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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第2部 北道共同管理編

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55/57

第55話 伯爵に、帳簿を公開させろ

共同管理。


その言葉に、広場は静まり返った。


グレアム伯の権利を否定しない。


だが、自由にも徴収させない。


維持費として扱い、使い道を公開する。


それはつまり、グレアム伯にも帳簿を開かせるということだ。


「私に帳簿を見せろと言うのか」


「はい」


俺は答えた。


「こちらも出します」


エマが息を呑んだ。


ガルドが俺を見る。


危ない橋だ。


貴族に恥をかかせれば、敵意は強くなる。


だが、ここで曖昧にすれば、北道は永遠に食い物にされる。


「商人は、理由の分からない税を嫌います」


俺は言った。


「ですが、橋が直り、水場が守られ、盗難が減るなら払います」


ケイルが一歩前へ出た。


「私は払います」


番頭が睨む。


ケイルは引かなかった。


「使途が見えるなら、です」


次に、荷馬車の持ち主が手を上げた。


「車輪が壊れた時に助かった。道が良くなるなら払う」


別の商人も頷く。


小さな声が重なっていく。


グレアム伯はそれを聞いていた。


怒るか。


笑うか。


沈黙が長い。


そして、伯爵は言った。


「三か月」


「はい」


「三か月だけ、共同管理を認める」


広場に息が戻る。


「ただし」


伯爵の声が冷える。


「成果が出なければ、北道の徴収権は我が家が通常通り行使する」


通常通り。


つまり、好きに取るということだ。


俺は頷いた。


「分かりました」


「条件がある」


まだあるか。


グレアム伯は俺を指した。


「帳簿責任者を一人、我が屋敷に送れ」


エマが固まった。


ネルが青ざめる。


俺は即答しなかった。


人質。


それに近い。


だが、情報を取りに行く好機でもある。


セイルが横で囁いた。


「面白くなってきましたね」


まったく面白くない。


けれど、逃げる選択肢もなかった。

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