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転生皇后 藤原彰子 〜 欠けることのない望月の世は私が創る 〜  作者: 条文小説


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四十九 韓非子、情に流されるな

挿絵(By みてみん)


 情に訴えて規則を破ろうとする女房が現れる。彰子は韓非子的な法術を思い出し、個別の同情で例外を作ると組織が崩れると判断する。ただし冷酷に切るのではなく、例外申請の基準を作る。女房たちは最初反発するが、公平さが保たれることで不満が減る。情のマウントを制度で受け止める。

 「かわいそう」は、強い。


 前世で会社員をしていた頃、私はそれを何度も思い知らされました。


「今回だけお願いします」


「事情が事情なので」


「本人も反省しています」


「悪気はなかったんです」


「ここで厳しくすると、あまりにも可哀想です」


 うん。分かる。


 事情はある。人にはそれぞれ背景がある。家のこと、体調のこと、人間関係のこと、たまたま重なった不運。規則だけを機械のように当てはめれば、息苦しい組織になる。だから、配慮は必要です。


 でも。


 個別の同情で毎回ルールを曲げ始めると、組織は静かに壊れます。最初は優しさに見える。けれど、次の人が言う。


「前の人は許されたのに、なぜ私はだめなのですか」


 さらに別の人が言う。


「あの人だけ特別扱いですか」


 そのうち、規則は規則ではなくなります。誰が泣いたか。誰が上手く訴えたか。誰に味方が多いか。誰の主が強いか。それで結果が変わるようになる。それは、優しさではありません。不公平です。そして、不公平は、目に見えない毒になります。


 前世の私は、そういう場面で何度も胃を痛めました。規則を守れば冷たいと言われる。例外を認めれば、次から線引きが崩れる。どちらを選んでも誰かが不満を持つ。それでも、組織を保つには、判断の物差しが要ります。情を無視してはいけない。でも、情に支配されてもいけない。そのあたりを、ものすごく冷たく突き詰めた思想家が、唐土にはいます。


 韓非子。


 法を重んじ、君主が情や私情に流されず、制度で人を動かすことを説いた人。正直、前世で読んだ時は「怖い」と思いました。人間味が薄い。冷徹すぎる。信賞必罰が強すぎる。でも、組織運営の場に立つと、分かってしまう部分もあります。


 人は、情で動く。だからこそ、情だけで裁いてはいけない。そして、ここは平安宮中。情は、現代の何倍も強い。涙。文。歌。袖の香。人前で伏せる姿。「おいたわしい」という空気。誰かが小さく泣けば、場が一気にそちらへ傾きます。宮中は、情緒でできている。だからこそ、制度が要るのです。


 その日、藤壺に問題を持ち込んだのは、萩野の君でした。彼女は、普段は明るく、人当たりもよく、ちょっとした頼みごとをするのがうまい女房だった。


「申し訳ございません、少しだけ」


「姫様のお手を煩わせるほどでは」


「今回は急ぎでして」


「後で必ず整えますので」


 そう言いながら、ちょこちょこと手順を飛ばす。悪人ではない。むしろ、愛嬌がある。相手の懐に入るのがうまい。皆も、「まあ萩野の君なら」と許してしまう。でも、私は以前から少し気にしていました。藤壺には、ここのところ増えに増えた覚があります。


 写本管理。朗読会の運用。感想共有。香の導線。贈答品返却。文の期限管理。批判の作法。歌合の準備。


 やや多い。多いのですが、必要だから増えました。そして、規則は運用して初めて意味があります。


 萩野の君が破ろうとしたのは、写本の持ち出し手順でした。紫式部の新しい草稿ではありません。すでに朗読済みの写しです。


 でも、藤壺では、外へ出す写しには受け渡し記録が必要でした。誰へ、いつ、どの版を、どの語句差で渡したか。写本流出事件以降、これは絶対です。


 萩野の君は、その写しを、手続きなしで外の女房へ貸そうとしました。理由は、相手の女房が落ち込んでいたから。


「その方は、近頃たいそう沈んでおられまして」


 萩野の君は、私の前で袖を押さえながら言った。


「物語を読めば、少しは御心も慰むかと存じました。すでに朗読された部分ですし、ほんの一晩だけでございます。どうか、今回だけお許しいただけませんでしょうか」


 藤壺に、微妙な空気が流れる。菅原の君が、少し同情した顔をする。


「落ち込んでおられるなら、物語で慰めたいお気持ちは分かります……」


 若菜も小さく頷いた。


「沈んだ時に、物語が助けになることはございます」


 春枝は紙箱を抱えながら不安そうだった。


「でも、写しを外へ出すなら記録が……」


 常盤は警戒している。


「一晩だけ、という言葉はだいたい危険です」


「あなたが言うと重みがあります」


「はい」


 有子は、すでに記録帳を開いていた。


「持ち出し記録がなければ、後で追えません」


 赤染衛門は静かに私を見ている。紫式部は、少し離れていたが、筆は止まっていた。萩野の君は、さらに訴えた。


「もちろん、規則は大切です。けれど、人の心が弱っている時にまで、紙の手順を先にするのはあまりにも冷たくはございませんか」


 出た。


 情のマウントです。規則を守る側を、冷たい人間に見せる言い方。これは強い。規則を曲げたい時、人はしばしば「優しさ」を使う。そして、規則を守ろうとする人に「あなたには情がないのですか」と迫る。


 嫌な攻め方だ。


 しかも、本人に悪意があるとは限らない。本当に相手を助けたいのかもしれない。だから難しい。


 私は扇を手に取った。


 ぱちり。


 藤壺が静まる。


「萩野の君」


「はい」


「その方を慰めたい気持ちは、分かります」


 萩野の君の顔が少し明るくなる。


「では」


「ですが、手続きなしの持ち出しは認めません」


 その顔が固まった。菅原の君も、少し驚いた顔をした。若菜が目を伏せる。


 春枝はほっとしたような、不安なような顔。常盤は「やはり」と小さく頷く。有子の筆が走る。萩野の君は、声を震わせた。


「姫様は、その方が泣いておられても、規則を優先なさるのですか」


「はい」


 私は即答した。


 藤壺の空気が、さらに冷える。


 ただし、ここで冷たく切り捨てるだけでは駄目だ。韓非子的な法だけでは、藤壺には合いません。ここは人の心を扱う御殿です。必要なのは、情を否定することではありません。情を制度で受け止めることです。


「ただし」


 私は続けた。


「規則を守った上で、その方を慰める方法を作ります」


 萩野の君が顔を上げる。


「方法……」


「はい。例外申請です」


 赤染衛門の筆が止まった。


「姫様」


「はい」


「また実務的なお言葉が」


「雅にお願いします」


「……『特別の事情ある折の願い出の覚』でいかがでしょう」


「採用します」


 萩野の君は、戸惑っている。


 菅原の君が小声で言った。


「例外を、認めるのですか?」


「認める場合があります」


「では今回も」


「基準を満たせば」


 私は女房たちを見回した。


「韓非子です」


 藤壺が微妙な顔になった。


 最近、異国や唐土の思想が出ると覚が増えると、皆かなり学習している。赤染衛門は、もう筆を構え直した。


「今回の題は」


「韓非子、情に流されるな」


「……雅に」


「お願いします」


「『情と法の扱いを考える覚』でいかがでしょう」


「採用します」


 私は説明を始めた。


「韓非子は、法を重んじました。人の情や私的な好みによって判断が変われば、国は乱れる、と」


 真葛の君が頷いた。


「法家の考えですね」


「そうです」


「厳しすぎる面もありますが、組織には必要な視点です」


「その通りです」


 私は萩野の君を見る。


「一人が『かわいそうだから』で写しを持ち出せば、次の人も言います。『私の知人もつらいのです』『あの人は許されたのに、私はなぜだめなのですか』と」


 萩野の君は黙る。


「そのたびに、泣き方の強さや、頼み方のうまさで結果が変われば、手順は崩れます」


 有子が静かに言う。


「記録も追えなくなります」


「ええ。写本流出事件を忘れてはなりません」


 紫式部の表情が、少し硬くなった。


 あの事件で、未定稿が外に流れ、笑いものにされた。その痛みは、まだ藤壺の中に残っている。


「物語は、人を慰めます」


 私は言った。


「けれど、物語を守る仕組みを壊してまで慰めるなら、次に傷つくのは作者です」


 萩野の君の顔が揺れた。紫式部は、何も言わない。だからこそ、重い。


「では、どうすればよろしいのでしょう」


 萩野の君が小さく言った。


「特別の事情がある時は、正式に願い出るのです」


 私は有子に合図した。


「基準を作ります」


 有子が筆を構える。


「一つ。目的」


「誰を、何のために助けたいのか。慰めたい、学ばせたい、確認させたい。目的を明確にします」


「二つ。対象」


「どの写しを、どこまで見せるのか。全巻ではなく、必要な場面だけ。未定稿は不可」


 春枝が深く頷く。


「紙も、必要な分だけです」


「三つ。期間」


「一晩、三日、朗読会まで。いつ返すのかを明記します」


 常盤が言う。


「『少しだけ』は禁止ですね」


「禁止です。少しだけ、は期間ではありません」


「四つ。責任者」


「誰が貸し出し、誰が返却を確認するのか。萩野の君が願い出るなら、萩野の君が責任を持ちます」


 萩野の君が身を硬くする。


「私が?」


「そうです。情で頼むなら、責任も持ちなさい」


 赤染衛門が筆を走らせる。


「五つ。記録」


「通常の写本管理と同じく、日時、相手、版、語句差、返却確認を残します」


 有子が頷く。


「六つ。代替手段」


「写しを外へ出さずに済む方法がないか検討します。たとえば、藤壺内で短い朗読の場を設ける。あるいは、慰めにふさわしい一節だけを正式に写して渡す」


 若菜が顔を上げた。


「香や文を添えることもできます」


「はい」


 小少将も言う。


「衣や小さな贈り物で慰めることも」


「そうです。物語だけが慰めではありません」


 菅原の君が、少しほっとした顔をした。


「では、助ける道はあるのですね」


「あります」


 私は頷いた。


「ただし、道を作って通ります。垣根を破ってはいけません」


 萩野の君は、深く俯いた。


「私は……その方を助けたいと思っておりました」


「分かっています」


「でも、手順を破ることを、優しさと思っておりました」


「優しさは、手順の敵ではありません」


 私は言った。


「本当に必要な優しさなら、手順に乗せられます」


 赤染衛門が、静かに筆を止めた。


「姫様、その一文はよろしいですね」


「採用ですか」


「採用です」


 こうして、覚に書かれた。


 ――まこと必要なる情は、筋道を立ててもなお残るものなり。


 うん。


 雅だ。


 私の中の法務部が喜んでいる。


 ……法務部とは何か、藤壺の誰にも説明できないので黙っておく。


 萩野の君の申請は、その場で正式に扱うことになりました。有子が願い出の紙を用意する。萩野の君は、少し震える手で書いた。


 目的。相手の事情。見せたい場面。期間。責任者。


 最初は曖昧だった。


「御心を慰めるため」


「もう少し具体的に」


 真葛の君が言う。


 以前なら鋭く刺していたところだが、今は違う。


「どのような悲しみに、どの場面が合うのかを書いた方が、許可しやすくなります」


 萩野の君は頷く。


「……近しい方を失って沈んでおられるので、別れの場面ではなく、残された者が少しずつ日々を整える場面を」


 紫式部が、静かに顔を上げた。


「それなら、あの一節がよいでしょう」


 彼女が選んだのは、悲しみを直接あおる場面ではなかった。朝の光、整えられる几帳、返らぬ人を思いながらも、日常の小さな手順を取り戻す場面。


 慰めに向いている。


 萩野の君の目が潤んだ。


「ありがとうございます」


 紫式部は淡々と言った。


「未定稿ではありませんので」


「はい」


 春枝が紙を選ぶ。


「一節だけなら、柔らかい紙がよいでしょう。相手が何度も開くかもしれません」


 若菜が香を添える。


「強すぎない香にします。悲しみの時に甘い香はつらいことがありますから」


 澄子が言う。


「灯の近くで読みやすいよう、墨を濃く」


 有子が写しを管理する。


「語句差を入れますか」


 私は少し考えた。


「今回は正式な慰めの写しです。語句差は記録用に一か所だけ。相手を疑うためではなく、管理のため」


 有子が頷く。


「承知しました」


 萩野の君は、その一節を正式に受け取り、責任者として返却日を記した。


 数日後。


 写しは、きちんと戻ってきた。しかも、相手の女房から礼の文が添えられていた。そこには、こう書かれていた。


 ――御草子の一節、心にしみ入りました。無理に泣かせるものではなく、明日の灯を整えるような言葉でございました。


 紫式部は、それを聞いて少しだけ目を伏せた。


 良かった。物語は、人を慰めた。そして、規則は壊れなかった。これが理想です。


 もちろん、最初から全員が納得したわけではありません。数日の間、藤壺では少し不満も出ました。


「そこまで書かねばならぬのは面倒です」


「急ぎの時に遅れませんか」


「信頼していないように見えます」


「姫様は近頃、少し厳しいのでは」


 常盤が、それらを淡く集めてきた。


「姫様、多少反発がございます」


「想定内です」


「想定内」


「規則を作る時、最初はだいたい面倒がられます」


 前世でもそうでした。申請フォームを作る。承認ルートを明確にする。記録項目を増やす。例外基準を定める。


 最初は皆、嫌がる。でも、しばらくすると気づく。誰に頼めばよいか分かる。何を書けば通るか分かる。自分だけ不利に扱われにくい。後から責められにくい。


 制度は、面倒ですが、人を守ります。ただし、制度を作る側が横柄になると逆効果です。だから運用が大事です。


 私は女房たちを集めました。


「特別の事情ある折の願い出は、人を疑うためではありません」


 皆がこちらを見る。


「むしろ、助けたい気持ちを正式に通すための道です」


 菅原の君が頷く。


「道があるなら、こっそり破らなくてよくなります」


「そうです」


 春枝が言う。


「紙も、どれを使えばよいか分かります」


「はい」


 有子が続ける。


「記録があると、後で責任の押しつけ合いになりません」


「重要です」


 真葛の君が言った。


「基準があれば、指摘する時も棍棒になりにくいです」


「棍棒は忘れてください」


「無理です」


「そうですか」


 若菜が小さく言う。


「情をなくすのではなく、情がこぼれない器を作るのですね」


 私は思わず微笑んだ。


「とてもよい言い方です」


 赤染衛門が即座に書いた。


 ――情を捨つるにあらず、こぼれぬ器を設くるなり。


 美しい。


 もちろん採用です。その後、例外申請の仕組みは、思った以上に効果を出しました。写本だけではありません。香の持ち出し。紙の使用。朗読会への特別参加。贈答品の臨時手配。体調不良による役割交替。


 これまで「今回だけ」で曖昧に処理されていたことが、簡単な願い出で整理されるようになりました。全てを厳格に縛るわけではありません。


 でも、目的、期間、責任者、記録。この四つを書くと、だいたいの混乱は減ります。


 萩野の君も変わった。以前のように「少しだけ」で手順を飛ばそうとしなくなった。代わりに、誰かが困っている時、願い出の書き方を手伝うようになった。


「萩野の君」


 私はある日、声をかけた。


「はい」


「最近、願い出の相談役になっていますね」


 萩野の君は少し恥ずかしそうに笑った。


「私が一度叱られましたので、皆さまが同じように困らぬようにと」


「叱ったつもりはあります」


「はい。かなり」


「すみません」


「いえ」


 萩野の君は首を振った。


「私、情に訴えれば通ると思っておりました」


「自覚しましたか」


「はい。でも、それでは通った後に、誰かが困るのですね」


「そうです」


「今は、通る形にする方がよいと分かります」


「成長です」


 萩野の君は、少し得意げに言った。


「情を、器に入れます」


「良いです」


 定子方からは、当然皮肉が届いた。


「藤壺では、涙を流すにも願い出が要るとか」


「規則ばかりで、息苦しそう」


「情のない御殿ですこと」


「定子様の御前なら、もっと人の心を汲みますのに」


 常盤が報告した。菅原の君がむっとする。


「情がないわけではありません!」


 若菜も静かに言った。


「むしろ、情を大切にするためです」


 真葛の君が頷く。


「例外の基準がある方が、公平です」


 有子が記録帳を閉じる。


「不満も減っています。以前より、誰が何を持ち出したか確認する時間が短くなりました」


 春枝が紙箱を抱えた。


「紙の行方も分かります」


 常盤が笑う。


「そして、言った者勝ちが減りました」


「そこです」


 私は頷いた。情の強い人が勝つ。泣ける人が勝つ。口のうまい人が勝つ。立場の強い人に近い人が勝つ。そういう御殿にはしません。


 藤壺は、情を否定しません。情を制度で受け止めます。これが、韓非子をそのままではなく、藤壺流に使うということです。冷酷な法ではない。情を守るための法。私は扇を手に取りました。


 ぱちり。


 女房たちが姿勢を正す。


「かわいそう、だけで規則を曲げてはいけません」


 赤染衛門が筆を構える。


「一人のために作った曖昧な例外は、次の不公平になります」


 萩野の君が静かに頷く。


「ですが、困っている人を切り捨てるのでもありません。目的、期間、責任者、記録を定め、正式に助ける道を作ること」


 韓非子は冷たい。そう見える。でも、情だけで場を回せば、声の大きい者、泣くのが上手い者、近くにいる者ばかりが救われる。それは本当の優しさではありません。


 藤壺の優しさは、手順を持ちます。願い出を受ける。事情を聞く。基準を見る。必要なら通す。通したら記録する。そして、後で誰かが不公平だと泣かなくて済むようにする。


 情のマウントは、制度で受け止める。


 ……と心の中で言ったら、赤染衛門がこちらを見た。


「姫様」


「はい」


「また妙な言葉をお考えですね」


「少しだけ」


「雅に直すなら、『涙を筋道に乗せる』でしょうか」


「採用します」


 その後、藤壺では誰かが「今回だけ」と言うと、常盤がにこやかに紙を差し出すようになった。


「では、願い出を」


 情緒は少し減った。でも、不満もかなり減った。


 そして何より、紫式部の草子は、今日もきちんと守られていた。

〜 出典 〜

『韓非子』矛盾むじゅん


 楚人有鬻楯與矛者そひとにたてとほこをひさぐものあり譽之曰これをほめていわく吾楯之堅わがたてのかたきこと莫能陷也よくつきとおすものなきなり又譽其矛曰またそのほこをほめていわく吾矛之利わがほこのときこと於物無不陷也ものにおいてつきとおさざるなきなり或曰あるひといわく以子之矛しのほこをもって陷子之楯何如しのたてをつきとおさばいかん其人弗能應也そのひとこたうるあたわざるなり


(中1定期テスト対策訳文)楚の国に、盾とほこを売っている商人がいた。彼は盾を宣伝して「私の盾の頑丈なことといったら、どんな武器でも突き通すことはできない!」と言った。また、矛を宣伝して「私の矛の鋭いことといったら、どんな物でも突き通せないものはない!」と言った。すると、客の一人が言った。「では、あなたのその矛で、あなたのその盾を突いたらどうなるんだい?」商人は、何も答えることができなかった。


 ※故事成語(漢文)はなんと中学一年生の学習内容らしいですね。で、中学二年生以降は杜甫とほ李白りはく孟浩然もうこうねん王維おういなどの唐代の盛唐四大家の詩と論語ろんごらしいです。ちょっと後書きでインテリぶってた自分が恥ずかしい…w


〜 舞台背景 〜

『韓非子』(かんぴし)は、中国戦国時代の法家である韓非の著書。内容は春秋戦国時代の思想・社会の集大成と分析とも言えるものである。韓非は百家争鳴と呼ばれる中国思想史の全盛期に生まれた政治家である。書中では分かりやすい説話から教訓を引き、徹底的に権力の扱い方とその保持について説いている。韓非は性悪説を説く儒家の荀子に学んだといわれ、非違の行いを礼による徳化で矯正するとした荀子の考えに対し、法によって抑えるべきだと主張した。出典:wikipedia

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