第6話
塔の装置が林立し、その周りでは埃が少し浮き上がっている。それは塔の内部にエネルギーが送り込まれて、蓄積される中で、微弱な波が放たれている証拠だ。
ケントは、もし今、仮に雨が降っているとしたなら、これらの塔は雨滴を弾くため、決して濡れないだろうと思った。
そうこうするうちに、塔に刻み込まれた紋章が変容し、計器の役割を始めた。これらの紋章は、精妙な生き物のようであった。そして、これから起こるべきことを、時が満ちるまで、寸分も誤りもなく用意しようとしている。
他方、向かいの山は静かに聳えていた。湖がその側には横たわっている。こうした一連の風景は、この大陸の中で、何の変哲もなかった。そうであるからこそ、アペイロン石の実験は、前例がなかったのである。
エネルギーは、蓄積された。そして、限りなく百パーセントへと近づいた。塔の様子を見ていれば、そのことが誰にでも察知できた。
しばらくの沈黙。そして浮遊波の発信。
もちろん、浮遊波は目に見えないし、音も発しない。したがって、ケントはしばらくの間、何も起こらなかったので、本当に発信が行われたのかと疑った。
しかし、次の瞬間、恐るべきことが起こった。
大きな地鳴りが轟いたのである。ケントが気づいた時には、目の前の山に変化が起こっていた。
山の姿が、刻一刻と上昇を始めている。その地面は今にも砕けそうである。そして、地鳴りが収まった時には、その姿がすでに、空中に存在していた。遠くのことゆえ、地上何メートルなのかは分からなかったが、今なお上昇していることは明らかだった。
まるで、その光景は夢のようであった。しかし、青空の中に山が浮かび上がっているのは、アペイロン石のために、紛れもない現実なのである。
そして、山は移動を続け、空中で止まった。その高さは、暁の大塔を遠くから見た時か、それよりも高いくらいだ。
恐るべきことは、それに留まらなかった。永遠に静止するとも見えた山が、次の瞬間、傾いたのである。
その傾きと、垂直落下は無音であった。その無音さは、まるで雪にも似ていた。
山は、先ほどまで聳えていたはずだった。しかし、切り離された物体は重力を負い、地上の湖へと迫り、そして墜落した。
再び、轟音が鳴った。そして、湖の水は壊れるほどに溢れた。そこに残されたのは、山の残骸だけであった。
ケントは、アペイロン石の威力に改めて驚いた。顔を見合わせたが、そのことはアリシアも同様であった。
最終段階は、術式加速砲である。
加速砲は、たった一つだけ用意されているだけだった。その照準は、もう一つの山のある方向に向かっている。しかし、その砲は強力な威力を誇っており、光の速度で、いかなる堅牢な壁も貫くことができる。それは天上の神々の放つ矢であった。
伝達回路からは、魔力が次から次へと流れ込む。
これはアペイロン石が、山の浮遊に莫大な力を使ってもなお、エネルギーを溢れさせている証拠であった。隔絶された箱の中から、これだけの力が出てくるのは、誰にとっても驚くべきことだ。
そして、加速砲にエネルギーを充填する。砲身の内部や、装填されている弾が、まるで電流のように白熱している。職人の手で組まれた魔術回路は、玄妙な模様となって、砲身の中に満ちていた。
閾値を超えたため、燃焼符の安全装置も外れた。この符は威厳ある詠唱がされており、さまざまな防御属性の結界を破壊するのである。
ケントは、このような加速砲の様子を見ていた。その白熱は、砲の外観がより鮮やかな色に変化し、さらにその変化が急速になったことでも察せられた。そして、膨大な数の伝達回路に繋がれて、あたかも光景が一つの実験室のように見えた。
アリシアがこちらを向き、指でカウントを数えた。
一つずつ、減っていく数字。そして——
加速砲は、轟音を立てて弾を発射した。その砲身は、凄まじい反動にも耐えた。
ケントは、その轟きが神々の劇のようにも思えた。
そして、そう思っている間に、次の轟音が耳を撃った。着弾したのである。そして、燃焼符が山の中で展開・炸裂した。
恐るべきものが目の前に現れた。
燃える山である。
かつて山であったものは、死の高温に包まれた。赫々たる太陽にも似ていた。
アリシアはその様子を見て、飛び上がって喜んだ。そして、ケントに向かって言った。
「神々の火よ!」
三段階の実験は、成功だった。
一連の光景の中では、業火の炎が踊っている。
燃え上がる緑の火は、地上で鳴り響き、天を沖しているのであった。




