- あらすじ
- あらすじ
核廃棄物処理の技術者マック・ハントは、国家の極秘任務を断った翌朝、男が来たのは、十月の雨の夜だった。
マック・ハントは自宅のキッチンで缶ビールを開けていた。サラが夕食の片付けを終えて、居間のソファで本を読んでいる。窓の外で雨が舗道を叩く音だけが、静かな家に満ちていた。
ドアのノック。
三回。間隔が均等すぎる。
マックはビールを置いた。こういうノックをする人間を、彼はよく知っていた。
ドアを開けると、グレーのスーツを着た男が二人立っていた。雨の中でも傘を差していない。濡れることを気にしない人間は、たいてい面倒な用件を持っている。
「ハント氏ですね」
「そうだ」
「少しお時間をいただけますか。国家安全保障局の者です」
男は内ポケットから身分証を出した。マックは一瞥だけして、またドアの方を向いた。
「話は中で」
居間にサラがいた。マックが目で合図すると、サラは本を閉じて静かに立ち上がった。十五年一緒にいれば、言葉はいらない。彼女はキッチンへ消えた。
男たちがソファに座った。マックは壁に背をもたせかけたまま、座らなかった。
「単刀直入に申し上げます」男の声に感情がなかった。「あなたの技術が必要です。掘削の経験、特に極深度領域における」
引退した」
「存じております。しかしこの任務は――」
「国の仕事は二度とやらないと決めてる」
男は少し黙った。手元の書類に目を落として、また顔を上げた。
「報酬は破格です。ご家族の生活も、向こう十年は――」
「サラが許さない」
マックは言った。それだけだった。
男たちは顔を見合わせた。一人が何か言いかけて、もう一人が小さく首を振った。二人は立ち上がり、書類をブリーフケースに戻した。
「ご再考ください」
「しない」
ドアが閉まった。
マックはキッチンへ戻った。サラがコーヒーを二つ用意して待っていた。
翌朝、サラがいなかった。
コーヒーメーカーがタイマー通りに動いていた。カップが二つ用意されていた。サラの本が開いたままソファに置いてあった。ページは昨夜と同じところだった。
マックはしばらく動けなかった。
妻サラを人質に取られた。条件はただ一つ、地球のコアへ行くこと。地殻の深さ六千キロに眠る莫大な金を巡り、国家とロシアが激突しようとしていた。
行くしかない。サラのために。 - Nコード
- N2214MF
- 作者名
- 北小松 耕作
- キーワード
- ESN大賞10 シリアス 男主人公 西洋 近代 冒険 ミリタリー
- ジャンル
- 空想科学〔SF〕
- 掲載日
- 2026年 05月18日 15時12分
- 最新掲載日
- 2026年 05月18日 15時23分
- 感想
- 0件
- レビュー
- 0件
- ブックマーク登録
- 0件
- 総合評価
- 0pt
- 評価ポイント
- 0pt
- 感想受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - レビュー受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 誤字報告受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 開示設定
- 開示中
- 文字数
- 13,769文字
設定
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CORE
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから
同一作者の作品
N2214MF|
作品情報|
連載(全12エピソード)
|
空想科学〔SF〕
あらすじ
核廃棄物処理の技術者マック・ハントは、国家の極秘任務を断った翌朝、男が来たのは、十月の雨の夜だった。
マック・ハントは自宅のキッチンで缶ビールを開けていた。サラが夕食の片付けを終えて、居間のソファで本を読んでい//
N0760MF|
作品情報|
連載(全8エピソード)
|
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
営業成績ワースト三年連続。
会社から“追い出されるように”出向させられた先は、町の小さな葬儀社――三鷹セレモニー有限会社だった。
宗派ごとに違う作法。止まらない読経。クセの強い坊主たち。
そして、静かな通夜で次々起こる「//
N0743MF|
作品情報|
連載(全13エピソード)
|
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
勉強は全部ダメ。授業中は絵ばかり。誰にも期待されないまま、底辺校へ進んだ吉田桃子。しかしそこで出会った美術教師が、誰も見ていなかった才能を見つけた。県コンクール、全国入賞、美大推薦、そして国際コンクール入賞。馬鹿にされ続//
N7949MD|
作品情報|
連載(全2エピソード)
|
その他〔その他〕
乾いた砂の中で目を覚ました男。
失われた記憶、曖昧な現実、そして鳴り響く銃声。
「撃ったのは誰だ――?」
“与田”という存在を軸に、崩れていく認識。
真実に近づくほど、世界は歪んでいく。
これは、ひとつの事件の物語ではな//
N1902ME|
作品情報|
連載(全1エピソード)
|
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
夢に破れ、挫折のなかで故郷・松本を捨てたあの日から四十年。
定年を迎え、退職金で手に入れた憧れのメルセデス・ベンツSL。
主人公は、隣に座るはずだった亡き妻の形見を助手席に乗せ、人生を賭けた「答え合わせ」の旅に出る。
道//
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。