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第三章 昔の駐在さん
佐伯は町の古老、吉岡老人を訪ねた。
「田村さんという警察官をご存じですか?」
老人の顔が曇った。
「……田村さん?」
「三十年前、この駐在所にいた方です」
長い沈黙。
「知ってるとも」
「何があったんですか?」
吉岡老人は窓の外を見た。
「消えたんだよ」
「失踪ですか?」
「違う」
老人は首を振った。
「町から消えた」
佐伯は意味が分からなかった。
「どういうことです?」
「田村さんは夜勤中だった。午前二時十三分に、駐在所の電話が鳴った」
「誰から?」
「本人からだ」
佐伯の背筋が寒くなる。
「本人が電話を?」
「そうだ」
老人は言った。
「『今、駐在所にいます』って」
「……それは普通じゃないですか?」
「違う」
老人は佐伯を見る。
「その電話を受けたのは、田村さん本人だった」




