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異世界転生した元・企業再生屋、無能扱いされた人材を集めて滅亡寸前の辺境領を立て直す  作者: 渋谷 爽月
第1部 滅亡寸前の辺境領、再生開始

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第27話 倉庫番の横領を見逃した理由

麦が運び出されている。


直訴の内容は単純だった。


だが、単純な話ほど裏がある。


夜。


俺はエマ、ネル、ガルド、そしてセイルを連れて倉庫へ向かった。


「なぜ私まで」


セイルが言う。


「嘘を見抜く係」


「便利に使いますね」


「そのために雇った」


「否定できません」


倉庫の裏口には、確かに車輪の跡があった。


新しい。


小麦袋を積んだ荷車が通った跡だ。


ネルがしゃがみ込む。


「三日前にも同じ跡がありました」


「覚えているの?」


「はい。雨の後だったので」


記憶力S。


使える。


倉庫番の男、ダリオを呼び出した。


五十代。


この家に二十年以上仕えている。


視界に文字が浮かぶ。


【ダリオ】


職業:倉庫番


在庫管理:B


計算:C


忠誠:61


罪悪感:94


推奨職:


倉庫管理補佐


罪悪感、九十四。


黒だ。


だが忠誠も高い。


ここが妙だった。


「ダリオ」


俺は言った。


「麦を運び出した?」


ダリオの顔が青ざめた。


「……いいえ」


セイルが肩をすくめる。


「下手ですね」


ダリオは膝をついた。


「申し訳ございません!」


ガルドが一歩前へ出る。


「何袋だ」


「二十六袋です」


エマが息を呑む。


今の領地にとっては大きい。


「どこへ売った」


「売っておりません」


「嘘か?」


セイルが首を振る。


「今のは本当でしょう」


俺はダリオを見る。


「どこへ運んだ」


「北の村です」


「なぜ」


ダリオは震える声で答えた。


「飢えていたからです」


沈黙。


北の村。


不作がひどい地域だ。


税の取り立ても遅れている。


記録上は、配給対象に入っていなかった。


なぜなら、村長からの報告では備蓄ありになっていたから。


つまり、別の数字が嘘だった。


「村長の報告は?」


エマがすぐに帳簿をめくる。


「備蓄二か月分とあります」


ダリオが首を振った。


「ありません。半月もありません」


なぜ報告が嘘なのか。


理由はすぐ分かった。


備蓄がないと認めれば、村長の管理責任になる。


税の減免も申請しなければならない。


上に怒られる。


だから帳簿上だけ備蓄ありにした。


そのしわ寄せを見た倉庫番が、勝手に麦を出した。


横領。


だが、私腹を肥やすためではない。


「レオン様」


エマが小さく言った。


「規則では処罰対象です」


「分かってる」


ガルドも黙っている。


セイルだけが興味深そうに俺を見ていた。


ここでどう裁くか。


組織の空気が決まる。


横領を許せば、規律が壊れる。


善意を罰しすぎれば、人の心が壊れる。


「ダリオ」


俺は言った。


「倉庫番の任は解く」


ダリオは深く頭を下げた。


「はい」


「ただし追放はしない」


エマが俺を見る。


「あなたを、配給管理の補佐に回す」


「……私を、ですか」


「飢えている村を見つけた目は必要だ。でも鍵を一人で持つ役には戻せない」


ダリオの肩が震えた。


「ありがとうございます」


「礼はまだ早い」


俺は続けた。


「二十六袋分は記録する。無断搬出として処分歴にも残す。給料も一部返納してもらう」


「はい」


「その代わり、北の村の実態調査に同行しろ」


「必ず」


◇


翌日、北の村へ向かった。


村に入った瞬間、答えは出た。


痩せた子供。


空の倉。


壊れた井戸。


村長の家だけが、やけに立派だった。


視界に文字が浮かぶ。


【村長モリス】


職業:村長


管理:D


保身:S


虚偽報告:SS


忠誠:12


推奨職:


なし


俺は深く息を吐いた。


ダリオの横領を見逃した理由。


それは、もっと大きな嘘が村に隠れていたからだった。

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