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第4話 ノードの分裂  (2606)

 政府庁舎襲撃事件により共存党はノード政府の取り締まり対象となり、党首ダニエルをはじめ多くの逮捕拘留者をだした。しかし、共存党の集会に参加する支持者はノード政府への批判を強め、警備隊と衝突を繰り返していた。

「不当逮捕反対、ダニエルを釈放せよ!」

「無意味な地下通路建設反対」

「ピラミッド要塞建設は無能な政府のパフォーマンス」

「サラルと共存するための知恵を出せ」

「地下にトンネルを掘るだけならモグラでもできる」

「政府役人は武器製造でワイロを取っている」

「サラルの攻撃は政府の捏造だ」等と批判するデモは勢いを増していた。


 二ヵ月後に釈放された共存党党首ダニエルは多くの支持者の拍手歓声で迎えられ、会見を開きノード政府のサラル対策を批判した。

「ノードには3千人の警備隊、220台の警備ロボット、5百台のユニコーン型ロボ、2箇所のレーザー砲台がある。これ以上の防衛策は市民に過剰な負担を与えるだけだ。ピラミッド要塞やドームの地下施設の建設を中止し、市民防衛隊を廃止すべきだ。サラルと敵対せずに共存するための政策の実施を要求する」


 ノード政府のサラル対策についての賛否が分かれるなか共存党への支持が拡大し、その中で実施されたノード議会選挙では12名のうち5名の議員が共存党の所属議員となった。ノード市民の反応は二分され、ノード政府支持派と共存党支持派の数が拮抗する事態となった。2年後に行われる予定の大統領選挙に向けて、共存党党首ダニエルの支持が広がっていった。


 ノード政府は、大統領選挙で共存党党首のダニエルが勝利する事を危惧していた。仮に、共存党党首ダニエルが大統領となりノードの防衛方針を転換すれば、ドームの地下施設やピラミッド要塞の建設が中断され、これ迄の防衛体制が崩壊する事になる。それはノード全体に大きなリスクを発生させる。この最悪の事態を避けるため、ノード政府は共存党に調停案を出した。調停案の内容は次のようなものだった。

「島の東岸のニューヨークを独立した行政機関として認定する。共存党の支持者で希望する者はニューヨークに移住し、そこでの自治政府の下で生活する事を認める。そこで実施された共存党のサラルとの友好を図る政策が成功すれば、ノード政府もこれ迄の防衛政策を改め、サラルとの友好政策を検討する」


 この提案は共存党支持者にとっても、ノードで市民防衛隊に入隊し地下施設建設を強制される事を逃れ、ニューヨークで自由に暮らせるという事で、願ってもない提案だった。ノード市民の多くも、これ以上ノードが内部分裂し混乱するよりも、ノード政府と共存党が別々の地でそれぞれの政策を実行し、どちらの政策が正しいのかを競うべきだという意見が多数派を占めた。共存党のダニエル党首はこの調停案を受け入れ、ノード議会は全会一致で共存党支持者のニューヨークへの移住とその地での自治行政権を承認した。


 共存党支持派のジュリア一家はこのニューヨークへの移住に参加する事になった。

「わたしたちニューヨークに行く。ロビンも一緒に来ない?パパもママもロビンが来るなら大歓迎だと言ってるよ、ニューヨークで一緒に住もう!」

 ロビンの父親もニューヨークに行きたがっていたが、母親が反対していたのでロビンの家では毎日言い争いが続いていた。話し合いの結果ロビン一家は移住の判断を先送りする事になり、17歳になっていたロビンは父親と母親の了解を得て、ジュリア一家とともにニューヨークに移住する事になった。父親は羨ましそうに「良い決断だ!家族全員で移住出来たらなあ」と言ったが、母親は心配そうに「危険だったらすぐに帰って来るんだよ」と言った。


 ライラ、アラン、マシューの3人はジュリアとロビンのために送別会を開いてくれた。

「やっぱり行っちゃうのね?でも二人一緒なら大丈夫!」

「おれ達も本当はサラルと戦いたくないんだよ、だからニューヨークでサラルとの共存を試すのは大切だと思う」

「やってみないと分からないと思う。大変だろうが頑張って!」

「これはお守り」とライラがジュリアに銀色のけん銃を渡した。

 アランとマシューはロビンにワインをプレゼントした。

「来年はおれ達18だ、ワインの飲める年になる。5人でリモート飲み会やろう!」


 それから一月後、共存党支持者がニューヨークに出発する日が来た。

その日、約二千人の共存党支持者が、ノードのドーム前に整列した50台の輸送用モービルに乗り込み、ノードから80キロ東のニューヨークへ向かう事になった。共存党支持者たちはその荷物家財道具とともに続々とモービルに乗り込み、ノードを出発して行った。それをドームの中から多くのノード市民が、複雑な表情で見送った。ライラ・アラン・マシューの3人はドームの外に出て、ジュリアとロビンの乗り込んだ黄色のモービルを手を振って見送った。


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