六十六 ムーラン、男装ではなく能力配置
武芸に詳しい女房が「女らしくない」と笑われる。彰子は木蘭の伝承を語り、能力に性別の札を貼る愚かさを示す。彼女を警備・移動・緊急対応の助言役に置くと、夜の騒動で大活躍。雅な女房社会に“実戦知”が加わる。定子方は「粗野」と言うが、彰子は「非常時に役立たない雅は飾りです」と返す。
「女らしくない」という言葉は、便利な檻です。
前世でも、何度も聞きました。声が大きいと、女らしくない。理屈を言うと、女らしくない。怒ると、女らしくない。体を鍛えると、女らしくない。機械に強いと、女らしくない。危機対応ができると、女らしくない。
逆に、男が同じことをすれば、頼もしい。論理的。決断力がある。行動力がある。現場を分かっている。
となる。便利です。誰にとって便利かと言えば、能力を見たくない人にとってです。
相手が持っている力を正面から認めたくない時、人は性別の札を貼ります。
「女らしくない」
「可愛げがない」
「雅ではない」
そう言えば、その能力を評価しなくて済む。でも、能力は能力です。
香を扱えるなら、性別に関係なく香の才です。紙を選べるなら、紙の才です。記録できるなら、記録の才です。人の不調に気づけるなら、観察の才です。そして、危険を察し、動線を読み、身を守る術を知っているなら、それも立派な才なのです。
たとえそれが、宮中で「女らしい」とは呼ばれにくい力であっても。
藤壺に、その力を持つ女房がいました。名を、榊の君といいました。
彼女は少し変わっていた。衣の着こなしは乱れていません。言葉遣いも乱暴ではない。歌も最低限は詠める。香も、まったく分からないわけではない。ただ、興味の向く先が少し違いました。
宴の席で、彼女が見るのは歌の出来だけではない。誰がどの戸口から入ったか。灯が倒れた時、どこが一番危ないか。女房たちが退出する時、どの渡殿が暗いか。大きな几帳を動かす時、足元に何があるか。騒ぎが起きた時、帝や中宮をどこへ下がらせるべきか。そういうことを、自然に見ていました。
しかも、武芸にも詳しかった。実家に兄や従兄が多く、幼い頃から弓や馬、刀の扱いを耳で聞き、目で見て育ったらしい。本人が武者として戦うわけではない。でも、体の動かし方、危ない間合い、夜道の歩き方、人を押しのけずに避難させる手順などに詳しい。
前世で言えば、防災担当と警備動線担当と現場安全担当が一人にまとまったような人です。非常に貴重です。でも、宮中では評価されにくい。なぜなら、雅ではないから。
いえ、私は雅だと思います。人を守れることほど雅なことはありません。でも、一般的な宮中評価では、女房が武芸や警備に詳しいと、少し浮きます。そして、浮く人は笑われます。
事件は、ある日の小さな宴の準備中に起きました。榊の君は、澄子と一緒に灯の位置を確認していました。
「この灯は、少し几帳に近うございます」
榊の君が言う。
「風が入った時に揺れれば、布に火が移るかもしれません」
澄子はすぐに頷いた。
「確かに。少し離しましょう」
その横で、別の女房が笑った。名を、薄紅の君という。華やかで、歌も上手く、定子方にも顔が利く女房だった。
「まあ、榊の君は本当に物々しいこと」
薄紅の君は扇で口元を隠した。
「灯の位置まで、まるで武者の陣でも見るようですわね」
何人かが笑った。榊の君は、少し黙った。薄紅の君は続ける。
「この藤壺は、香や物語で名高い御殿かと思えば、近頃は警固のようなことまで女房が口にするのですね」
常盤の目が細くなる。真葛の君の棍棒が半分出る。朝顔の君が前に出ようとして、担当表を思い出して止まる。
薄墨の君が榊の君の表情を見る。有子が記録帳を開くか迷う。春枝は紙箱を抱える。若菜は香炉の灰をならす手を止めた。
紫式部は、少し離れて筆を止める。赤染衛門は静かにこちらを見た。そして薄紅の君は、最後に言った。
「女房なら、もう少し女らしい才を磨かれては?」
出た。
女らしくないマウント。
榊の君の顔が、わずかに硬くなる。怒ったのではない。慣れている顔だ。何度も言われてきたのだろう。
「女らしくない」
「物々しい」
「粗野」
「武者のよう」
「雅ではない」
そういう言葉を。私は扇を手に取った。
ぱちり。
藤壺が静まる。
「薄紅の君」
「はい」
彼女は、少しだけ笑みを残してこちらを見る。
「灯が倒れて几帳に火が移った時、歌で消せますか」
薄紅の君の笑みが止まった。藤壺の空気も止まった。赤染衛門が、そっと目を閉じた。やや強かったかもしれない。でも、今日は最初から少し強く行く。
「香で火は消えません。紙で火を受ければ燃えます。物語は人を慰めますが、倒れた灯を立て直すには手が要ります」
薄紅の君は黙った。
「非常時に役立たない雅は飾りです」
その瞬間、空気がさらに冷えた。赤染衛門の筆が止まった。菅原の君が息を呑む。春枝が紙箱を強く抱える。若菜が小さく頷く。澄子の目が、珍しく強くなる。
常盤は「これは外に出る」と顔に書いている。真葛の君は、今の言葉を棍棒ではなく旗として掲げたそうな顔をしている。
赤染衛門が、ゆっくり目を開けた。
「姫様」
「はい」
「そのまま残すには、少々刃が強うございます」
「分かっています」
「ですが、趣旨は残します」
「お願いします」
赤染衛門は筆を取り、雅に整えた。
――いざという折に人を守れぬ趣は、ただ目を慰むる飾りに過ぎず。
「雅です」
「内容は強いです」
「それでいいです」
薄紅の君は、完全に言葉を失っていた。私は榊の君へ向き直る。
「榊の君。木蘭を知っていますか」
榊の君が顔を上げる。
「もくらん、でございますか」
「はい。唐土の古い歌に語られる女性です」
赤染衛門が筆を構える。
「姫様」
「はい」
「覚ですね」
「覚です」
「題は」
「ムーラン、男装ではなく能力配置」
「……むうらん?」
「木蘭です」
「では雅に」
赤染衛門は少し考えた。
「『性により才を狭めぬ覚』でいかがでしょう」
「採用します」
菅原の君が身を乗り出した。
「木蘭様とは、どのような方なのですか」
「父に代わって戦へ行った女性です」
藤壺がざわめく。榊の君の目が、少し開いた。
「男の装いをして、長く軍に身を置きました。戦で功を立て、帰ってから女であることが知られたと伝えられています」
薄紅の君が、少し皮肉を取り戻したように言った。
「では、やはり男のような女の話ではございませんか」
「違います」
私は即答した。
「男装が本質ではありません」
薄紅の君が黙る。
「本質は、能力に性別の札を貼る愚かさです」
赤染衛門の筆が走る。
「木蘭は、女だから戦えないと見なされる世界で、必要な能力を発揮しました。つまり、問題は彼女が女だったことではありません。周囲が、能力を見る前に性別で役割を決めていたことです」
榊の君は、じっと聞いている。
「榊の君の知恵も同じです」
私は言った。
「警備、移動、緊急対応、灯の危険、夜道の動線。これらは、女らしくない才ではありません」
私は少し声を強めた。
「藤壺を守る才です」
榊の君の顔が揺れた。今まで笑われてきたものに、名前がつく。それは、本人の背筋を変える。若菜が小さく言った。
「香も、火を使います。榊の君がいてくだされば、安心して準備できます」
澄子が続ける。
「灯の位置は、私だけでは気づかない危険があります。助かります」
春枝も紙箱を抱えながら言った。
「紙は燃えます。とても燃えます。榊の君に見ていただけると助かります」
「春枝、紙への愛が危機感になっていますね」
「紙は守らねばなりません」
「はい」
有子が記録帳を開いた。
「緊急時の役割を明確にする必要があります」
常盤が頷く。
「夜の移動経路も、噂だけでなく安全面で見直した方がよろしいかと」
小少将が言う。
「几帳の配置も、見た目だけではなく、避難の通り道を塞がぬようにしなければ」
朝顔の君も真剣な顔になる。
「宴で場が騒いだ時、私は明るくつなぐ役ですが、本当に危ない時はどう動くか決めておくべきですね」
真葛の君が言った。
「つまり、雅の裏に安全手順を置く」
「その通りです」
私は頷いた。
「榊の君を、警備・移動・緊急対応の助言役に置きます」
榊の君は、驚いた。
「私が、そのような役を」
「はい」
「ですが、私は武者ではありません」
「武者でなくてよいです」
私は言った。
「女房として、女房たちの動きと御殿のしつらえを分かっている人が必要です。外の警固の者に任せきりでは、御殿内の細かな危険は見えません」
赤染衛門が頷く。
「内側の安全を知る者、でございますね」
「はい」
榊の君は、ゆっくり頭を下げた。
「承ります」
その声は、硬かった。緊張している。でも、どこか嬉しそうでもあった。
薄紅の君は、少し居心地悪そうにしていた。私は彼女を責め続けない。ただし、逃がしもしない。
「薄紅の君」
「はい」
「あなたが雅を重んじることは、悪くありません」
「……はい」
「ですが、雅は安全の上に立つものです。誰かが転び、火が移り、女房が夜道で怖い思いをしている場で、どれほど美しい歌を詠んでも、それは雅ではありません」
薄紅の君は、深く頭を下げた。
「心得違いでございました」
よし。
ここまでで十分だ。その日から、藤壺に新しい覚が増えた。
――性により才を狭めぬ覚。
中身は、かなり実務的でした。
一つ、能力を「女らしい」「男らしい」で評価しない。
二つ、警備・移動・緊急対応も御殿運営の一部とする。
三つ、灯・香・紙・几帳の配置は、安全の視点で確認する。
四つ、夜の移動は一人にせず、経路を決める。
五つ、騒ぎが起きた時の退避先と合図を決める。
六つ、外の警固に任せきらず、女房内にも助言役を置く。
七つ、非常時に人を守れぬ雅は、飾りにすぎない。
最後の一行は、赤染衛門が少し柔らかく整えた。
――人を守る備えあってこそ、趣はまことの趣となる。
美しい。
でも、内容は防災マニュアルです。藤壺、ますます文書化が進んでいる。でも必要です。
榊の君の仕事は、すぐ始まった。まず、灯の位置確認。澄子と一緒に、宴の際に火が移りやすい場所を見て回る。几帳との距離。紙箱との距離。風の通り道。人が袖を引っかけやすい位置。澄子は感心していた。
「私は灯の美しさや明るさばかり見ていました」
「それも大切です」
榊の君は言った。
「ただ、火は美しくても火です」
「確かに」
次に、夜の移動経路。常盤と薄墨の君も加わった。どの渡殿が暗いか。どこで殿方とすれ違いやすいか。どこに人目があるか。どの部屋にすぐ退避できるか。
撫子の君も、少しずつ意見を出せるようになった。
「この角は、急に人が出ると怖いです」
榊の君は頷いた。
「では、ここは二人以上で通ることにしましょう」
朝顔の君は、宴で騒ぎが起きた時の声かけを練習した。
「皆さま、こちらへ」
「それでは柔らかすぎます」
榊の君が言う。
「危ない時は、はっきり」
「では、『こちらへお下がりください』」
「よいです。声は低めに」
朝顔の君は、少し驚いた。
「明るい声ではなく?」
「非常時に明るすぎる声は、危険が伝わりません」
「なるほど」
花橘の君は、儀礼の立ち位置を見直した。
「美しく見える位置が、退避経路を塞いでいることがありますね」
「はい」
「美しさと安全は、両立させねば」
「できます」
榊の君は淡々と答える。その表情は、以前より少し落ち着いていた。自分の知識が、笑われるものではなく、使われるものになったからです。真葛の君は、緊急時の指示文を確認した。
「この言い方は、少し命令が強すぎますか」
榊の君は首を振る。
「危険な時は、曖昧な方が危ないです」
「では、礼を失わず、しかし明確に」
「はい」
赤染衛門が整える。
――恐れ入ります、直ちにこちらへお移りください。
「直ちに、が強いですね」
「必要です」
「では採用」
こうして、雅な藤壺に、実戦知が加わった。そして、その力が実際に必要になる夜が来た。
その日は、少し大きめの宴だった。帝はお見えにならなかったが、公卿や女房、男房の出入りが多い。
定子方の者も数名いた。香は若菜。灯は澄子。紙は春枝。語りは菅原の君。進行は赤染衛門。補佐は朝顔の君。安全確認は榊の君。
宴は順調でした。ところが、夜が更けた頃、外で騒ぎが起きた。
どこかの若い蔵人が酒に酔い、渡殿で足を滑らせたらしい。倒れた拍子に灯台へぶつかり、火が揺れた。近くにあった薄い布へ火の粉が飛び、煙が上がった。
大きな火ではありません。でも、夜の御殿で煙が上がれば、人は慌てる。
「火が」
誰かが叫んだ。場が乱れかけた。その瞬間、榊の君が動いた。
「灯を離して!」
声が低く、はっきりしていた。澄子が即座に反応し、近くの灯を下げる。春枝が紙箱を抱えて退ける。若菜が香炉を倒れにくい位置へ移す。
小少将が几帳をたたみ、通り道を開ける。朝顔の君が、明るすぎない声で言った。
「皆さま、こちらへお下がりください。足元にお気をつけて」
花橘の君が来客を落ち着かせる位置に立つ。常盤が外の騒ぎを見に走る。薄墨の君が、怖がって固まった若い女房の手を取る。
有子は記録帳を守りつつ、人数を数える。真葛の君が、来客に向けてはっきり言う。
「そこを塞がないでください。退避の妨げです」
棍棒ではない。盾である。榊の君は、煙の出た布を素早く外させ、濡れた布をかぶせるよう指示した。
水を大量にかければ、周囲の紙や床が傷む。火の大きさを見て、最小限で止める。
見事でした。
騒ぎは、すぐ収まりました。怪我人は、足を滑らせた蔵人が少し擦りむいた程度。火も広がらず、紙も香も無事。女房たちも、大きく取り乱さなかった。
宴の場には、一瞬の沈黙があった。そして、源中納言が低く言った。
「藤壺は、備えがよい」
有子の筆が走った。これは大きい。歌で褒められるより地味だが、非常に大きい。
榊の君は、深く頭を下げた。その顔は少し青かった。怖くなかったわけではないのだ。でも、動けた。動ける知識があった。
宴の後、藤壺では全員が榊の君を見た。若菜が言う。
「香炉を倒さずに済みました」
春枝は紙箱を抱えて涙目だった。
「紙が助かりました」
澄子は静かに頭を下げた。
「灯の位置を見直していたから、広がらずに済みました」
朝顔の君も言った。
「声の出し方を教わっていてよかったです」
真葛の君が、真面目に言った。
「非常時の言葉は、曖昧ではいけないと分かりました」
薄墨の君は、怖がっていた女房が落ち着いたことを伝えた。
常盤は外の反応を持ってきた。
「定子方の女房も驚いていました。『藤壺は火事にも歌合のように備えている』と」
「それは褒めていますか」
「半分は皮肉ですが、半分は恐れです」
「ならよし」
しかし、定子方の正式な皮肉も当然届いた。
「藤壺では、女房がまるで武者のように声を張るとか」
「雅な宴に、粗野なこと」
「火の粉程度で大げさですわ」
「女房はもっとたおやかであるべきでは」
常盤が報告した。榊の君は、少しだけ顔を伏せた。
私は言った。
「榊の君」
「はい」
「火の粉程度、で済んだのは、あなたが動いたからです」
榊の君が顔を上げる。
「広がってから雅に嘆くより、広がる前に消す方がずっとよい」
赤染衛門が筆を取る。
「姫様、そのままでもよろしいかと」
「採用ですか」
「採用です」
私は続けた。
「粗野と言いたい者には言わせなさい。非常時に役立たない雅は飾りです」
今度は、誰も笑わなかった。その言葉は、藤壺の中で静かに受け止められた。毒舌ではある。でも、今回は守るための刃です。榊の君は、深く頭を下げた。
「私は、女らしくないと言われることが怖かったのだと思います」
「当然です」
「でも、今夜、怖がっている女房を下がらせることができました」
「はい」
「それなら、この才を恥じなくてよいのですね」
「もちろんです」
私は微笑んだ。
「木蘭は、男になりたかったのではなく、必要な力を使ったのだと思います」
榊の君は、静かに頷いた。
「私も、女房のまま、この力を使います」
「それでよいです」
藤壺の棚に、また一枚、覚が加わった。
――性により才を狭めぬ覚。
この覚は、翌日さらに追記された。
火気確認表。夜間移動経路。退避先。合図の言葉。若い女房の付き添い。来客の導線。紙箱と香炉の退避順。非常時の記録担当。騒動後の心のケア。
どんどん増える。
藤壺は、もはや文化サロンであり、危機管理本部でもある。
……言わない。
赤染衛門に見つかる。でも、私は少し誇らしかった。雅は、弱くてよいわけではない。美しいだけで人を守れないなら、それは不完全だ。
美しい場を続けるには、支える知識がいる。灯を安全に置く手。紙を退ける判断。怖がる人を誘導する声。危険を見て、すぐ動く足。それらは、歌にはなりにくい。けれど、歌を詠む場を守っている。
私は扇を手に取った。
ぱちり。
女房たちが姿勢を正す。
「能力に、性別の札を貼ってはいけません」
赤染衛門が筆を構える。
「武芸を知ること、危険を読むこと、緊急時に動けること。それは女らしくない才ではなく、御殿を守る才です」
榊の君が静かに頭を下げる。
「人を守る備えがあってこそ、雅は続きます」
赤染衛門が、最後の一行を書いた。
――人を守る備えあってこそ、趣はまことの趣となる。
木蘭は、父に代わり戦へ行った。その物語は、男装の奇抜さだけで語るには惜しい。能力を、必要な場所に置くこと。性別で役割を狭めないこと。隠れていた実戦知が、人を救うこと。藤壺は、それを学びました。
香の御殿に、火を恐れぬ知恵が加わった。物語の御殿に、夜道を読む目が加わった。雅な女房社会に、実戦知が加わった。
定子方がそれを粗野と呼ぶなら、呼べばよい。
非常時に役立たない雅は飾りです。
そして藤壺の雅は、飾りで終わるつもりはありません。
〜 出典 〜
中国叙事詩『木蘭辞』
喞喞復喞喞、木蘭當戸織。
不聞機杼聲、惟聞女歎息。
問女何所思、問女何所憶。
女亦無所思、女亦無所憶。
昨夜見軍帖、可汗大點兵。
軍書十二卷、卷卷有爺名。
阿爺無大兒、木蘭無長兄。
願爲市鞍馬、從此替爺征。
東市買駿馬、西市買鞍。
南市買轡頭、北市買長鞭。
旦辭爺孃去、暮宿黄河邊。
不聞爺孃喚女聲、但聞黄河流水鳴濺濺。
旦辭黄河去、暮至黑山頭。
不聞爺孃喚女聲、但聞燕山胡騎鳴啾啾。
萬里赴戎機、關山度若飛。
朔氣傳金柝、寒光照鐵衣。
將軍百戰死、壯士十年歸。
歸來見天子、天子坐明堂。
策勲十二轉、賞賜百千彊。
可汗問所欲、木蘭不用尚書郞。
願馳千里足、送兒還故郷。
爺孃聞女來、出郭相扶將。
阿聞妹來、當戸理紅妝。
小弟聞姉來、磨刀霍霍向豬羊。
開我東閣門、坐我西閣床。
脱我戰時袍、著我舊時裳。
當窗理雲鬢、對鏡貼花黄。
出門看火伴、火伴始驚惶。
同行十二年、不知木蘭是女郞。
雄兎脚撲朔、雌兎眼迷離。
兩兎傍地走、安能辨我是雄雌。
(概要)この詩は、老いた父の代わりに男装して過酷な戦地へ赴いた勇敢な少女・木蘭の物語を描いています。十数年にも及ぶ厳しい戦いを生き抜いて大きな手柄を立てた彼女ですが、天子からの高い地位や褒美を辞退し、ただ愛する家族の待つ故郷へ帰ることを望みます。家族への深い愛情(親孝行)や飾り気のない郷愁、そして勇敢さと優しさを併せ持つ女性の力強さがテーマとなっています。
〜 舞台背景 〜
木蘭(もくらん、繁体字: 木蘭; 簡体字: 木兰; 拼音: Mùlán; ウェード式: Mu-lan、ムーラン)は、中国における伝承文芸・歌謡文芸で語られた物語上の女性主人公。木蘭の姓は「花」「朱」「木」「魏」など一定していないが、京劇では「花木蘭」とされる。木蘭は中国古代伝説の四大女性英雄の一人であり、最も早く南北朝時代の叙事詩『木蘭詩』に登場し、後に民間で広く伝承された。何千年もの間、花木蘭はすでに中華女性の傑出した代表と民族精神の体現者となり、その代表する家国への思いを核心とする忠孝節義、勇武仁愛の精神は、代々の中華児女を励ましてきた。木蘭文化は倫理、民俗、宗教、文学、芸術など多方面の内容を含み、貴重な歴史研究価値を持っている。木蘭の感動的な事跡を描写し称える詩歌、紀行文、散文などの作品が広く伝わり、木蘭の物語を上演したことのある劇種には京劇、豫劇、越劇、崑曲、秦腔、黄梅劇など20種類以上がある。木蘭の物語は日本、韓国、朝鮮で早くから伝承され、さらにさまざまな芸術形式を通じて欧米諸国にも伝播している。出典:wikipedia




