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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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第42話 荷車を直せば、商人は戻ってくる

二回目の北の市には、荷車が並んだ。


商人は三組。


村人は前回の倍。


売上はまだ小さい。


だが、広場の音が違った。


木を削る音。


縄を締める音。


車輪を外す音。


子供の声。


前回の不安ばかりの空気とは違う。


市場が、生き物のように動き始めていた。


「次、車輪の軸が割れています」


ミラが言った。


顔には木くずがついている。


だが声は前より大きい。


「補強でいける?」


「今日中に通すだけなら。ただ、長距離は危ないです」


「正直に言って」


「はい」


ミラは商人へ向き直った。


「応急処置なら銅貨四枚。三日以内に本修理が必要です」


商人が唸る。


「高いな」


ミラの肩が揺れた。


ここで折れそうになる。


俺が口を出そうとした時、エマが先に言った。


「高くありません」


商人が眉をひそめる。


「何だと?」


「このまま走れば、途中で車輪が外れます。荷を失えば銀貨単位の損失です」


エマは淡々と続ける。


「銅貨四枚で、それを避けられます」


商人は黙った。


やがて、銅貨を出す。


ミラが小さく息を吐いた。


俺は笑いそうになった。


価格交渉でミラを支えたのは、元侍女のエマだった。


組織がつながり始めている。


「レオン様」


ネルが記録板を持ってきた。


「通行札、午前だけで十一枚です」


「前回は一日で?」


「七枚です」


倍には届かない。


だが伸びている。


しかも今回は、修繕台に寄るために北道を選んだ商人がいる。


理由ができた。


これは大きい。


昼過ぎ、グレアム領の兵がまた現れた。


前回と同じく、通行証の確認。


だが今回は、商人たちが苛立った。


「またか」


「こっちは急いでるんだ」


「北の市に寄る時間がなくなる」


変化だ。


前回はグレアム兵を恐れて引き返した。


今回は、彼らの妨害を迷惑だと思っている。


商人の利害がこちらに寄り始めている。


ガルドが低く言った。


「追い払うか」


「駄目」


「だが邪魔だ」


「記録する」


俺はネルを見る。


「時刻、人数、止められた荷車の数、待ち時間を全部記録して」


「はい」


感情で殴り返すと、こちらが悪者になる。


記録にすれば、次の武器になる。


夕方。


二回目の市が終わった。


売上は銀貨三枚と銅貨八枚。


通行札は十八枚。


修繕件数は二十六件。


村人の参加世帯は四十七。


前回より、明らかに動いている。


「成功ですか?」


ネルが聞いた。


「成功」


今度はエマも否定しなかった。


ミラは疲れ切って座り込んでいた。


俺は彼女に水を渡す。


「班長、お疲れ」


ミラは水を受け取り、少しだけ笑った。


「班長って、重いですね」


「うん」


「でも、嫌ではないです」


その言葉を聞いた時、俺は思った。


荷車を直したのは、車輪だけではない。


人の自信も、少しずつ直っている。

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