幕間:熱血新入りの洗礼と、6大魔石の朝食会議(?)
――隠し部屋での甘い一夜が明けた、翌朝。
朝日が肖像画と「サクラコ・コレクション」を柔らかく照らす中、俺は腕の中でスヤスヤと眠るサクラコの髪を優しく撫でていた。
「……可愛い」
幾度この言葉を脳内で反芻したかわからない。だが、何度見ても飽きない。むしろ愛おしさは日ごとに倍増し、俺の胸を甘い熱で満たしていく。
すると、室内を覆っていた透明な幾何学模様が「チリーン」と涼やかな音を立てて消え去った。
『ダイヤ特製【絶対遮断結界・特別仕様】、解除完了! 防音・防光・プライバシー保護率100%だったよ!』
指輪のダイヤが誇らしげに輝く。
『ぬおおおぉぉぉーっ!! 素晴らしい! なんという鉄壁の防護! そして何という情熱の愛の深さかーーっ!!』
赤い大魔石ルビーが、朝からテンションMAXで真っ赤な光を大爆発させた。
『新入りの我が、昨夜の主様の熱き誓い(と脳内大暴走)に触れ、全身のマグマが沸き立つ思いですぞ! 主様! これが「愛」という名の燃え上がる炎なのですね!!』
『ルビーくん、朝から温度高すぎるって(笑)! でも分かるよー、主様のサクラコちゃん愛は太陽より熱いからね!』
サファイア(ブローチ)がバチバチと青い火花を散らして同意する。
『ホンマそれですわ! ちなみにヴァルハラ帝国からの賠償金第一陣、金貨1億枚が今朝早くに国庫へ着金しましたで! 覇王ガルシア失脚で我が国の経済覇権、完全確定ですわー!』
シトリンがそろばんの音をジャラジャラと鳴らし、上機嫌で報告してくる。
『ピカーン! ちなみに今のギルベルト陛下の脳内占有率、99・9%が「サクラコ可愛い」、残り0・1%が「朝食の献立」です! 国務はどこへ行ったんでしょうか!』
フローライトがピンク色に発光しながら、容赦なく俺の思考率を暴露する。
『あらあら、良いではありませんか。予言によれば、今日も今日とてサクラコちゃんの可愛さに殺された陛下が、過保護モードを全開にして侍女たちを困惑させますわよ?』
アメジストが妖しく紫色の光を明滅させてクスリと笑った。
「……貴様ら、サクラコが起きるだろう。静かにしろ」
俺は眉間を揉みながら、冷徹な低音ボイスで魔石たちを牽制する。
……だが、6大魔石となった彼らが、俺の言葉に怖気づくことなど金輪際ない。
『へっへー! 冷徹皇帝のフリしても無駄無駄! 脳内で「サクラコが起きる前の無防備な顔をあと5分だけ独占したい」って思ってるの、丸見えだからねー!』
『熱い……熱すぎるぞ主様ぁぁぁ!』
「……ルビー、サファイア。後で冷水に漬けて頭を冷やしてやる……」
俺が冷たい視線を送ったその時――。
「……ん……。ギルベルト……様……?」
腕の中で、サクラコがパチパチと目を擦りながら顔を上げた。
少し赤くなった目元と、無防備で可憐な寝起きスマイル。
『『『『『『(尊死ーーーーーー!!!)』』』』』』
脳内を揺るがす6大魔石の大合唱。
「……おはよう、サクラコ。よく眠れたか?」
俺は魔石たちの騒がしさを力技でシカトし、愛しい妻の額にそっと kisses を落とした。
「はい……! ギルベルト様とみんなのおかげで、すごく幸せな朝です」
そう言って可愛らしく微笑むサクラコを抱きしめながら、俺は心の中で静かに誓うのだった。
ストーカーと呼ばれようが重すぎると言われようが、この笑顔を守るためなら、俺は世界中の何とでも戦ってみせると。
(幕間おわり)




