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『限界社畜OLの絶対安全ダンジョン経営〜最強の過保護護衛に溺愛されつつ遊園地作り。荒らしは勝手に自滅します〜』  作者: 月神世一


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吐血村長を強制収容せよ! 物理的に骨抜きにする『癒やしのスパエリア』解放

吐血村長を強制収容せよ! 物理的に骨抜きにする『癒やしのスパエリア』解放

カフェエリアをオープンしたその日の午後。

ヒカリのダンジョン『第1層』は、穏やかな空気に包まれていた。

「いらっしゃいませーっ! 当店おすすめの、ハニーかぼちゃのタルトはいかがですの!?」

可愛いフリルのエプロンを着たリーザが、誰もいない空間に向けて接客の練習をしている。すっかり看板娘の自覚が芽生えたらしい。まかないの力は偉大だ。

一方、カウンターの隅では、黒スーツ姿のシンが腕組みをして周囲を鋭く睨みつけていた。

「……マスター。やはり、あの観葉植物の裏にクレイモア地雷を一つ仕掛けておくべきでは?」

「だからここは戦場じゃないってば。そんな物騒なカフェ、誰も来なくなっちゃうよ」

ヒカリが苦笑いしながらコーヒー豆を挽いていると、突如、カランカラン、と入り口のドアベルが鳴った。

「っ! 敵襲!!」

「シンくんストップ! お客さんだよ!」

即座にハンドガンを抜こうとしたシンをヒカリが制止し、入り口へ目を向ける。

ギィィ……と重い音を立てて開いた扉の向こうに立っていたのは、昨日シチューを食べて帰ったはずのポポロ村の村長、キャルルだった。

「……ヒカリ、お姉ちゃ……ん」

「えっ、キャルルちゃん!?」

ヒカリは血相を変えてカウンターを飛び出した。

なぜなら、キャルルの口元から、再びタラリと赤い血が流れ落ちていたからだ。しかも昨日よりも顔色が悪く、ウサギの耳が力なくへたりと垂れ下がっている。

「どうしたの!? また自分の血を抜いて薬を作ったの!?」

「ぜえ、はあ……村で、魔獣に襲われた怪我人が、出まして……。月光薬を、たくさん……」

「バカバカ! 自分のキャパシティ超えて治癒しちゃダメって言ったでしょ!」

「でも、私がやらないと……。それに、まだ来年度の予算の書類が、五束ほど残って……ゲホッ!」

その言葉を聞いた瞬間、ヒカリの前世の記憶――ブラック企業で「私がやらないとみんなが困るから」と自分を騙して働き続け、結果的に心身を壊して使い捨てられた同僚たちの姿が脳裏をよぎった。

プツンッ。

ヒカリの中で、何かが切れる音がした。

「……書類? そんなもん燃やせ!!」

「えっ……ヒカリ、お姉ちゃん……?」

ヒカリは、ズンッ! とキャルルの前に立ち塞がり、両手を腰に当てて仁王立ちした。

「いい? 人間、いやウサギさんも同じ! 疲れたら休む! 血を吐いたら寝る! これ絶対のルール!! 今すぐ強制休養です!!」

「で、でも、書類……」

「うるさーい! リーザちゃん、シンくん! キャルルちゃんを奥へ運んで!」

「は、はいですわ!」

「了解しました、マスター」

シンの手によってひょいと担ぎ上げられたキャルルは、そのままダンジョンの奥、昨日ヒカリが壁を拡張した何もない広間へと運び込まれた。

「ヒカリさん、ここに医療キットを展開しますか? AEDの準備は――」

「違う違う。疲労困憊の体に一番効くのは、薬でも電気ショックでもないの」

ヒカリは【ダンジョンクリエイト】のパネルを空中に展開した。

「日本人の心、それは『広いお風呂』だよ!!」

ヒカリがパネルの『新規エリア作成』ボタンを力強くターンッと叩く。

ズゴゴゴゴ……! と、ダンジョンの空間が激しく脈打ち始めた。

目の前の無機質な石壁が崩れ落ち、そこに現れたのは――。

「わぁぁ……!」

「これは、一体……?」

濛々と立ち込める白い湯気。

鼻腔をくすぐる、清々しいヒノキの香り。

そこには、数十人が一度に入れるほど広々とした、立派な『源泉かけ流しの総ヒノキ風呂』が出現していた。

壁には富士山ならぬ、ポポロ山の見事なペンキ絵まで描かれている。

脱衣所には最新式のマッサージチェアがズラリと並び、冷蔵庫にはフルーツ牛乳がぎっしり詰まっているという、日本のスーパー銭湯を完全再現した夢の空間だ。

《ダンジョン第2層・拡張完了:『癒やしのスパエリア』をオープンしました》

《※本スパエリアのお湯には、【リラクゼーション・アロマ】の魔力が付与されています。入浴した者の肉体疲労、精神的トラウマ、魔力枯渇を強制的に溶かし去ります》

「さあ、キャルルちゃん! お風呂に入って、泥になれ!!」

「ひゃあっ!?」

ヒカリはキャルルのジャージを剥ぎ取ると、そのまま彼女をヒノキ風呂へと放り込んだ。

「あわわわっ……!? お湯……? なんですかこの熱くて、でも気持ちいいお水は……ふぇぇ……?」

ちゃぷん、と肩までお湯に浸かったキャルル。

その瞬間、彼女の体にこびりついていた過労の呪縛が、文字通り『溶けて』いった。

お湯に溶け込んだヒカリのダンジョン魔力が、キャルルの枯渇した魔力を急速に満たし、強張っていた筋肉を芯から解きほぐしていく。

「あぁ……っ、はふぅぅ……」

キャルルのウサギ耳が、ぴこんっ! と元気よく立ち上がり、そして、とろけるように再びへたぁ……と垂れ下がった。

「あー……だめです……。これ、だめなやつです……。体が、溶けちゃいますぅ……」

ふにゃふにゃになったキャルルは、湯船の縁に頭を乗せ、完全に骨抜き状態になってしまった。

村長としての威厳も、近衛騎士としての誇りも、もはやここにはない。あるのは、極上のお湯に魂を抜かれた一匹のウサギだけだ。

「よしよし。しっかり温まるんだよ。リーザちゃん、シンくん! 私たちも入るよ!」

「えっ!? あ、私も入ってよろしくて!?」

「僕は遠慮します。ここで不測の事態に備えて見張りを――」

「だーめ! シンくんも一緒! はい、男湯はあっちね!」

ヒカリはシンを無理やり男湯ののれんの奥へ押し込むと、自分とリーザも湯船へとダイブした。

「ふぁぁ〜っ……極楽、極楽……」

「こんなにたくさんのお湯……人魚だった頃を思い出しますわ〜。パンの耳のカスも洗い流せますわね」

「リーザちゃん、それちょっと悲しいからやめて」

女三人、広いヒノキ風呂で足を伸ばす。

キャルルはヒカリの隣にぴたりと寄り添い、とろけた顔でヒカリの肩に頭をこすりつけた。

「……ヒカリお姉ちゃん」

「ん? どうしたの、キャルルちゃん」

「私……今まで、ずっと『私がやらなきゃ』って思ってました。私が血を吐いてでも、みんなを助けなきゃ、私の居場所はないって……」

ぽつり、ぽつりと、キャルルが胸の内をこぼす。

元レオンハート王国のお姫様。だが、特殊な治癒能力ゆえに「便利な道具」として扱われ、逃げるようにこの村にやってきた過去。

「でも、ヒカリお姉ちゃんは……私が無理をしてると、怒ってくれるんですね。休めって、お風呂に入れてくれるんですね……」

「当たり前でしょ。キャルルちゃんは道具じゃないんだから。疲れたら休む。美味しいものを食べる。お風呂に入る。それが一番大事なんだよ」

ヒカリは優しく笑い、キャルルの濡れた髪を撫でた。

その温かい手つきに、キャルルの胸の奥で、今まで感じたことのない、強烈でドロドロとした『愛着』がぶわりと膨れ上がった。

(あぁ……私、この人のためならなんだってできる。なんだって殺せる。この温かい居場所を脅かす奴がいたら、絶対に許さない……!)

キャルルの瞳の奥に、ほんのりとヤンデレ特有のハイライトの消えた光が宿る。

「ヒカリお姉ちゃん……大好き。もう、私をここから帰さないで……ずっと、ずっと一緒にいて……」

「ふふっ、いつでもお風呂入りに来ていいからね」

「ちっがーう! 私が一番ですわ! まかないをもらってる私のほうがヒカリさんへの忠誠心は上ですのよ!」

「リーザちゃんはお風呂で暴れない!」

ヒカリは、ヤンデレ化の片鱗を見せ始めた村長と、強欲なアイドル人魚に挟まれながら、のんびりとお湯を楽しんだ。

◆ ◆ ◆

一方、その頃。

壁一枚隔てた男湯では。

「……はぁっ! はぁっ……!」

シンが、湯船の中で必死に息を殺していた。

彼の手には、防水加工されたGlock19がしっかりと握られている。

「……危険だ。このお湯、異常なほど筋肉を弛緩させる。もし今、敵が突入してきたら、僕の反応速度は0.3秒遅れる……! だが、なぜだ……こんなに無防備なのに、湯船から出たくない……っ!」

極限の警戒心と、極上のリラクゼーション効果が、彼の中で激しいハレーションを起こしていた。

「それに、壁の向こうからはヒカリさんの声が……いや、僕は警護官だ! そんな邪念を抱くなど言語道断! しかし、もし彼女がお湯で滑って転んだら……? すぐに救命措置を――いや、それは不敬罪か!? くそっ、どうすればいいんだ!!」

誰もいない男湯で、一人で勝手にパニックになり、顔を真っ赤にしてのぼせ上がる最強の暗殺者。

彼の過保護(と限界ギリギリの理性)もまた、このスパエリアによって別の意味で限界を迎えようとしていた。

かくして、ヒカリのダンジョンに『極上のスパエリア』が追加された。

これは後に、三大国の屈強な兵士たちすらも骨抜きにし、ダンジョンを一大娯楽施設へと押し上げる最強の『罠』となるのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ヒカリちゃんの社畜センサーが爆発し、ついにダンジョンに『スパエリア(源泉かけ流しヒノキ風呂)』がオープンしました!

過労のキャルル村長は、物理的に骨抜きにされ、ヒカリちゃんへの激重感情ヤンデレをこじらせ始めました。

一方、男湯のシンくんは、リラックス効果と警護官としてのプレッシャーの間で一人でパニックになり、完全にのぼせています(笑)。銃を持ったままお風呂に入るのはやめましょう。

次回は、この「金の卵を産むダンジョン」の噂を聞きつけ、がめつい猫耳商人がやってきます。

ヒカリちゃんを搾取しようとする商人と、過保護すぎるシンくんの、高度な防衛・契約交渉バトル(?)が勃発!

「ヒノキ風呂入りたい!」「キャルルちゃんの愛が重い(笑)」「シンくんのぼせて倒れそう」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【ブックマークに追加】と、【☆☆☆☆☆】の評価(星をポチッと押して★★★★★に!)をお願いいたします!

皆様の応援が、ダンジョンの新しい施設を解放する力になります。

次回の更新もどうぞよろしくお願いいたします!

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