- あらすじ
- 十六歳のメアは、名前を呼ばれたことがない。
貴族の館の別館と、街の図書館。ふたつの掃除仕事をこなす孤児は、陰で「埃」と呼ばれている。帰る家もなく、夜は図書館の書架に隠れて眠るだけの日々。声すら、ほとんど誰にも聞かれたことがない。
ある夜、目を覚ますと、何かが変わっていた。
記憶は何ひとつ増えていない。なのに、考え方だけが、まるきり別人になっている。十六年分の読書が、初めて頭の中でひとつにつながる。そして気づいてしまう──自分がこれまで、何に対しても「そういうものだ」と、疑いもせず飲み込んできたことに。
捨てスキルと笑われる調合師の腕。誰の記憶にも残らない、透明な顔。そして、何千冊分の知識。
持っているものを数え終えたメアは、決める。
昼は、これまでどおり誰の目にも留まらない埃でいい。
夜は別人になり、銅貨一枚で悩みを聞く、相談屋になろう。
夜の名は、ベラ。美しい淑女の名を持つ、猛毒の草から取った。
説教はしない。慰めもしない。ただ、目の前の相手を観察し、その人がずっと目を逸らしてきた現実を、一番効く形で突きつける。優しい嘘より、効く毒を。
救われた人間は、静かに人生を変えていく。損をした側は、大声で「悪女だ」「毒婦だ」と喚く。だから世間に広まるのは、いつも悪評のほうだけ。
けれど、視点ひとつで、悩みも、体の不調も、時には魔法で治らない呪いさえも変わっていくと、ベラは知っている。
耳障りのいい同情で金を取ることだけは、誰よりも嫌っている。
図書館の隅の埃が、夜な夜な人の人生を書き換えていく——最も優しい「悪女」の下剋上物語。 - Nコード
- N0520ML
- 作者名
- ゆあ
- キーワード
- 異世界転生 BWK大賞1 BK小説大賞2 集英社小説大賞7 コミックルーム大賞 アイリスIF9大賞 シリアス 女主人公 西洋 中世 職業もの 魔法 身分差 悪役令嬢 悪女
- ジャンル
- ローファンタジー〔ファンタジー〕
- 掲載日
- 2026年 07月09日 12時07分
- 最新掲載日
- 2026年 07月10日 10時56分
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- 文字数
- 15,140文字
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悪女の正体は、図書館の隅で本を読んでいた埃です
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連載(全6エピソード)
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ローファンタジー〔ファンタジー〕
十六歳のメアは、名前を呼ばれたことがない。
貴族の館の別館と、街の図書館。ふたつの掃除仕事をこなす孤児は、陰で「埃」と呼ばれている。帰る家もなく、夜は図書館の書架に隠れて眠るだけの日々。声すら、ほとんど誰にも聞かれたこと//
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