敵を退治致しましょう(夏視点)
山崎のクラスへ向かう。
京香との約束の時間より30分早いし、愛華と幸村が京香の足止めをしているはずだ。
京香は『私の問題です』と自分で解決したがったが、私は嫌なんだ。
できれば、攻撃してくるやつらには関わらないで欲しい。
今回も、京香に知られる前に、山崎を排除してしまいたい。
そう思いながら、教室で帰り支度をしている山崎に声をかける。
「山崎、話があるんだが、少しいいか?」
「…………ええ、いいわよ。」
「出来れば、音楽室に来て欲しいんだが……。」
そう誘いをかけると、しばらく悩んだ末に返事が返ってきた。
「…………悪いけれど、時間がないの。ここで話してくれるかしら?」
「……ここでいいのか?」
「ええ、もちろんよ。」
「私はまどろっこしいの嫌いだから、単刀直入に言うな?京香への嫌がらせをいい加減やめて欲しいんだ。」
「……嫌がらせ?悪いけれど、何のことだか分からないわ?何か勘違いしてません?」
「見苦しい。」
私と山崎が話しているのを聞いていた周りがざわめき始めた。
見せ物になるのは嫌だが、証人にもなるので我慢する。
下手に二人きりになったりしたら、暴言や暴力の濡れ衣を着せられるかもしれないからな。
だが、こいつと話すだけで苛々してくる。
でも、ようやっと排除できることへの喜びも感じる。
こいつは、散々京香の悪口を吹聴したり嫌がらせをしたり、うざかったからな。
それも陰湿で犯人を確定しにくいものばかりだった。
別に、葛城にまとわりつくことや迷惑をかけることについてはどうでもよかったんだ。
むしろ、京香に危害を加えるようなことがなかったのなら、応援したかもしれない。
葛城がいると、京香がとられてしまうかもしれないしな。
今でさえ独占欲が強すぎるのに『彼氏彼女』という立場になったら、絶対に自分一人のものにしようとする。
大義名分を与えるのは、私と京香の間に、切っても切れない絆ができてからにしたい。
証拠を元に、追い詰めようと思ったところに、なぜか京香が現れた。
「夏さん。」
「…京香。どうして。」
どうして京香がここに?
できるなら、見られたくなかったんだが。
幸村め……役にたたないな。
「夏さん、心配していただいてありがとうございます。でも、これは私の問題でもあります。私にも責任があります。」
「京香……勝手にすまない。」
「お気持ちはとっても嬉しいです。ありがとうございます。」
…仕方がない。京香の目がある以上、今はここまでだ。
実際に被害を受けたのは京香なんだからこの場は任せよう。…そう…この場は…。
山崎に相対する位置から下がり、京香にその場を譲る。
そして、一歩ひいた位置から見守ることにした。
「さて、山崎センパイ。」
「……なんですか。」
「リュウのことを諦めて、リュウや私に手を出すのをやめてもらえますか?」
「……それはこっちのセリフよっ!!!あんたなんかリュウ様の邪魔よっ!!!ご迷惑がかかってるんだからリュウ様から離れなさいよっ!!!」
「迷惑?リュウがそう言ったのですか?」
「リュウ様はお優しいから口には出されないけれど、迷惑に思っておられるわ!」
「あり得ません。それに迷惑なのは貴女です。悪いのですが、リュウは私のものなんです。リュウが貴女に靡くことは、万が一にもあり得ないとは分かっているのですが、手を出されると、とても不愉快なんです。」
「……私のもの!?」
「ええ。リュウは私のことがだぁいすきなので、私のものになってくれたんです。私の言うことならなぁんでも聞いてくれて便利ですよぉ?」
……上手いな。
まるで、本当の性悪女みたいだ。
「この性悪女っっっ!!!」
「性悪女だから何ですか?」
「あんたもこれで終わりよ!今のはボイスレコーダーに記録させてもらったわ!!!リュウ様に聞いていただいて、あんたの本性暴いてやるから!!!」
「どうぞ?」
「え……?」
「でも、わざわざ記録しなくても、リュウならすぐそこに居ますから、この声も聞こえていたと思いますよ。ねえ?リュウ?」
「ああ。」
葛城が戸を開けて入ってきた。
そして、京香の前に行くと、京香の髪を一房掬い上げ、唇を落とした。
……キザだな。
「リュウ様!お聞きになられたのでしょう!?この女は貴方を騙しているんです!!!」
「……騙す?騙されてなんかないぜ?」
「ふふふっ!リュウは、どんな私でもだぁいすきですものね?」
「ああ、お前だけを愛している。」
「リュウ様ぁ……。」
「ねぇ、リュウ。」
「ん?」
「リュウは私のものですよね?」
「もちろん。」
「だ、そうですよ?センパイ?」
「あんた……あんた……っっ」
「センパイ……本当は分かっていたのでしょう?」
「は!?」
「自分のしていることがどんなことなのか。はた目から見て醜い行いだということが。……映像を確認していると、貴女の行動は明らかに気づいているようでしたが?」
「っっっ!!!」
「ね…ここまでにしませんか?」
「っっっ………」
言葉に詰まった山崎は、泣きながら走り去っていった。
でも、今のままじゃ甘すぎる。
衝撃を受けている今のうちに完膚なきまでに叩き潰さないとなぁ?




