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転生皇后 藤原彰子 〜 欠けることのない望月の世は私が創る 〜  作者: 条文小説


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五十一 荘子、価値観をひっくり返す

挿絵(By みてみん)


 地味で不器用な女房が「役に立たない」と馬鹿にされる。彰子は『荘子』の“無用の用”を語り、人を即戦力だけで測る愚かさを示す。彼女は静かに人の話を聞く才能があり、揉め事の初期察知役として重宝される。役立たず扱いされた女房が、宮廷のセンサーになる。

 「役に立たない」と言われる人ほど、別の場所では役に立つことがあります。


 前世で会社員をしていた頃、私はそれを何度も見ました。会議で発言しない人。資料作りが遅い人。プレゼンが苦手な人。営業成績が目立たない人。手を挙げるのが遅い人。そういう人は、すぐ「使えない」と言われます。


 ひどい言葉です。でも、組織にはそういう雑な評価が平気で飛びます。


「即戦力ではない」


「もっと前に出てほしい」


「何を考えているか分からない」


「いてもいなくても同じ」


「もう少し役に立ってくれないと」


 そう言われた人の中に、実は大事なものを持っている人がいます。誰よりも人の表情を見ている人。場の空気が悪くなる前に気づく人。皆が言えない小さな不満を拾っている人。大きな成果は出さないが、事故の芽を見つける人。誰かが疲れている時、そっと水を置ける人。


 そういう力は、数字になりにくい。だから、評価されにくい。でも、なくなると組織がじわじわ壊れます。前世の私は、それを何度も後から知りました。


「あの人が辞めてから、なぜか部署の空気が悪い」


「あの人がいた時は、揉め事になる前に誰かが止めてくれていた」


「あの人、実は皆の愚痴を聞いてくれていたらしい」


 失ってから気づく価値。厄介です。


 そして、ここは平安宮中。女房にも、分かりやすい才と分かりにくい才があります。歌がうまい。字が美しい。香を調合できる。場を華やかにできる。機知で笑わせられる。物語を語れる。記録が正確。進行が上手い。こういう才は見えやすい。


 でも、静かに聞く。相手の言葉にならない不安を拾う。誰と誰の間に少し溝ができているか気づく。宴の前に、女房の表情が曇っていることを見つける。揉め事が燃え上がる前に、煙の匂いを嗅ぐ。これは見えにくい。でも、非常に重要です。


 藤壺には、そういう女房がいました。名を、薄墨の君といいます。地味な人だった。衣の色も控えめ。声も小さい。歌を詠ませると、悪くはないが目立たない。紙を運ぶと、少し手間取る。香の配合を覚えるのも遅い。宴の場に出すと、緊張して言葉が詰まる。


 悪い人ではない。むしろ、良い人です。ただ、不器用でした。藤壺の女房たちが、それぞれ役割を得ていく中で、薄墨の君だけが少し取り残されていました。


 若菜は香。澄子は灯。春枝は紙。有子は記録。小少将は几帳と色。菅原の君は語り。常盤は噂と外の流れ。花橘の君は儀礼演出。真葛の君は批評と言葉の整え。朝顔の君は進行補佐。


 皆、何かしらの「役」があります。でも、薄墨の君には、それがないように見えました。本人も、それを気にしていた。そして、人は、気にしているところを刺されると一番痛い。


 事件は、小さな準備の場で起きました。ある宴の前、藤壺では女房たちがそれぞれの担当を整えていた。


 春枝は題札の紙を選ぶ。若菜は香を控えめに調整する。澄子は灯の芯を見る。小少将は几帳の色を合わせる。有子は進行表を確認する。


 菅原の君は語り札を握りしめ、真葛の君に構成を見てもらっている。朝顔の君は、誰の見せ場かを確認している。常盤は外の動きを探っている。赤染衛門は全体を見ている。紫式部は少し離れて筆を動かしている。


 薄墨の君は、紙箱を運ぼうとしていました。その時、手元が滑った。箱は落ちませんでした。春枝がすばやく支えたからです。ただ、中の紙が少し乱れた。ほんの少しです。


 しかし、そこにいた別の女房――名を藤袴の君という――が、ため息まじりに言った。


「薄墨の君は、何をなさっても危なっかしいですわね」


 空気が少し止まる。


 藤袴の君は続けた。


「歌も目立たず、香も覚えられず、紙も運べない。藤壺は皆さま役目をお持ちなのに……」


 言葉を切った。でも、続きは全員分かった。


 役に立たない。


 薄墨の君の顔が、みるみる白くなる。春枝が慌てて言った。


「紙は無事です。大丈夫です」


 若菜も小さく言う。


「誰でも手が滑ることはあります」


 でも、藤袴の君は軽く笑った。


「優しいこと。けれど、忙しい御殿でございますもの。即戦力でない方まで抱えるのは、大変ではありませんか」


 即戦力。


 出た。


 前世で聞きすぎた言葉だ。私は扇を握った。


 まだ鳴らさない。


 薄墨の君は、深く頭を下げた。


「申し訳ございません」


 その声は小さかった。消えそうだった。


 藤袴の君は、悪意だけで言ったわけではないのかもしれない。藤壺の運営が高度化し、各人の役割が明確になる中で、「役に立つかどうか」を強く見る空気が生まれていたのも事実です。


 これは危険だ。


 仕組みが整うと、人を役割に押し込み始めます。役割に名前がある人を評価し、名前がない人を軽く見る。藤壺が、私の嫌いな組織になりかけている。それは止める。


 私は扇を鳴らした。


 ぱちり。


 藤壺が静まる。


「藤袴の君」


「はい」


 彼女は少し驚いたようにこちらを見た。


「薄墨の君が役に立たない、と?」


「そこまでは申しておりません」


「言葉にしなかっただけですね」


 藤袴の君の顔が固まる。赤染衛門が静かに筆を構えた。


「姫様」


「はい」


「覚になりますね」


「なります」


「題は」


「荘子、価値観をひっくり返す」


「……雅に直します」


「お願いします」


 赤染衛門は少し考えた。


「『人の役目を一つの物差しで測らぬ覚』でいかがでしょう」


「採用します」


 藤袴の君は、少し戸惑っている。


「荘子、でございますか」


「はい。唐土の思想家です」


 私は言った。


「荘子には、“無用の用”という考えがあります」


 菅原の君が小さく反応する。


「無用の用……役に立たないものの、役に立つところ、でございますか」


「そうです」


 私は頷いた。


「たとえば、大きすぎて材木に向かない木がある。曲がっていて、器にも柱にもならない。人はそれを役に立たぬ木だと言う。でも、役に立たないからこそ切られず、大きな日陰を作り、人を休ませることができる」


 藤壺の女房たちが静かに聞いています。


「すぐ道具になるものだけが、価値ではありません」


 私は藤袴の君を見る。


「即戦力という物差しだけで人を見るのは、浅いです」


 真葛の君が一瞬反応した。自分なら以前「浅い」と直接言っていたところだろう。しかし、今は黙っている。


 成長している。


「歌がうまい。香が作れる。紙を正確に扱える。宴で話せる。それは分かりやすい力です」


 私は続けた。


「でも、人の話を静かに聞ける力。小さな異変に気づく力。誰かが傷ついた時、騒がず隣にいられる力。それは、役に立たない力でしょうか」


 薄墨の君が、顔を上げた。少しだけ。


 常盤が、はっとした顔をした。


「姫様」


「はい」


「薄墨の君は、確かに人の話をよく聞いておられます」


「でしょう」


「外の噂を拾う私とは違い、御殿の内側の沈黙を拾っているような」


「よい表現です」


 若菜も言った。


「私が香の配合で迷っている時、薄墨の君は何も言わずにそばにいてくださいました。急かされないので、落ち着きました」


 澄子が続ける。


「灯のことで失敗した時も、誰にも言わず、ただ芯を取り替える手伝いをしてくださいました」


 春枝が紙箱を抱えながら言った。


「紙を運ぶのは少し苦手かもしれませんが、紙が湿っている時、最初に気づいたのは薄墨の君でした。『箱の下が冷たい』と」


 有子が記録帳をめくる。


「以前、露草の君が文で困っていた時、私たちが気づく前に薄墨の君がそばについていました」


 菅原の君も言った。


「私が宴で笑われた後、何も聞かずに水を持ってきてくださったのは、薄墨の君です」


 小少将が静かに頷く。


「誰が何に傷ついたか、薄墨の君はよく見ておられます」


 藤袴の君は、言葉を失った。薄墨の君本人も、驚いている。自分の行動が、そんなに覚えられていると思っていなかったのだろう。


 私は言った。


「薄墨の君は、即戦力ではありません」


 薄墨の君の肩が少し揺れる。


「ですが、初期察知に向いています」


 赤染衛門の筆が止まった。


「姫様」


「はい」


「また言葉が……」


「雅にお願いします」


「『揉め事の兆しを早く見つける役』でいかがでしょう」


「採用します」


 常盤が目を輝かせた。


「なるほど。何かが起こる前の、小さな変化を見つける役ですね」


「そうです」


「では、私が外の噂を拾うように、薄墨の君は御殿の内側を見る、と」


「その通りです」


 常盤が、なるほど、と頷く。


 そう。前世の言葉でいえば、センサーだ。


 派手な対処役ではない。火事を消す人でもない。けれど、煙が上がる前の焦げ臭さに気づく人。これは、藤壺に必要だ。


 最近の藤壺は大きくなった。物語、香、歌合、写本管理、地方との文、例外申請、宴の進行。人が増え、役割も増え、見物人も増えた。


 組織が大きくなると、揉め事は必ず起きる。そして揉め事は、起きてから対処すると遅い。その前に、小さな不満や疲れを拾う人がいると、被害は減る。


 前世で言えば、従業員満足度調査より早い雑談の拾い上げ。


 …いや、言わない。赤染衛門がこちらを見る前に、私は飲み込んだ。


「薄墨の君」


「はい」


 彼女は、震える声で答えた。


「あなたに、役目を任せます」


「私に、でございますか」


「はい」


「でも私は、不器用で」


「だからです」


 薄墨の君が目を見開く。


「不器用だから、前に出て場を動かす役ではありません。声が小さいから、人の本音を邪魔しません。目立たないから、相手は警戒せずに話せます」


 藤袴の君が、少し俯いた。


「あなたの地味さは、欠点だけではありません」


 私は続ける。


「藤壺では、女房たちの小さな不安や不満を早く見つける役になってください」


 薄墨の君は戸惑う。


「どのようにすれば」


「まず、聞くこと」


「聞く」


「解決しようとしなくてよいです。誰かが疲れている、言葉が少ない、いつもと香が違う、紙の扱いが乱れている、灯のそばに長くいる。そういうことに気づいたら、記録せずに、まずそばにいる」


 有子が少し反応した。


「記録しないのですか」


「最初から記録されると、人は話せません」


「なるほど」


「ただし、危険な兆しがあれば、赤染衛門か私に静かに伝える」


 常盤が頷く。


「外の噂は私、内の沈黙は薄墨の君ですね」


「そうです」


 朝顔の君が言った。


「場が明るすぎて、沈んでいる人に気づかぬことがあります。薄墨の君が教えてくだされば助かります」


 真葛の君も静かに言う。


「私の言葉がまた棍棒になっていたら、知らせてください」


「棍棒はもう少し忘れましょう」


「難しいです」


 薄墨の君は、まだ信じられないような顔をしている。


「私が、そのような役を……」


「できます」


「でも、何かを直すことは苦手です」


「直さなくてよいです」


 私は言った。


「見つけることが役目です」


 ここは大事です。センサーに修理までさせてはいけない。異常を検知する人と、対処する人は別でよい。むしろ別の方がよい。薄墨の君に、すべてを背負わせるつもりはない。


「あなたは、揉め事を解決しなくてよい。兆しを教えてください。対処は、私たちで考えます」


 薄墨の君の目に、涙が浮かんだ。


「それなら……できるかもしれません」


「はい」


 赤染衛門が覚にまとめる。


 一つ、人を即戦力だけで測らない。

 二つ、目立たぬ者の観察力を軽んじない。

 三つ、聞く役と解決する役を分ける。

 四つ、小さな不調を早く拾う。

 五つ、本人の秘密を軽々しく記録しない。

 六つ、兆しを見つけたら、静かにしかるべき者へつなぐ。


 最後に、こう書かれた。


 ――無用と見ゆるところに、御殿を保つ用あり。


 さすが赤染衛門。荘子が雅になった。


 藤袴の君は、深く頭を下げた。


「薄墨の君。先ほどの言葉、申し訳ございません」


 薄墨の君は驚いたように彼女を見る。


「いえ、その」


「私は、分かりやすい働きばかり見ておりました」


 真葛の君が少し頷く。


 以前の彼女なら、ここで「その通り浅かったですね」と言いそうだったが、言わない。


 偉い。


 薄墨の君は、小さく首を振った。


「私も、自分が何もできないと思っておりました」


 私は言った。


「できることを、これから見つければよいのです」


 その日から、薄墨の君の役目が始まった。最初は、本人も周囲もぎこちなかった。彼女は大きな声で報告しない。目立って動かない。ただ、以前と同じように静かにいる。


 だが、少しずつ違いが出た。


 ある日、薄墨の君が若菜のそばに静かに座っていた。若菜は香炉を見つめたまま、いつもより長く黙っている。薄墨の君は何も聞かない。ただ、少し離れたところに水を置いた。


 しばらくして若菜が小さく言った。


「近頃、香を任されるのが少し怖いのです」


 薄墨の君は、頷いた。


「帝や公卿に気づかれるようになってから、失敗したらどうしようと」


 その話は、薄墨の君から赤染衛門へ静かに伝わった。翌日、若菜の負担を減らすため、香の準備に補助を一人つけることになった。若菜は少し楽になった。


 揉め事にはならなかった。でも、放置すれば、若菜はいつか香を失敗するか、心が折れたかもしれない。


 また別の日。薄墨の君は、春枝が紙箱をいつもより強く抱えていることに気づいた。春枝は笑っていたが、紙の話になると少し過敏だった。


 聞いてみると、定子方の女房に「藤壺は紙ばかり大げさ」と笑われていたらしい。薄墨の君が静かに聞いたことで、春枝は泣かずに話せた。


 その後、私は春枝に「紙の役目は藤壺の基礎」と改めて伝えた。春枝は復活した。


 さらに別の日。


 菅原の君が、語り札を破りかけていた。薄墨の君が気づいた。理由は、真葛の君の指摘が少し鋭すぎたことだった。棍棒が、半分出ていた。


 薄墨の君は、真葛の君に直接責めず、赤染衛門へ伝えた。赤染衛門が真葛の君に言葉の出し方を軽く直した。菅原の君は、札を破らずに済んだ。真葛の君も、後で薄墨の君に礼を言ったそうです。


「助かりました。私はまた少し、言葉が硬くなっていたようです」


 薄墨の君は恐縮していた。でも、役に立っている。


 静かに、確実に。常盤がある日、私に言った。


「姫様」


「はい」


「薄墨の君がいると、問題が大きくなる前に分かります」


「そうですね」


「外の噂より前に、内側の揺れが見えるのです」


「それは貴重です」


「なるほど……これは、藤壺に必要な役目ですね」


「そうです」


 私は頷いた。


「御殿の中の、ほんの小さな変化を見つける。そういう役目です」


 常盤が感心したように頷く。


「なるほど。外の噂を拾う私とは、ちょうど逆ですね」


「そういうことです」


「では、私は外の耳。薄墨の君は内の耳、ということでしょうか」


「それなら、悪くありません」


 赤染衛門が、こちらを見た。


「『御殿のかすかな揺らぎを聞く耳』などはいかがでしょう」


「素晴らしいです」


 採用である。


 薄墨の君の評判は、ゆっくり変わっていった。派手ではない。歌で名を上げたわけではない。香を褒められたわけでもない。公卿の前で見事に語ったわけでもない。でも、女房たちの間でこう言われるようになった。


「薄墨の君には、話しやすい」


「何も急かされない」


「聞いてもらうだけで落ち着く」


「大きなことになる前に、気づいてくださる」


「薄墨の君がそばにいると、場が荒れにくい」


 これは強い。非常に強い。


 定子方からは、少し笑いも届いた。


「藤壺では、何もできぬ女房にまで役を作るとか」


「地味な方をありがたがるなんて」


「人手が余っているのかしら」


「役立たずも、言いようですわね」


 常盤が報告した時、薄墨の君は少しだけ俯いた。だが、以前のように崩れなかった。私は言った。


「無用の用です」


 薄墨の君が顔を上げる。


「役に立たないと言われるものが、別の物差しでは大きく役に立つことがあります」


 藤袴の君も、今では頷いていた。


「私も、以前は分かりませんでした」


「今は?」


「薄墨の君がいてくださらないと、私の言葉もまた誰かを傷つけるかもしれません」


 真葛の君が小さく笑った。


「棍棒仲間ですね」


「仲間にしないでください」


 少し笑いが起きた。薄墨の君も、小さく笑った。その笑顔は地味だった。でも、藤壺の中では確かに見えた。


 私は扇を手に取った。


 女房たちが姿勢を正す。


「人を、一つの役立ち方だけで測ってはいけません」


 赤染衛門が筆を構える。


「すぐに成果を出す者も大切です。けれど、すぐには形にならぬ働きもあります。聞くこと、気づくこと、黙ってそばにいること。それも御殿を保つ力です」


 薄墨の君は、静かに頭を下げた。


「私は、見つける役を務めます」


「はい」


「解決できないことは、つなぎます」


「それで十分です」


 藤壺の棚に、また一枚、覚が増えた。


 ――人の役目を一つの物差しで測らぬ覚。


 荘子は、価値観をひっくり返した。役に立つものだけを重んじる目を笑い、役に立たないからこそ保たれる価値を示した。


 藤壺でも同じだ。歌がうまい者。香を作る者。紙を選ぶ者。記録する者。語る者。場を明るくする者。それぞれが大切です。


 でも、誰かが泣く前に気づく者も、同じくらい大切です。役立たず扱いされた薄墨の君は、宮廷のセンサーになった。


 いえ。赤染衛門風に言えば、


 ――御殿のかすかな揺らぎを聞く耳。


 藤壺はまた一つ、目に見えない力を得ました。それは華やかな武器ではありません。人を笑わせる機知でもない。帝の目を引く美貌でもない。ただ、静かに聞く力。


 でも、火事になる前の煙に気づける御殿は、強い。そして私は思います。無用に見えるものを切り捨てる組織は、やがて自分の影を失います。


 藤壺は、そうならない。役に立つ、という言葉の意味を、こちらで決め直す。


 それが、荘子から学んだ価値基準の反転でした。

〜 出典 〜

『荘子』人間世じんかんせい 篇 無用の用


 山木自寇也やまのきはみずからあだし膏火自煎也こうかはみずからにるなり桂可食故伐之かつらはくらうべきがゆえにこれをきり漆可用故割之うるしはもちうべきがゆえにこれをさく人皆知有用之用ひとみなゆうようのようをしりて而莫知無用之用也むようのようをしるなくなきなり


(共通テスト向け訳文)山の木は役に立つからこそ切り倒され、漆の木は有用だからこそ傷つけられる。人々は「役に立つことの用」ばかりを知っていて、「役に立たないように見えるものの、本当の大きな働き(無用之用)」を知らない。



【令和6年度(2024年度)大学入学共通テスト(公民)】


下線部fに関して、次の資料1・2はAとBが図書館で見付けた『荘子』の文章である。資料1・2のそれぞれの内容を表す語句として最も適当なものを後のア〜エから選んだとき、その組合せとして正しいものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。


資料1

恵子けいしに「あなたの言葉は無用やくたたずだ」と言われ、荘子は答えた。「無用が分からないと有用について語れない。広大な地面の内、有用なのは足で踏む面積だけだ。しかし、そこだけ残して周りの地面を……深く掘ってなくしたらまともに歩けるか。……無用が有用であることは明らかだろう」と。


資料2

恵子に「私の所に大木が有るが……幹はこぶだらけで……大工も振り返らない。あなたの言葉も大きいだけで無用だから、同じですね」と言われ、荘子は答えた。「……その木を、何も無い場所、果てしなく広々とした野に植え、その傍らでふらふら無為に過ごし、自由にのびやかに木陰で寝転べばよいではないか。……無用だって少しも困りはしない」と。


ア  逍遥遊

イ  無用の用

ウ  万物斉同

エ  心斎坐忘


① 資料1 ― ア  資料2 ― ウ

② 資料1 ― ア  資料2 ― エ

③ 資料1 ― イ  資料2 ― ア

④ 資料1 ― イ  資料2 ― ウ

⑤ 資料1 ― ウ  資料2 ― イ

⑥ 資料1 ― ウ  資料2 ― エ

⑦ 資料1 ― エ  資料2 ― ア

⑧ 資料1 ― エ  資料2 ― イ


【解答】

 正解:③ だそうです。資料1が「無用の用」(この世に無用なものは存在しない)についての記述で、資料2が「逍遥遊(しょうようゆう)」の中にあるお話の1つ。他の言葉「万物斉同」とは、本質的に万物の価値は等しく、対立や区別は人間が決めつけたものであるという教えで「心斎坐忘」とは、荘子が説いた徹底した自己省察の方法のこと。


 私結構本読む方だと思うんですけど…さっぱり解けんw



〜 舞台背景 〜

 荘子(そうし、簡体字中国語: 庄子、拼音: Zhuāng zǐ、紀元前369年頃 - 紀元前286年頃)は、中国戦国時代の思想家で、『荘子』(そうじ)の著者とされ、また道教の始祖の一人とされる人物である。出典:wikipedia

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