第13話
このような一切の手続きが終わってから、裁判官が、「聖火の審問」をケントに促したのであった。
青白い炎。燃える薪。そして、炎の中の聖具。その聖具は、組み合わされた鍵であった。鍵は開閉の象徴である。
ケントはもはや、死罪は免れないものと覚悟していた。
聖具をつかもうと、炎の中に手を入れた。しかし、熱さは感じなかった。むしろ、雪のような冷たさすら感じたくらいである。聖具は灼熱の状態であったが、その感覚は同様であった。ケントはその感覚の矛盾に戸惑った。しかし、最終的には聖具をつかみ出し、目の前に捧げ持った。
裁判官は、にわかに信じられないような顔をしていた。しかし、神明の結果を見定めると、その場で「その者は無罪である」と言おうとした。
その時である。ギルバート王は、腰に下げた剣に手を掛けていた。
「もはや、このような茶番劇はここまでだ。『聖火の審問』がどうであろうと、反逆者はここで死んでもらう」
すると、王妃ソフィアはその場で立ち上がり、大声で言った。
「王よ、お待ちなさい。もしあなたがアペイロン石と契約していたら、どうなりましたか。あなたとて全知全能ではありません。もし世界制覇を目論んでいたなら、大変なことになったでしょう。石の呪いは、ケント・アーヴィングにではなく、あなた自身の身に降りかかっていたのではありませんか」
「黙るがよい。これは女の問題ではない」
「女であるからこそ、分かることもございます」
こう言って、王妃は一歩も引かなかった。
十秒余りの沈黙が、法廷の場を流れた。
すると、教主ジュリアンは、老いた手を挙げた。これまで、何も言わなかった光明教団の権威が、いかなる見解を示すのかは、注目された。
「私からもよろしいでしょうか」
「ジュリアンよ。あなたにどんな意見があろうと、これは世俗の問題であることをご理解いただきたい」と王。
しかし、教主は話を続けた。
「これまでのいきさつは、おおむね理解した。ケント・アーヴィングには、確かに容疑がある。一つは、アペイロン石を失ったことについて、もう一つは、王殺しのクーデターを目論んだことについて。前者については、有ったものが無くなった以上、その容疑に間違いはないようだ。
ただし、後者については、肝心の物証がないではないか。心の中の思いなど、誰にも読むことはできない。そして本人は、意識朦朧とした状態の時に「王を討つ」と述べたに過ぎない。したがって、それのみによって死罪という重大な結論を下すのは、いささか無理があるだろう。——ケント・アーヴィングよ。意識がはっきりとしている今なら、何かしらを言えるのではないか」
この流れに乗るしかない、とケントは感じた。しかし、「私は王殺しを目論んでいない」と発言するのは、事実を偽ることになる。進んで偽りを話すことは、たんに事実を話さないことよりも卑しいことである。したがって、ケントはなお、沈黙していた。
「ケント・アーヴィングよ! もしこれ以上、黙っているならば、王としてお前の肉体を残酷に痛め付けてでも、ありのままを話させるぞ」
ここまで来て、法廷は一時中断となった。それが再開されたのは、三時間後のことである。




