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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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第8話 127人の兵士を、俺は50人に減らした



ガルドが最初に要求したのは、訓練場ではなかった。


名簿だった。


「全員の年齢、勤務年数、怪我、得意武器、家族構成を書け」


兵士長が露骨に嫌な顔をした。


「そんなもの、何に使う」


「兵を知る」


「剣を振れば分かる」


「だから弱いんだよ」


訓練場がざわついた。


俺は黙って見ていた。


ガルドの言葉は乱暴だ。


だが目は冷静だった。


午前中。


全兵士百二十七人の基礎訓練。


午後。


装備確認。


夕方。


個別面談。


三日間。


ガルドは酒を一滴も飲まなかった。


四日目の朝。


彼は俺の部屋へ来て、紙束を机に置いた。


「結論から言う」


「はい」


「百二十七人はいらねえ」


部屋にいたエマが息を呑んだ。


俺は紙を見る。


そこには三つの分類があった。


即戦力。


再訓練。


配置転換。


「残す兵は五十人」


「半分以下ですね」


「違う。戦える兵だけ残す」


ガルドは続けた。


「二十七人は農地警備と倉庫管理。三十一人は街道整備。十九人は退役扱いで村へ戻す」


「退役者の反発は?」


「出る」


「家族は?」


「だから村の仕事を用意しろ」


エマがすぐに紙へ書き込む。


彼女はもう、ただの侍女ではなかった。


「街道整備に回せば、商人の往来が増えます」


「そうだ」


俺は頷いた。


「兵を減らすのではなく、領地の機能に戻す」


ガルドが俺を見る。


「分かってるじゃねえか」


「前世で似たことをしました」


「前世?」


「こっちの話です」


◇


父への報告は荒れた。


「兵を五十に減らすだと?」


父の怒声が執務室に響いた。


「正確には、戦闘部隊を五十にします」


「同じことだ!」


「違います」


俺は紙を差し出した。


「今の百二十七人のうち、実戦に耐えるのは三十六人です。残りは装備も練度も足りません」


「鍛えればいい」


「食わせる金がありません」


「金、金、金! お前はそればかりだ!」


「金がなければ兵は動きません」


父が俺を睨む。


「領地を守る覚悟が、お前にはない」


その言葉は刺さった。


でも、引けない。


「違います」


俺は言った。


「守るために減らします」


「詭弁だ」


「では、このまま百二十七人を置いてください。三か月後、給料遅配で兵は逃げます。食料不足で民は怒ります。武器は壊れ、馬は餌を失います」


俺は息を吸った。


「その時、父上は何を守るんですか」


父の顔が強張る。


「父上、それでは領地が死にます」


長い沈黙。


外で風が鳴った。


父は椅子に沈み込むように座った。


「五十で、本当に守れるのか」


俺はガルドを見た。


ガルドは短く答える。


「今の百二十七よりは、ずっと強い」


父は目を閉じた。


やがて、絞り出すように言った。


「一か月だ」


「はい」


「一か月で結果を出せ」


許可が出た。


だが、問題はここからだった。


兵士たちは、自分たちが選別されることを知っている。


そして人は、正しさだけでは動かない。


翌日。


訓練場に集まった百二十七人の兵士たちは、


全員、俺を敵のような目で見ていた。


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