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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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第36話 ロウの証言

ロウは、うまく話せる男ではない。


言葉は硬い。


礼儀も完璧ではない。


貴族の審議室では、明らかに浮いていた。


だが、その不器用さが逆に強かった。


作られた言葉ではないと分かるからだ。


「俺は、最初レオン様を恨みました」


ロウは言った。


エマの肩が少し動く。


ガルドは黙っている。


審議官たちも顔を上げた。


「兵士を外され、道を直せと言われた。恥だと思った」


正直すぎる。


だが止めない。


ここで綺麗に飾れば、証言の価値が落ちる。


「ですが、北道を直して分かりました」


ロウは手を握る。


「荷が通れば、村に金が落ちる。商人が来れば、仕事ができる。俺たちが道を守ることは、剣を振るうのと同じくらい領地を守ることでした」


老貴族が聞いた。


「実際に護衛はできるのか」


「できます」


「盗賊が出たら?」


「戦闘専任兵と連携します。俺たちは道を知っています。危険な場所も、荷車が詰まる場所も分かります」


「兵としては二流でも、道の守り手としては一流だと?」


少し意地の悪い質問だった。


ロウの顔が赤くなる。


だが彼は逃げなかった。


「はい」


審議室に小さなざわめきが起きた。


自分で二流と認めるのは、勇気がいる。


だが、組織ではそれが強さになる。


自分の向き不向きを認めた人間は、配置を間違えにくい。


グレアム伯が口を開いた。


「美しい話だ」


まただ。


この男は、相手の言葉を美しいと言ってから切る。


「だが、君は領主家にそう言わされているのではないか」


ロウの拳が震えた。


「違います」


「元兵士が貴族に逆らえるかな」


空気が冷える。


ロウは一瞬、言葉に詰まった。


そこでガルドが立ち上がろうとする。


俺は手で止めた。


ロウの言葉で返す場面だ。


「逆らえます」


ロウは低く言った。


「俺は、広場でレオン様に文句を言いました」


審議官の視線が俺に向く。


「その時、レオン様は頭を下げました」


ざわめきが大きくなる。


貴族が民に頭を下げた。


この場では、褒められるとは限らない。


弱さと見られる可能性もある。


グレアム伯はそこを逃さなかった。


「若い貴族が民に頭を下げる。なるほど、民には好かれるかもしれない」


彼は微笑む。


「だが、それは統治ではない。人気取りだ」


痛い。


この切り方は鋭い。


俺は立ち上がった。


「人気取りなら、兵士を減らしません」


グレアム伯の目が細くなる。


「何?」


「領民に好かれたいだけなら、兵士の肩書きを残し、給料も今まで通りにします」


俺は資料を一枚掲げた。


「ですが、それでは三か月で領地が破産する」


行政官が資料を見る。


「私は、嫌われる改革をしました」


声が震えそうになる。


だが押さえる。


「その上で、嫌われた理由を聞き、仕事の意味を作り直した。それが統治でないなら、統治とは何ですか」


沈黙。


グレアム伯はすぐには返さなかった。


初めてだ。


こちらの言葉で、相手の間が空いた。


ロウが深く頭を下げる。


「以上です」


彼が下がる時、ガルドが小さく言った。


「よくやった」


ロウは一瞬、泣きそうな顔をした。


だがすぐに顔を引き締めた。


次の証人は、商人ケイル。


味方ではない男。


嘘をつかせないために逃げ道を用意した男だ。


彼が扉から入ってきた時、グレアム伯の表情がわずかに変わった。


どうやら、来ないと思っていたらしい。


それだけで、こちらの準備は一つ成功していた。

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