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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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45/57

第45話 信用は、隠さないことで増える

北道の巡回記録を公開すると言った時、エマは反対した。


「弱点も見えます」


「見えるね」


「巡回の薄い時間を狙われます」


「だから全部は出さない」


「では公開とは言えません」


「出すのは結果」


俺は紙に表を作った。


通行数。


修繕件数。


荷の紛失件数。


解決件数。


巡回回数。


事故件数。


細かい巡回時刻や人数は出さない。


だが、北道がどう管理されているかは見せる。


前世の会社でも、顧客向けの報告書を作った。


障害をゼロに見せるのではない。


障害が起きた時、どれだけ早く復旧したかを見せる。


隠すと疑われる。


見せると、怖がられる。


だから、見せ方を設計する。


「北道掲示板を作る」


俺が言うと、ミラが顔を上げた。


「掲示板ですか」


「市場の入口に置く。今週の数字を貼る」


ネルが目を輝かせた。


「私が書いてもいいですか」


「もちろん」


「字は大きい方がいいですね。商人にも村人にも読めるように」


ネルが自分から改善案を出した。


いい兆候だ。


人は仕事に慣れると、指示待ちから提案側に回る。


その瞬間を逃してはいけない。


「任せる」


ネルは嬉しそうに頷いた。


◇


次の市の日。


北道掲示板が立った。


ミラが作り、ネルが文字を書いた。


『今週の北道』


通行札:四十九枚


修繕:三十八件


荷消失:一件


解決:一件


巡回:二十六回


商人たちが足を止める。


「荷消失まで書くのか」


「普通は隠すだろ」


そんな声が聞こえる。


ケイルが掲示板の前で笑った。


「隠さないなら、逆に信用できる」


彼の一言は大きかった。


商人の言葉は、商人に届く。


俺が百回説明するより強い。


昼には、商人が五組まで増えた。


修繕台は忙しい。


保存食の試作品も売れ始めた。


村の女性たちが作った固焼きパンだ。


味は正直、うまくない。


だが日持ちする。


安い。


腹にたまる。


商人にはそれで十分なことがある。


「味を改善したいです」


一人の女性が言った。


視界に文字が浮かぶ。


【サラ】


職業:村人


料理:B


保存加工:A


商才:C


責任感:B


推奨職:


保存食工房長


出た。


また一人、埋もれていた。


「サラ」


「はい」


「保存食の責任者をやって」


彼女は驚いた。


「私がですか」


「保存加工に向いている」


「向いているかどうかなんて」


「試してから決めればいい」


肩書きは、時に人を前へ押す。


ただし、押しすぎると潰す。


「最初は三種類。安い物、日持ちする物、少し高くても味がいい物」


サラは少し考え、頷いた。


「やってみます」


夕方、掲示板の前に人だかりができていた。


ネルが新しい数字を書き足す。


通行札:六十三枚。


修繕:五十二件。


保存食販売:二十七個。


エマが小さく息を吐いた。


「伸びています」


「うん」


「でも、グレアム伯は黙っていません」


「だろうね」


その夜、領都に戻ると、黒鷲商会本店から使者が来ていた。


支店長バノンではない。


本店の監査役。


つまり、黒鷲商会も本気で動き始めたのだ。

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