ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

言葉を拾う舟 ──夕暮れの向こう、せとうち還流紀行──

あらすじ
東京の大手出版社で働く編集者・青井三幸(あおい みゆき)は、ある日突然、激務とプレッシャーから言葉を喪失する「失語症」を患う。他人の原稿を整えることを生業としながら、自らの言葉を失った青井は、現実から逃避するように祖母の遺品整理を口実として、香川県坂出市へと向かう。
そこで青井が出会ったのは、若くして亡くなった父の跡を継ぎ、島々の言葉を採集している不器用な女性・ミオだった。彼女の父は、瀬戸内海の伝統である灯籠(とうろう)職人であり、灯籠を「人々の沈黙や悲しみを拾い上げて海へ流す『言葉を拾う舟』」と定義して、島民たちの生きた言葉を集めていた。父の遺した未完のノートを抱え、孤独に彷徨うミオ。言葉を失い心を閉ざした青井。傷を抱えた二人は、お互いの穴を埋めるように、瀬戸内の島々(本島、男木島、直島、小豆島など)を巡る「言葉を拾う旅」へと漕ぎ出す。
JR西日本の路線やフェリーを乗り継ぎ、美しい多島美と豊かな潮流に触れるなかで、二人は地域の人々と出会い、それぞれの島に眠る「沈黙の物語」を拾い上げていく。ミオのひたむきな姿と瀬戸内の大自然は、青井の凍りついた心を少しずつ溶かし、青井は「言葉は消失したのではなく、海の満ち引きのように沈黙の底で満ちるのを待っているのだ」と気付く。
旅の終着点、夕暮れに染まる瀬戸大橋の頂点で、青井はついに自らの本当の声(言葉)を取り戻す。それは同時に、ミオにとっても、お父さんの遺志を継ぎ、一人の自立した表現者として歩み出す契機となった。
物理的な別れの時が訪れ、青井は東京の編集部という「言葉の戦場」へ復帰することを決意する。ミオは青井に、父が遺した最後の灯籠──「言葉を拾う舟」を託す。
東京に戻った青井は、ノイズに塗れた都会のなかで、誰かの救済のための物語を紡ぎ始める。一方、沙弥島に残ったミオもまた、お父さんのメモにあった「潮が満ちるとき、灯りは戻る」という言葉を自らのノートに刻み、島の子供たちと共に新しい言葉を集め始める。
遠く離れた東京の夕日と、瀬戸内の黄金色の海。二人の魂は、託された灯籠の舟を通じて完璧に同期し、それぞれの場所で、誰かの暗闇を照らすための新しい物語を未来へと紡ぎ続けていく。
Nコード
N6534MG
作者名
pappajime
キーワード
JR西じゆうに大賞1 シリアス 男主人公 現代 職業もの 日常 ハッピーエンド 私小説 ミステリー
ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2026年 05月30日 15時16分
最終掲載日
2026年 05月30日 15時18分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
1件
総合評価
12pt
評価ポイント
10pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
246,364文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N4066MI| 作品情報| 短編| 現実世界〔恋愛〕
携帯電話もなかった昭和の時代。都立赤城高校に進学した赤城一の三年間は、不器用で、けれど全力だった少女たちへの恋で満たされていた。 入学手続きの日に一目惚れした、春の光の中に佇む可憐な少女・荒木郁恵。 合唱祭の指揮台で白い//
N6534MG| 作品情報| 完結済(全10エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
東京の大手出版社で働く編集者・青井三幸(あおい みゆき)は、ある日突然、激務とプレッシャーから言葉を喪失する「失語症」を患う。他人の原稿を整えることを生業としながら、自らの言葉を失った青井は、現実から逃避するように祖母の//
N9624LY| 作品情報| 完結済(全7エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
補助魔法師の青年レオンは、同じ対象に魔法を重ねがけできる「限界突破(スタッキング)」という異能を有していた。しかし、その力は当時の小隊長から「対象に負荷を強いる呪い」と断じられ、制御不能な特異個体として部隊を追放されてし//
N0961LS| 作品情報| 連載(全4エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
 二十代半ばの平凡な社会人として日々を送る俺はある日、唐突に異世界へと転生する。そこは、かつて十七歳の俺が心血を注いで描き、そして「社会人になる」という現実の前に投げ出してしまった、恥ずかしすぎる自作ノートの中身――いわ//
N8683LR| 作品情報| 連載(全1エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
世界を救った瞬間に、俺は「最弱の村人」へ書き換えられた。 勇者アークは、仲間と共に魔王軍を討伐し、世界に平和をもたらした。崩壊する魔王城の中で、彼は敵であった魔王の娘・ルナに手を差し伸べる。「俺がお前を、ただの女の子とし//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ