仕事のようなものだ」と考える事にしていた。


 サラルパークに集まるサラルの群れはますます増加し、イレーネ付近のサラル生息地は年々拡大していった。その結果、イレーネのドーム付近でも日常的にサラルの姿を見るようになり、人間とサラルの接触する機会も増えていった。サラルのなかにはドームの上に居ついて、人間たちの様子を興味深げに見ているものも現れた。市民はイレーネ政府から「サラルに出会ったら恐れず騒がず目を合わせずに近くのドームに避難せよ」という指示を受けていた。その効果もあってかサラルが市民を襲うという事件は起こらなかった。


「サラルのあの様子を見ろ、監視されているようで気味が悪い」

「サラルに見学されて、まるで人間が動物園の檻の中にいるようだ!」

「まったく、どちらが飼われているのか分らんな」

「サラルは自分達が主人で、人間は奴隷と考えているのではないか?」


 イレーネ市民はサラルが人間に近づき過ぎる事に不満を漏らすようになった。しかし、共存党政府の「人間とサラルの共存」という政策が変更される事は無かった。イレーネの街中には、ダニエル大統領がサラルの子供を抱き上げて微笑む写真と「サラルとの共存」と記したポスターが、至る所に張り出されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ