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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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第35話 無能な三男、審議の席に立つ

中立都市ラングハルトは、石造りの街だった。


城壁は低い。


だが門は広く、馬車の出入りが多い。


商人。


役人。


各領の使者。


誰もが、書類と金と噂を運んでいる。


ここでは剣より印章が強い。


俺が苦手な世界だ。


いや、前世の俺なら得意だった。


だが今の俺は十五歳の貴族三男。


剣術F。


魔力F。


身体能力E。


しかも、周囲から見れば急に領地経営に口を出し始めた若造だ。


審議室に入った瞬間、その視線が刺さった。


「あれがアルヴェルト家の三男か」


「噂の人材好きの」


「剣も魔法も駄目らしい」


聞こえるように言うな。


とは思う。


だが、聞こえるように言うのも作戦だ。


こちらを揺らすため。


グレアム伯は先に席についていた。


前回と同じ、冷たい笑み。


「レオン殿。よく来られた」


「招かれましたので」


「今日は正式な場だ。感情ではなく、能力を問われる」


「望むところです」


口だけは強く出た。


心臓はうるさい。


審議官は三人。


中立都市の行政官。


王都から派遣された記録官。


そして近隣領の老貴族。


三人とも、こちらに温かい目は向けていない。


当然だ。


弱い領地の言い分など、最初から信用されにくい。


「では始める」


行政官が言った。


グレアム伯側が先に発言した。


内容は予想通りだった。


北の村の飢饉。


村長の不正。


領軍縮小。


街道維持の遅れ。


そして最後に、慈善。


「我がグレアム家は、北の村へ食料支援を行う用意がある」


グレアム伯は穏やかに言った。


「北道の管理を十年預かることで、村を救い、街道を安定させたい」


美しい。


本当に美しい提案だ。


外側だけは。


行政官がこちらを見る。


「アルヴェルト家、反論は」


父は俺を見た。


全権を預ける。


その視線だった。


俺は立ち上がる。


背が低い。


声も若い。


この場では、それだけで不利だ。


だから、最初の一言は短くした。


「反論ではなく、報告します」


審議室が静かになる。


「北の村は、現在立て直し中です」


俺はエマへ合図した。


彼女が資料を配る。


手は震えていない。


「十日前、北の村の備蓄は十日分未満でした。現在は配給管理により、老人と子供四十八名分の食料を確保しています」


行政官が資料を見る。


「井戸は仮補強を完了。水くみ待ち時間は平均二刻から半刻へ短縮」


記録官の筆が動く。


「北道は水抜き作業を実施。荷車通過数は一日二台から、昨日は十六台へ増加」


老貴族が初めて顔を上げた。


「十六台?」


「はい」


「証拠は」


「通行札の控えと、商人の署名があります」


エマが二枚目の資料を出す。


グレアム伯の笑みがわずかに薄くなった。


効いている。


「領軍については」


行政官が聞いた。


「縮小ではなく再編です」


俺はロウの巡回記録を出した。


「領道守備隊として、街道維持と巡回警備を統合しました。戦闘専任兵は減りましたが、街道の実効警備時間は増えています」


「詭弁では?」


グレアム伯が言う。


「そう見えるかもしれません」


俺は認めた。


「だから、証人に話してもらいます」


扉が開く。


入ってきたのは、ロウだった。


元兵士。


今は領道守備隊の現場監督。


彼はぎこちなく礼をした。


そして言った。


「俺は兵士ではなくなりました」


審議室が静かになる。


「ですが、今も領地を守っています」


その声は、資料より重かった。

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