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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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第44話 消えた荷物と、盗賊ではない犯人

消えた荷は、塩だった。


樽で三つ。


金額にすれば大きくない。


だが問題は、場所だ。


北道。


領道守備隊が巡回している区間。


しかも北の市へ向かう途中の荷だった。


「盗賊か」


ガルドが低く言った。


「そう見せたいんだと思う」


俺は荷車の跡を見た。


争った形跡はない。


血もない。


車輪の跡も乱れていない。


ただ、途中で荷が下ろされている。


「商人は?」


「無事です。ただ、怯えています」


ロウが答える。


「北道は危ないと広まるぞ」


その通りだ。


通行量を倍にしようとしている時に、荷が消える。


噂としては十分すぎる。


「誰が見つけた?」


「商人の護衛です」


視界に文字が浮かぶ。


【護衛ハンス】


職業:雇われ護衛


剣術:B


警戒:C


金銭欲:A


嘘:C


推奨職:


護衛隊員


金銭欲A。


嘘C。


怪しい。


だが、それだけで決めつけない。


「ハンス、状況を説明して」


「はい。道の途中で、荷が軽くなっていることに気づきました」


「気づいたのはいつ?」


「北の市の手前です」


「積み込み時には確認した?」


「しました」


「途中で止まった?」


「水を飲ませるために一度だけ」


「その時、君はどこに?」


ハンスの目が少し泳いだ。


「周囲を見回っていました」


セイルがいれば笑っていただろう。


だが今日は別行動だ。


俺が見るしかない。


「ロウ」


「はい」


「水場を確認して」


水場には、樽を転がした跡があった。


草が倒れ、土が削れている。


盗賊なら急いで持ち去る。


だが跡は妙に整っていた。


まるで、誰かが後で取りに来るために隠したように。


「近くを探す」


ガルドの部下が周辺を調べた。


一刻ほどで、塩樽は見つかった。


林の奥。


布で隠されていた。


盗まれていない。


隠されていただけだ。


「ハンス」


俺が呼ぶと、彼の顔が強張った。


「盗賊ではありませんね」


「私は何も」


「誰に頼まれた?」


「……」


「言えば、君を盗賊として裁かない」


ハンスは唇を噛んだ。


ガルドが一歩近づく。


「言え」


「黒鷲商会の男です」


やはり。


グレアム伯本体ではなく、周辺の手駒。


直接手を汚さず、北道の信用だけを落とす。


「目的は?」


「北道は危ないと噂を流せば、銀貨を払うと」


ロウの拳が震えた。


自分たちが守っている道を汚された怒りだ。


「レオン様、こいつを」


「処罰はする」


俺は言った。


「でも今は、証人にする」


ハンスが顔を上げる。


「証人?」


「北道で荷が消えたのは、盗賊ではなく偽装だった。そう証言してもらう」


「黒鷲商会に殺されます」


「なら、うちで雇う」


ガルドが俺を見た。


「本気か」


「金で動いた護衛は、金で管理する」


「信用できねえ」


「だから一人にはしない。監視付きで領道守備隊の下働き」


ハンスの適性は悪くない。


警戒Cは低いが、剣術B。


金銭欲が強いなら、給料と罰則を明確にすれば動く。


善人だけで組織は作れない。


だが、悪人を野放しにしても組織は壊れる。


使うなら、仕組みの中に閉じ込める。


夕方、北の市で俺は発表した。


「本日の荷消失は、盗賊ではありません。偽装でした」


ざわめき。


「塩樽は回収済み。犯人も確保済み。今後、北道の巡回記録を公開します」


ロウが隣に立つ。


その姿を見て、商人たちの不安が少し薄れた。


問題が起きない道などない。


問題が起きた時に、見つけて戻せる道が信用される。


北道は、少しだけ強くなった。

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