七十九 驪姫、煽り女房の末路
野心的な女房が、若い公卿を煽って無茶な出世工作をさせようとする。彰子は驪姫のように、他人の野心を煽る者は最後に自分も壊れると警告する。さらに公卿に、実績なしの昇進工作は敵を増やすだけと説く。策謀は未然に止まり、煽った女房は孤立する。
野心は、火に似ています。
小さく灯っているうちは、人を温めます。もっと上手くなりたい。もっと認められたい。もっと役に立ちたい。今より高いところへ行きたい。そういう気持ちは、悪いものではありません。
むしろ、まったく野心のない人だけで宮中が回るかといえば、たぶん回りません。誰も出世を望まず、誰も責任を取ろうとせず、誰も新しい役を引き受けない。それはそれで困ります。
前世でも、向上心のない職場は停滞しました。
「今のままでいいです」
「それは私の仕事ではありません」
「責任が増えるなら結構です」
そう言われ続けると、組織はじわじわ錆びていきます。だから、野心そのものは悪くありません。
問題は、火の扱いです。火鉢の中にある火は、人を生かします。けれど、誰かが横から薪を放り込みすぎれば、火は燃え上がり、部屋を焦がし、最後には自分の袖まで焼きます。
野心も同じです。自分の努力を燃やす火ならよい。けれど、他人を煽り、焦らせ、無理な道へ押し出す火は危険です。
そして宮中には、ときどきいます。自分では手を汚さず、他人の野心に油を注ぐ人が。
その日、藤壺に持ち込まれた話は、最初はたいしたことのない噂に見えました。
「公卿の兼頼殿が、近頃たいそう落ち着かぬご様子でございます」
常盤が、いつものように声を潜めて言いました。ただし、目はかなり輝いています。
「常盤」
「流しません」
「まだ何も言っていない」
「先に申しておきました」
「よろしい」
赤染衛門が、もう半分諦めた顔で筆を置きました。
「兼頼殿とは、先日、文の取り次ぎを誤りかけた若い公卿ですね」
「はい。悪い方ではありません。ただ、少し調子に乗りやすいところが」
小少将がさらりと言いました。手厳しい。けれど、その通りです。兼頼は、若い公卿です。家柄は悪くありませんが、特別に高いわけでもありません。
仕事ぶりは、真面目な時は真面目。ただし、褒められると浮く。注意されると沈む。非常に分かりやすい人です。
「その兼頼殿に、何が?」
私が尋ねると、常盤はさらに声を落としました。
「ある女房が、兼頼殿を煽っているそうでございます」
「煽る」
「はい。『あなたほどの才が、この程度の役で埋もれているのはおかしい』『もっと上へ行くべき』『今動かなければ、一生下の者に使われる』と」
赤染衛門の眉が動きました。
「誰です」
「名は……」
常盤がちらりと私を見ます。私は扇を開きました。
「ここでは伏せます」
「はい。では、野心的な女房、と」
「それも少し直接的ね」
「では、火鉢女房」
「燃えそうだからやめなさい」
常盤は不満そうでした。でも、言い得て妙ではあります。その女房は、もともと他御殿に近い人物でした。美しく、口が立ち、場の空気を読むのが上手い。ただし、読むのは場を整えるためではなく、揺らすためです。
誰が何を欲しがっているか。誰がどこに不満を持っているか。誰が褒めれば動くか。誰が怒らせれば崩れるか。そういうものを嗅ぎ分けるのが得意な人でした。
私は一度、宴の端で見たことがあります。彼女は笑いながら、相手の心に小さな針を刺すような話し方をしていました。
「あなたほどのお方が、あの方の後ろに控えているなんて」
「本当はもっと評価されてよいはずですのに」
「皆、あなたの才を恐れているのでしょう」
褒めているようで、相手の不満を育てる言葉。甘い毒です。
「兼頼殿は、何をしようとしているの?」
「どうやら、自分を一つ上の役へ推すよう、何人かに働きかけるつもりのようです」
「実績は?」
「……まだ」
常盤が目を逸らしました。
「大きな手柄はございません」
「根回しは?」
「煽った女房が、『根回しなど後でよい。まず強く出るべき』と」
赤染衛門が額を押さえました。
「最悪でございますね」
「敵は?」
「すでに増えかけております。兼頼殿より年長の公卿たちが、たいそう不快に思っているとか」
でしょうね。実績なし。準備なし。根回しなし。しかし本人だけは「自分は本来もっと上にいるべき」と思い始めている。
これは、だいたい燃えます。そして燃える時、煽った人は少し離れたところで見ています。
「私はただ、背中を押しただけ」と。
前世でも、似たような人がいました。
「あなたなら言えるよ」
「上に掛け合った方がいい」
「みんな不満に思っている」
「あなたが代表して言ってくれたら」
そうやって他人を前に出し、自分は後ろに隠れる人。結果、前に出た人だけが怒られ、煽った人は「え、そんなつもりじゃ」と逃げる。
悪質です。
「姫様」
菅原の君が、そっと手を上げました。
「これは、物語になりますか?」
「なります」
私は言いました。
「ただし、悲劇になります」
菅原の君の目が少し輝きかけ、私の視線に気づいて沈みました。
「悲劇を喜んではいけませんね」
「はい」
私はうなずきました。
「古き中国の書に記された、晋の国の『驪姫』の物語を知っていますか」
「驪姫、でございますか」
赤染衛門が呟きました。
「傾国の悪女として名高き妃ですね」
「はい。夫である君主の野心や疑心に火をつけ、国を焼いた女です」
私がそう言うと、女房たちが息を呑みました。
「彼女は、自分の子を跡継ぎにするために、夫である献公の心を揺らします。優秀な他の息子たちへの疑いを煽り、『あの者たちはあなたを狙っている』『今すぐ手を打たねば、あなたが危ない』と追い立てる。君主の疑心と野望へ、次々と薪をくべたのです」
「妻が、そこまで……」
小少将が眉を上げました。
「ええ。そして、どうなったのですか」
若菜が小さく尋ねます。
「夫は自分の手で優秀な息子たちを殺し、あるいは国から追い出しました。けれど、疑いに苛まれ、周囲を敵に回し、有能な臣下は去り、最後には国が傾きます。煽った驪姫もまた、夫の死後に反対派に殺され、破滅する」
沈黙。香炉の煙が、細く揺れました。
「他人の野心や疑心に火をつける者は、安全な場所にいるように見えます」
私は言いました。
「けれど、本当は違う。煽った火が大きくなれば、自分も煙を吸う。相手が失敗すれば恨まれる。成功しても、もっと大きな炎に巻き込まれる。誰も、火の粉から逃げ切ることはできません」
紫式部が几帳の陰から低く言いました。
「火をつけた者は、自分が焼かれるまで、燃え跡を見続けることになります」
菅原の君が震えました。
「式部様、それは……」
「書きません」
「なぜですか!」
「今は現実の火消しが先です」
その通りです。物語にするのは、火が消えてから。
私は扇を閉じました。
ぱちり。
「兼頼殿を呼びましょう」
赤染衛門が顔を上げました。
「直接でございますか」
「はい。燃える前に」
澄子が静かに頭を下げました。
「人目を避けて、お呼びいたします」
やはり澄子は早い。しばらくして、兼頼は藤壺の外へ呼ばれてきました。
御簾越しです。彼は明らかに緊張していました。しかし同時に、どこか期待もしている顔です。もしかすると、自分の出世について、藤壺から後押しがあると思ったのかもしれません。
そうなら、たいへん残念です。今日の用件は、消火です。
「兼頼」
私が名を呼ぶと、御簾の向こうで彼が深く頭を下げました。
「はっ」
「近頃、一つ上の役を望んでいると聞きました」
彼の肩が、ぴくりと動きます。
「それは……その、私にも、もう少し力を尽くせる場があるのではと」
「望むことは悪くありません」
私は言いました。
「上へ行きたいと思うのは、責めることではありません」
兼頼の表情が少し明るくなった気配がしました。でも、続けます。
「ただし、実績の無い昇進工作は、敵を増やすだけです」
御簾の向こうが固まりました。女房たちも固まりました。
「……実績なし、と申されますか」
声が少し震えています。怒りか、羞恥か。たぶん両方です。
「大きな役を望むなら、まず今の役で信頼を積むことです。文の取り次ぎを正確にする。約束の時刻を守る。人の前で余計な自慢をしない。年長者の顔を潰さない。あなたがいなくなると困る、と思われる仕事を一つ作る」
赤染衛門が控えを取り始めました。また心得になる予感がしたのでしょう。
「しかし、今動かねば機を逃すと」
兼頼が言いました。
「誰がそう言ったの?」
沈黙。
「名は出さなくてよいです」
私は先に言いました。
「ただ、その言葉があなたのためか、その人の楽しみのためか、考えなさい」
兼頼は答えません。私は続けました。
「あなたが強く出て失敗した時、その人は責任を取りますか」
「……」
「年長の公卿たちに睨まれた時、間に立ちますか」
「……」
「今の役を失った時、次の居場所を用意しますか」
「……」
「あなたが孤立した時、一緒に頭を下げますか」
長い沈黙。兼頼の声が、少し低くなりました。
「おそらく……」
「しないでしょう」
私は言いました。
「煽る者は、あなたの人生を背負いません」
その一言で、御簾の向こうの空気が変わりました。兼頼の肩から、何かが落ちたようでした。
「ですが、私はこのままでよいのでしょうか」
その声には、先ほどまでの浮つきがありませんでした。代わりに、焦りと不安がありました。
「よくありません」
私は答えました。
「だから、正しい順番で動きなさい」
「順番」
「はい。まず、今の仕事の穴をなくす。次に、誰か一人、年長者から仕事ぶりを認めてもらう。三つ目に、小さな改善を一つ成し遂げる。四つ目に、その結果を自分で吹聴せず、周囲から言ってもらう。五つ目に、役を望むなら、なぜ自分が必要かを具体的に説明する」
兼頼は黙って聞いていました。
「出世とは、上に押し上げてもらうだけではありません。下から足場を積むものです」
紫式部が、几帳の陰で筆を動かす音がしました。何か拾われましたね。
「足場のない高みに上がれば、落ちます」
若菜が香炉の灰を見ながら呟きました。
「灰も、下が整わねば香木を支えられません」
「その通り」
私はうなずきました。
「それから、もう一つ」
兼頼が身を固くします。
「あなたを煽った女房に、礼を言って距離を置きなさい。責めると角が立つ。従うと燃える。だから、『お言葉はありがたく、まず今の役を全うします』と返す」
「それでよろしいのでしょうか」
「よろしいです」
赤染衛門が補足しました。
「相手に攻め口を与えません。勧めを無視したのではなく、受け止めたうえで時期を置く形になります」
兼頼は深く頭を下げました。
「……承知いたしました」
声はまだ弱い。けれど、先ほどより地に足がついています。
よい兆候です。
兼頼が去った後、藤壺には少し重い沈黙が残りました。
常盤が、小さく言いました。
「燃えずに済みましたね」
「まだ分かりません」
赤染衛門が厳しく言います。
「火種は残っています」
「では、火鉢女房をどうします?」
「その呼び名を定着させない」
私は言いました。
「孤立するかどうかは、本人の選択です」
しかし、結果は早く出ました。兼頼は、その女房からの誘いに乗らなくなりました。最初はやんわりと。
「まずは今の役を整えます」
「ありがたいお言葉ですが、時期を見ます」
「年長の方々に学ぶことが多く」
そう返し続けたそうです。すると、その女房は苛立ち始めました。
「臆病になったのですね」
「せっかくの器を自分で狭めるとは」
「あなたを買っていたのに」
典型的です。煽る人は、相手が乗らないと、今度は相手を侮ります。つまり、最初から相手の成長を願っていたのではなく、自分の筋書き通りに動かしたかっただけなのです。
その様子を見て、周囲の女房たちも少しずつ距離を置くようになりました。
「人を持ち上げては焚きつける」
「失敗すれば知らぬ顔をする」
「近くにいると巻き込まれる」
そう思われ始めたのです。一度そうなると、宮中は早い。彼女の周りから、少しずつ人が減りました。孤立は、突然ではありません。
昨日まで笑っていた人が、今日は忙しいと言う。昨日まで話を聞いてくれた人が、今日は目を合わせない。昨日まで集まっていた噂が、別の場所へ流れる。そうやって、場から熱が引いていきます。
煽った女房は、火が消えた後の冷えた灰のような顔をしていました。私は、少しだけ複雑な気持ちになりました。彼女もまた、認められたかったのかもしれません。
自分では上がれないから、他人を動かして、自分の力を確かめたかったのかもしれない。誰かを出世させた女。誰かの野心を育てた女。陰から場を動かす女。そう見られたかったのかもしれません。
けれど、他人の人生を駒にして、自分の存在感を満たそうとすれば、最後には誰も近づかなくなります。野心の毒は、飲ませた相手だけでなく、器を持つ手にも染みるのです。
その日の夕刻、赤染衛門は文台を整えました。
「心得をまとめますか」
「まとめましょう」
春枝が紙を選びます。
「野心の心得なら、赤い紙でしょうか」
「燃えすぎるから却下」
「では、薄い灰色で」
「採用」
若菜が少し嬉しそうにしました。灰色は彼女の領域です。赤染衛門が題を書きます。
――野心の心得。
一、上を望むこと自体を恥じぬこと。
一、実績なき昇進工作は、敵を増やすと心得ること。
一、煽る者が責任を取るか、必ず考えること。
一、強い言葉で急かす者ほど、距離を置いて見ること。
一、出世は足場を積んでから望むこと。
一、人の野心を利用して、自分の力を示そうとせぬこと。
一、火をつけるなら、燃え跡まで見る覚悟を持つこと。
有子が清書しながら、最後の一文で筆を止めました。
「燃え跡まで見る覚悟……」
「ええ」
私は言いました。
「その覚悟がないなら、煽ってはいけません」
菅原の君が少し考え込みました。
「驪姫は、夫を愛していたのでしょうか」
難しい問いです。
「愛もあったかもしれません。夫への情や、我が子への盲目的な愛。夫の身を案じる気持ちと、自分の子を世継ぎにして自らが高みに立ちたいという野心が、混ざっていたのかもしれません」
「混ざると、怖いですね」
「ええ」
私はうなずきました。
「人の心は、綺麗に分けられません。だからこそ、行動に責任が必要です」
小少将が静かに言いました。
「相手のためと言いながら、自分の望みを着せていることもありますね」
「あります」
「衣なら、相手に合わぬものを無理に着せれば、すぐ分かりますのに」
「野心の衣は、見えにくいのね」
「はい」
小少将は少し目を伏せました。
「しかも、着せられた本人が、似合っていると思い込むこともございます」
まったく、その通りです。野心の恐ろしさは、本人が燃えている時、それを自分の意思だと思いやすいことです。
もちろん、自分の意思で上を望むならいい。けれど、誰かに煽られた焦りを、自分の志だと勘違いすると危ない。
「兼頼殿は、これからどうなるでしょう」
若菜が尋ねました。
「分かりません」
私は正直に答えました。
「でも、少なくとも今すぐ敵を増やす道は避けました」
「それだけでも、灰は乱れませんね」
「そうね」
若菜は静かに香炉の灰を整えました。薄い香が立ち上ります。燃えすぎず、消えもせず。ちょうどよい火。
野心も、本来はこうあるべきなのかもしれません。自分を温め、人を照らし、仕事を進める火。誰かを焼き尽くす炎ではなく。
その後、兼頼は少し変わりました。文の取り次ぎを丁寧に確認するようになり、約束の時刻に遅れなくなり、年長の公卿へ素直に教えを請うようになったそうです。
もちろん、すぐ出世したわけではありません。そんなに都合よく物事は進みません。けれど、周囲の見る目は少しずつ変わりました。
「あの者、最近落ち着いたな」
「仕事が確かになった」
「以前より任せやすい」
そういう言葉が出始めたのです。出世の足場とは、そういう小さな信頼の積み重ねです。派手な策謀より、ずっと地味。けれど、崩れにくい。
一方、煽った女房は、しばらく別の誰かを探していたようですが、以前ほど人は寄らなくなりました。
「近づくと利用される」
その評価は、宮中では重い。美しい衣や上手い言葉では、すぐには覆せません。孤立は、彼女への罰というより、場が自分を守るための反応でした。
その日の夜。藤壺の文箱に「野心の心得」が納められました。薄い灰色の紙。派手ではありません。けれど、火のそばに置くにはちょうどよい色です。
常盤が、少し残念そうに言いました。
「策謀が未然に止まると、噂としては地味ですね」
「地味でいいの」
私は言いました。
「事件は、起きない方がいい」
「物語としては?」
菅原の君が小さく尋ねました。
「物語も、たまには未然防止でいいのです」
「未然防止の物語……」
菅原の君は難しい顔をしました。
「盛り上がりどころが」
「燃え上がらなかったことが盛り上がりです」
「難しゅうございます」
それはそうです。でも、現実とはそういうものです。炎上しなかった会議。破談にならなかった恋。広がらなかった噂。孤立する前に救われた人。道を誤る前に止まった野心。
それらは、物語になりにくい。けれど、人を守ります。
晋の国の驪姫は、夫の野心と疑いに火をつけました。その火は一時、彼女の思い通りに宮廷を動かしたかもしれません。
けれど、すぐに血を照らし、疑いを照らし、眠れぬ夜を照らし、最後には彼女自身の命ごとすべてを焼きました。他人を煽る者は、自分だけ安全な場所に立てると思いがちです。けれど、火の粉は必ず戻ってきます。
言葉には責任があります。「あなたならできる」と言うなら、失敗した時も支える覚悟がいる。「今動くべき」と言うなら、その結果を一緒に背負う覚悟がいる。「上へ行け」と言うなら、足場を作る手伝いをする覚悟がいる。
それがないなら、その言葉は応援ではありません。ただの煽りです。そして煽りは、野心を毒に変えます。
私は、火鉢の炭を見ました。小さく赤く、静かに燃えています。このくらいでいい。人を温める程度に。袖を焼かぬ程度に。
藤壺の灯は、その夜も穏やかに揺れていました。野心の火を消すのではなく、火鉢の中へ戻すように。
そして私は心の中で、あの古の妃へそっと呟きました。
他人の野心を煽るなら、燃え跡まで見なさい。
それができないなら、最初から火をつけてはいけません。
〜 出典 〜
『史記』晋世家
驪姫泣曰、太子何忍也。其父而欲弑之、況他人乎。且君老、旦暮之人、曾不能待而欲弑之。
(訳文)驪姫は泣いて言いました。「太子はなんと残酷なのでしょう。実の父すら殺そうとするのですから、他人は言うまでもありません。それに君(夫)は老い先短い身であるのに、その寿命すら待てずに殺そうとしているのです」
〜 舞台背景 〜
驪姫(りき、? - 紀元前651年)は、晋の献公の寵姫。麗姫とも表記される。異民族の驪戎の娘であったが、献公が見初めて驪姫の妹の少姫と共に後宮入りして寵愛された。晋に連れて来られた当初は自らの境遇を嘆いていたが、献公の寵姫としての贅沢な暮らしに慣れてしまうと、かつて自分が悲しんだことを後悔したという。献公との間に生まれた自分の息子の奚斉を太子として立てようとして献公を操り、驪姫以外との女性の間に生まれた申生ら他の公子達を策略を使い次々と抹殺していった。この際、のちに晋を継ぐ重耳と夷吾の兄弟が晋から逃亡することになった。これは驪姫の乱と呼ばれ、政治的混乱を引き起こし、このため晋の国力は一時期大いに低下した。献公が没して一カ月後、献公の部下の里克が反乱を起こし、驪姫は奚斉や驪姫の妹一族共々殺害された。毛嬙と並び、春秋戦国時代を代表する美人と評される説がある。成玄英からは「毛嬙、越王嬖妾、麗姫、晋国之寵嬪、此二人者、姝妍冠世」と紹介される。『荘子』「毛嬙・麗姫、人之所美也、魚見之深入、鳥見之高飛」による。人間の目には美人に見えるものも、魚や鳥はこれを見て恐れて逃げるの意を、後世、魚や雁も恥じらって姿をかくす意に転用して、すぐれてあでやかな美人の形容である。出典:wikipedia




