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『限界社畜OLの絶対安全ダンジョン経営〜最強の過保護護衛に溺愛されつつ遊園地作り。荒らしは勝手に自滅します〜』  作者: 月神世一


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コンマ2秒の最後通告。最強暗殺者の流血なき絶対制圧劇

コンマ2秒の最後通告。最強暗殺者の流血なき絶対制圧劇

「ぜえっ……はぁっ、はぁっ……!」

ポポロ・ワンダーパークの特設アトラクション『無限ミラーメイズ』の出口。

重厚なマスタールームの扉の前に辿り着いた時、Bランク冒険者パーティ『ブラッディ・ファング』の面々は、見る影もなくボロボロになっていた。

巨大狼ポチのよだれで全身はドロドロに汚れ、激辛青汁を飲まされた部下たちは顔を緑色にして痙攣し、リーダーのギランの頭には金ダライによる見事なたんこぶがそびえ立っている。

物理的なダメージは『たんこぶ』一つしかないはずなのに、彼らの精神のHPヒットポイントはすでにマイナスを振り切っていた。

「クソッ、クソォォッ……!! なんだあのふざけた迷路は……!」

ギランは震える手で大剣を握り直し、ギリッと歯を食いしばった。

「だが、やっと辿り着いたぜ……。あの忌々しいアナウンスを流していた、マスターの部屋だ」

ギランの目には、どす黒い怒りと執念が宿っていた。

これほどの屈辱を味わわされたのだ。もはやダンジョンの利権などどうでもいい。中にいるマスターの小娘を引きずり出し、土下座させて泣き叫ばせてやる。

そうでもしなければ、Bランク冒険者としてのプライドが崩壊してしまう。

「おい、野郎ども! 立つんだよ! 中にいる小娘を血祭りに上げてやる!」

ギランは部下たちを怒鳴りつけ、マスタールームの扉を思い切り蹴り開けた。

バンッ!!

「出てきやがれ、このクソアマァ!! 俺たちをコケにしやがって……!」

ギランは咆哮とともに部屋へ踏み込んだ。

しかし、彼の目に飛び込んできたのは、怯えて震える少女の姿ではなかった。

「あ、迷路クリアおめでとう。思ったより早かったね」

ふかふかのソファに深々と腰掛け、キャラメルポップコーンを優雅に口に放り込むヒカリ。

その隣では、芋ジャージ姿の少女リーザが「おかわりありますわよ!」とポップコーンの入ったボウルを差し出している。

自分たちの凄惨な状況とはあまりにもかけ離れた、その『平和すぎる休日』の光景。

それが、ギランのプライドに最後の一撃を加えた。

「テメェ……ッ! 舐めやがってェェェッ!!」

完全に理性を飛ばしたギランは、大剣を上段に振りかぶり、ソファーでくつろぐヒカリに向かって一直線に突進した。

魔法による無効化など関係ない。その細い首を、己の素手で直接へし折ってやる。

ギランの巨体が、ヒカリの数メートル手前まで迫った。

ヒカリはポップコーンを噛みながら、全く動じない。

――次の瞬間だった。

「…………え?」

突進していたギランの視界が、ぐらりと反転した。

いや、違う。足元をすくわれたのだ。

ドンッ!!

鈍い衝撃とともに、ギランの巨体はマスタールームの絨毯に強かに叩きつけられていた。

肺から空気が強制的に押し出され、声が出ない。

何が起きたのか、まったく理解できなかった。魔法陣の光も、呪文の詠唱もなかった。

ただ、ふわりと。

黒いスーツを着た男が、ギランの突進の軌道に『滑り込むように』現れただけだった。

「――僕の雇用主マスターに、その汚い声を浴びせないでもらえますか」

見下ろすような、氷点下の声。

ギランが顔を上げると、そこには漆黒のスーツを着こなした神谷シンが立っていた。

そして、シンの右手には、すでに黒光りする銃『Glock19』が握られ、その銃口はギランの眉間、わずか1ミリの距離にピタリと押し当てられていた。

「な、なんだ、テメェは……!? いつからそこに……!?」

見えなかった。

Bランク冒険者であるギランの動体視力をもってしても、シンがどこから現れ、どうやって自分の足を払い、いつの間にその奇妙な武器を抜いたのか、まったく視認できなかった。

コンマ15秒。それが、シンがヒカリの背後から移動し、ギランを制圧するまでにかかった時間だった。

だが、ギランは強がって口の端を歪めた。

「へっ……ハッタリかましやがって。ここが『絶対安全領域』なのはわかってるんだよ! どんな武器だろうが、攻撃は無効化されるんだろうが!」

「ええ、その通りです」

シンは、眉間に銃口を押し当てたまま、酷薄な笑みを浮かべた。

「この部屋のルール上、僕が引き金を引いても、この9ミリ・ホローポイント弾は花びらか何かに変換されてしまうかもしれません。……ですが、冒険者。あなたは一つ、重大な勘違いをしている」

「……あ?」

シンの瞳の奥で、ゾッとするような殺気が膨れ上がった。

それは、魔獣が放つ威圧感とは違う。何百、何千という死線を潜り抜け、合法的に人間の命を奪ってきた『本物のプロフェッショナル』だけが持つ、純粋な死の気配だった。

「僕のトリガープル(引き金を引く動作)は、およそ0.05秒。弾丸がこの1ミリの距離を進む時間は、計算するまでもなく一瞬です。……さて、問題です」

シンは、銃口をさらにギリッとギランの眉間に押し付けた。

「このダンジョンの『安全システム』が作動し、弾丸を無効化する処理速度は、僕の弾丸があなたの頭蓋骨を貫通し、脳漿を撒き散らす速度よりも……『確実に速い』と、断言できますか?」

「――――ッ!!」

ギランの全身の毛穴から、ブワッと冷や汗が噴き出した。

理屈ではない。ギランの冒険者としての生存本能が、警鐘を最大音量で鳴らしていた。

(死ぬ……! こいつは、俺を本気で殺そうとしている……!!)

「システムがコンマ数秒でも遅れれば、あなたは死にます。あなたの命は今、僕の指先と、目に見えない謎の魔力システムの『処理速度の競争』に懸かっているわけです。……どうします? 自分の脳みそを賭けて、競争を始めてみますか?」

シンの冷たい言葉が、ギランの鼓膜に死神の囁きのように響く。

少しでも動けば、引き金が引かれる。システムが守ってくれる保証など、この男の異常な殺気の前では何の慰めにもならなかった。

ガチャン、とギランの手から大剣が滑り落ちた。

「ひっ、ひぃぃぃっ……!! わ、悪かった……! 降参だ、俺の負けだ!! だから、それを……どけてくれ……っ!」

ついに、Bランク冒険者のプライドは完全にへし折られた。

ギランは涙と鼻水を流しながら、床に這いつくばって命乞いを始めた。

シンは小さくため息をつき、ゆっくりと銃を下ろした。

「勝負になりませんね。……痛いのは嫌でしょう? 初めからそうやって、大人しくしていればいいんです」

チャキッ、とセーフティをかけ、シンは滑らかな動作で銃をホルスターに収めた。

暴力も、流血も一切ない。ただ己の圧倒的な実力と、死の恐怖による心理的ドミネーション(支配)だけで、シンは侵入者を完璧に無力化してみせたのだ。

「す、すごい……」

ポップコーンを食べる手も止めて、リーザが呆然と呟いた。

ヒカリも、いつもはおどおどしている過保護な護衛が、本気を出すとどれほど恐ろしく、そして頼もしいかを改めて目の当たりにし、小さく息を吐いた。

「ふぅ……シンくん、お疲れ様。完璧な制圧だったね」

「マスターに危険が及ぶ前に処理できず、申し訳ありません。床が少し汚れましたね」

シンがヒカリに向き直った瞬間、さっきまでの冷酷な暗殺者の顔はどこへやら、少し垂れ目のいつもの『過保護な大型犬』の顔に戻っていた。

そして、ギランたちが完全に無力化された、その絶好のタイミングで――。

「まいどーっ!!」

パンッ! と威勢よく手を叩きながら、ストライプのスーツを着た猫耳の商人・ニャングルが、巨大な算盤を小脇に抱えてマスタールームに乱入してきた。

「いやぁ、お疲れさんでっさ! 迷路のアトラクション、存分に楽しんでもらえたみたいやな!」

ニャングルは、床でガタガタ震えているギランたちに向かって、満面の営業スマイルを向けた。

「さて、お客様。当ポポロ・ワンダーパークは明朗会計がモットーでっせ! アトラクションの体験料、迷路の鏡を傷つけた器物破損の修繕費、ならびに特製『激辛健康青汁』のご飲食代を合わせまして……」

ニャングルは算盤をパチパチパチッ! と弾き、その結果をギランの鼻先に突きつけた。

「しめて、金貨1000枚(約1000万円)になりまっさ! お支払いは現金一括で頼みまっせ!」

「き、金貨1000枚だとぉ!? ふざけるな、そんな金あるわけ――」

「おや、払えまへんか? ほな、ギルドに冒険者ライセンスを差し押さえさせてもらうか、それとも……」

ニャングルがチラリと視線を向けると、シンが再び無表情でホルスターに手をかけた。

「ひぎぃっ!? は、払う! 払うから命だけはぁぁっ!!」

ギランたちは、泣き叫びながらアイテムバッグを逆さまにし、全財産をニャングルの足元にぶちまけた。足りない分は武器や防具の現物支給となり、彼らは文字通り『身ぐるみ剥がされた』状態になった。

「まいどありーっ! お帰りはあちらの扉からどうぞ! 次回からは、ちゃんと入場料払って正規のルートで遊んでな!」

ニャングルがホクホク顔で金貨を回収し、パンツ一丁(と布切れ)になった冒険者たちは、肩を寄せ合いながら逃げるようにダンジョンから立ち去っていった。

二度とこの恐ろしいテーマパークには近づかないと、心に固く誓いながら。

「……あははっ! なんか、すごいオチになっちゃったね」

ヒカリが笑い出すと、リーザもつられて笑い、シンも安堵したように小さく微笑んだ。

暴力にはおもてなしのペナルティを。

悪意には絶対的な恐怖の制圧を。

そして最後は、商人の算盤による合法的な全財産没収ざまぁを。

限界社畜OLの作り上げた『絶対安全ダンジョン』は、こうしてならず者たちを撃退し、ポポロ村の平和な休日を守り抜いたのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ついにスカッとざまぁ編、完結です!

「システムの無効化よりも、俺の銃弾の方が速いかもしれないぞ?」という、最強暗殺者ならではのサイコパス(?)な脅し文句で、ギランの精神は完全に崩壊しました。コンマ2秒のクイックドロウ、シンの本領発揮ですね!

そしてトドメはニャングル先生による高額請求! 物理ダメージはゼロなのに、全財産を巻き上げられて身ぐるみ剥がされるという、冒険者にとって最も残酷な結末を迎えました。

次回は、事件も解決し、ダンジョンの第1層が村人たちに向けてついにグランドオープン!

ヒカリちゃんの「異世界に来てよかった」という心からの笑顔で、第1章のラストを飾ります。

「シンくんカッコよすぎ!」「システムとの速度勝負の脅しスゲェ」「ニャングルのハイエナっぷり最高(笑)」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【ブックマークに追加】と、【☆☆☆☆☆】の評価(星をポチッと押して★★★★★に!)をお願いいたします!

皆様の応援が、ヒカリちゃんたちにとって何よりの報酬です!

第1章最終話も、どうぞよろしくお願いいたします!

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