四十三 越の西施、顔面偏差値の危険性
美貌で周囲を操る女房が、自分こそ越の西施だと持ち上げられる。彰子は「西施の美が国を滅ぼしたのをお忘れ?」と一言。美貌は資源だが、管理できなければ紛争の火種になると説く。さらに美人女房を交渉役ではなく儀礼演出役に配置し、無用な恋愛騒動を防ぐ。美貌を武器にする相手を、美貌のリスク管理で制する。
美貌は、資源である。
前世でそう言うと、だいたい嫌な顔をされます。
分かります。言い方が悪い。けれど、現実として、見た目の印象は人を動かします。営業でも、受付でも、広報でも、接客でも、第一印象が仕事に影響する場面があります。
美しい人、清潔感のある人、華のある人、場に立つだけで視線を集める人。そういう人が持っている力は、たしかに存在します。
問題は、それをどう扱うかです。美貌は、本人の努力だけで得たものとは限りません。だから、過度に誇れば傲慢になる。過度に否定すれば、持っている力を無駄にする。周囲が利用すれば、本人は消耗する。本人が武器にしすぎれば、人間関係が燃える。
つまり、美貌は資源であると同時に、火種でもあります。前世の職場にもいました。顔が良く、愛想も良く、上司にも取引先にも妙に強い人。その人が入るだけで会議の空気が柔らかくなる。難しい依頼も通りやすくなる。相手が勝手に好意的に解釈してくれる。
確かに、それ自体は才能です。ただし、本人がそれを分かって使い始めると、急に危なくなります。
「あの人に頼めば通る」
「あの人が行けば相手が折れる」
「あの人が笑えば何とかなる」
そうして、交渉の中身より顔が前に出だします。相手が勘違いする。周囲が嫉妬する。本人も、自分の影響力を読み違える。最悪の場合、案件ではなく人間関係が燃える。
そして、ここは平安宮中。顔の価値は、現代以上に重い。
御簾越しでも、姿の気配は伝わります。衣の色、声、香、立ち居振る舞い、わずかに見える横顔。噂はすぐに「美しいらしい」と尾ひれをつける。
帝や公卿の視線が動けば、それだけで御殿の空気が変わる。美貌は、宮中における強力な通貨です。そして、通貨は管理しないとインフレする。
その日、藤壺に小さな火種が持ち込まれました。
火種の名は、花橘の君。美しい女房でした。ただ美しいだけではありません。自分が美しいことを、よく知っている美しさでした。
目線の上げ方。袖の動かし方。声を少し遅らせる間。相手が見ていることに気づいていながら、気づいていないふりをする技術。そういうものが、全部うまい。
前世風に言えば、高い自己プロデュース能力です。しかも、周囲が勝手に持ち上げるので、本人の自己評価も相応に育っています。
花橘の君は、定子方にも藤壺にも顔を出す、中立を装った情報通でした。中立を装う人は、だいたい一番自分に有利な場所へ行きます。常盤が以前から警戒していました。
「あの方は、誰にでも同じように笑います」
「よいことでは?」
「いえ。相手ごとに『自分だけに笑った』と思わせる笑みです」
「なるほど。危険ですね」
「危険です」
常盤が危険と言う時は、わりと本当に危険です。
その花橘の君が、ある日の朗読会後に、数人の女房たちと藤壺の端で話していました。私は表向き聞いていないふりをしながら、赤染衛門と有子がまとめた感想札を見ていました。
紫式部は離れたところで筆を整えています。若菜は香炉の灰をならし、澄子は灯を少し落としている。
春枝は紙箱を閉じ、小少将は几帳を直していた。菅原の君は、今日読まれた場面についてまだ胸を押さえています。
その時、花橘の君の周囲から笑い声が上がりました。
「花橘様ほどの御方なら、どの御殿でも重んじられますわ」
「帝も公卿も、御覧になれば忘れられませんでしょう」
「まるで越の西施のよう」
西施。
私は、思わず顔を上げました。花橘の君が、扇で口元を隠しながら微笑む。
「まあ、西施だなんて」
言いながら、否定する気はなさそうでした。その周囲の女房たちは、さらに盛り上がる。
「西施といえば、傾国の美女でございましょう?」
「その美しさで国まで動かしたと申しますわ」
「国を動かす美貌ですわ」
「花橘様も、まさに宮中の西施」
花橘の君は、少しだけ首を傾げた。
「私など、とても」
その「私など」は、「もっと言いなさい」の意味です。
常盤が、すっと私の近くへ来た。
「姫様」
「聞こえています」
「西施とは?」
「中国・越の国にいたと伝わる美女です」
「美女」
「ええ。とても美しい女性として語られます」
「では、褒め言葉では?」
「半分は」
「残り半分は?」
「国が滅びます」
常盤が黙った。
そう。西施。中国・春秋時代、越の美女として名高い女性です。その美貌は呉王夫差を魅了し、国政を乱し、やがて呉は滅びました。
もちろん、それは西施一人の罪ではありません。国を滅ぼしたのは王の驕りであり、政治の乱れです。ですが、美貌が人の判断を曇らせ、国の行く末まで左右したという物語として、後の世まで語り継がれています。
だからこそ、宮中で「私は西施」と持ち上げられて喜ぶのは危ういのです。その名は、美貌の誉れであると同時に、国を傾けた美女の名でもあるのです。私は扇を手に取りました。
ぱちり。
音がした瞬間、藤壺の空気が静まりました。
花橘の君もこちらを見る。
「花橘の君」
「はい」
彼女は美しく頭を下げた。所作は完璧。さすがです。
「西施にたとえられたとか」
「恐れ多いことでございます」
「ええ。本当に恐れ多いことです」
花橘の君の笑みが、少しだけ止まった。周囲の女房たちも、空気を読み始める。私は静かに言った。
「西施の美は、呉を滅ぼしたとも申します」
藤壺が凍った。菅原の君が扇を取り落としかける。春枝が紙箱を抱きしめる。有子の筆が止まる。
常盤の目が輝く。赤染衛門は、そっと目を伏せた。紫式部が、筆を止めた。
花橘の君は、一瞬言葉を失った。彼女は、おそらく「まあ、美しすぎるのも困りものですね」とでも返されると思っていたのでしょう。あるいは「宮中の西施とは見事な例え」と笑ってもらえると。
だが、私はそこに水をかけました。かなり冷たい水を。
「美貌は、確かに力です」
私は続けた。
「それは否定しません。人の目を引き、場を華やかにし、相手の心を柔らかくすることもある。御殿にとっても、大きな資源です」
花橘の君の表情が少し戻る。まず認める。これは大事だ。否定から入ると、相手は被害者になります。
「ですが」
私は扇を膝に置いた。
「管理できない美貌は、紛争の火種です」
赤染衛門が、静かに筆を構えた。
「姫様」
「はい」
「今回も覚ですね」
「覚です」
「題は」
「越の西施、顔面偏差値の危険性」
「なりません」
「やはり」
赤染衛門は少し考えた。
「『美貌ある女房の役目を考える覚』でいかがでしょう」
「採用します」
花橘の君は、完全に会議に巻き込まれた顔をしている。藤壺では、褒め言葉も挑発も火種も、すべて覚になる。最近、宮中でも少し知られ始めているらしい。
私は女房たちに向き直った。
「美貌には、三つの効用があります」
赤染衛門が書く。
「一つ。場の印象を上げる」
小少将が頷いた。
「華やかな方がいらっしゃると、御殿全体が明るく見えますもの」
「そうです」
「二つ。相手の警戒を下げる」
常盤が言う。
「美しく柔らかな方が言うと、同じ言葉でも通りやすいです」
「ええ。そこが強みでもあり、危険でもあります」
「三つ。記憶に残る」
若菜が小さく言った。
「香と似ていますね」
「似ています。ただし、美貌は香よりも誤解を生みやすい」
花橘の君の目がわずかに動く。
「誤解、でございますか」
「はい」
私は彼女を見た。
「美しい人が微笑むと、相手はしばしば自分に向けられた意味を過剰に読みます。丁寧な挨拶を好意と取り違え、儀礼を誘いと誤解し、ただの会話を特別な関係だと思い込むことがあります」
藤壺の女房たちは黙って聞いている。
「その誤解が積み重なると、恋愛騒動になります」
菅原の君が、小さく頷く。
「物語になりますね」
「現実では困ります」
「はい」
「さらに、周囲の女房が嫉妬します。男同士も張り合います。主の評判にも影響します」
有子が真剣に記録している。
「つまり、美貌を交渉の前面に出しすぎると、話の中身より、誰が誰に心を寄せたかという噂が勝つのです」
常盤が深く頷いた。
「勝ちますね。噂はその方向が大好きです」
「でしょうね」
花橘の君は、少し不満そうだった。
「けれど、美しさを使って場を動かすことも、女房の才ではございませんか」
「才です」
私は即答した。
「だから、使いどころを変えます」
「使いどころ?」
「交渉役ではなく、儀礼演出役です」
藤壺が少しざわめいた。花橘の君も、明らかに予想外の顔をした。
「儀礼演出……」
赤染衛門がすぐに雅に直す。
「『儀の場を華やかに整える役』でよろしいかと」
「それです」
私は説明した。
「花橘の君の美しさは、一対一の交渉に使うと誤解を生みやすい。特定の公卿や男房と近く話す場では、相手が勝手に物語を作ります」
紫式部が、静かに言った。
「人は、自分に都合のよい筋を立てますから」
「ええ」
さすが物語の作者。人間の妄想に厳しい。
「ですが、儀礼の場なら違います」
私は続けた。
「来客を迎える場、朗読会の始まり、贈答品を整える場、几帳や香や衣の調和を見せる場。そこでは、美貌は個人的な誘いではなく、御殿全体の品格として働きます」
小少将が目を輝かせた。
「なるほど。花橘様を御殿の前面に立てるのではなく、場の完成度を上げる要として置くのですね」
「そうです」
「美貌を個人の武器ではなく、御殿の装飾に変える」
「装飾というと少し軽いですが、方向は合っています」
赤染衛門が整える。
「『一身の色を競うにあらず、御殿の趣を引き立てるものとする』」
「完璧です」
花橘の君は、黙っていた。怒っているようにも見える。けれど、完全に拒んでいるわけではない。
自分の美貌を否定されていないからだ。むしろ、正式な役目として認められた。ただし、自由に振り回すことは制限された。
これが大事です。美貌を武器にする相手を、武器の危険性ごと管理する。私は扇を少し動かした。
「花橘の君」
「はい」
「あなたの美しさは、確かに人の目を引きます」
「恐れ入ります」
「だからこそ、藤壺で扱うなら、個人の恋の噂を増やすためではなく、御殿の儀礼を整えるために使ってください」
花橘の君が、ゆっくり顔を上げる。
「つまり、私は誰かを動かす役ではなく、場を飾る役だと?」
少し棘がある。私は首を横に振った。
「違います」
「では?」
「場を格上げする役です」
花橘の君の目が止まった。
「飾りは、置かれるだけです。格上げする役は、全体を理解しなければ務まりません。どの場で、どの衣、どの香、どの距離、どの表情がふさわしいか。相手の身分、来訪の目的、主の意図、物語の場面、すべてを読んで動く必要があります」
私は微笑んだ。
「美しいだけではできません」
花橘の君の表情が、少し変わった。
これは、効いた。
美しい人に「美しいだけ」と言うと反発する。だが「美しいだけでは足りない役を任せる」と言うと、誇りに火がつくことがある。
前世のマネジメントでも、少し似たことがありました。強みを認める。ただし、強みだけで済む場所に置かない。責任を渡す。人は、自分の強みを責任に変えられた時、初めて成長します。
「……私に、その役が務まるとお思いですか」
花橘の君が尋ねた。
「務める気があるなら」
私は答えた。
「美貌を自慢として使う人には無理です。美貌を場のために使える人なら、できます」
藤壺に、静かな緊張が走る。花橘の君は、しばらく黙った。やがて、扇を閉じた。
「承りました」
その声には、先ほどまでの甘い響きだけではない、少し固い芯があった。
「私の顔が火種になるのなら、火鉢に収めてみせましょう」
おお。
言った。
菅原の君が感動しそうになる。紫式部が少しだけ目を細めた。赤染衛門が筆を走らせる。
「よい言葉ですね」
私が言うと、花橘の君は微笑んだ。
「中宮様に冷やされましたので」
「冷やしたつもりはあります」
「かなり冷えました」
「なら、よかったです」
そこから、藤壺では花橘の君の配置換えが行われました。まず、一対一に近い文の取次ぎから外します。
これは重要です。文の取次ぎは、恋愛誤解が発生しやすい。特に美人女房が取り次ぐと、文の内容より取次ぎの時の表情が噂になります。
次に、公卿の接待時には、距離を保った儀礼担当に配置する。近づきすぎない。視線を合わせすぎない。しかし、場の入口で美しく整った所作を見せる。香、灯、几帳、紙の位置を小少将や若菜、澄子と合わせる。
花橘の君は、思ったより真面目でした。最初は、自分が前に出られないことに少し不満そうでした。でも、小少将と一緒に几帳の色を選び、若菜と香の強さを調整し、澄子と灯の向きを確認するうちに、表情が変わっていきました。
「姫様」
ある日、花橘の君が言った。
「私が一歩下がると、かえって皆がこちらを見ますね」
「見ます」
「なぜでしょう」
「追わせる距離だからです」
花橘の君は、目を丸くした。
「追わせる距離」
「近すぎる美しさは、相手に勘違いをさせます。遠すぎる美しさは、ただの噂になります。儀礼の場では、その間がよいのです」
「姫様は、私より美貌の使い方が怖いです」
「私は顔面では戦っていませんので」
「顔面」
赤染衛門が咳払いした。
「姫様」
「はい。雅に」
「『御容貌』で」
「御容貌では戦っていません」
「よろしいかと」
花橘の君は笑った。
その笑いは、以前より少し軽かった。人を引っかける笑みではなく、普通に面白がっている笑みでした。
数日後、効果が出ました。ある公卿が藤壺を訪れた時、花橘の君は入口近くで儀礼を整えました。
衣は美しいが、華美すぎない。香は淡い。視線は丁寧だが、長く留めない。声は柔らかいが、個人的な含みを持たせない。その公卿は、後でこう言ったそうです。
「藤壺のしつらえは、近頃いよいよ整っている。迎えの女房の立ち居振る舞いまで、一つの絵のようだ」
常盤が報告した。
「恋の噂は?」
「出ておりません」
「よし」
「代わりに、『藤壺は女房の配置まで考えている』という噂が」
「それは出ていいです」
花橘の君は、それを聞いて少し誇らしそうだった。
「私個人の噂ではなく、御殿の評判になるのですね」
「そうです」
「不思議です。以前は、自分が噂になる方が嬉しかったのですが」
「今は?」
「御殿ごと褒められる方が、長く残る気がします」
「成長ですね」
「姫様は、時々、母のようにおっしゃいますね」
「そうかしら」
「私よりずっとお若いはずなのに」
「……それ以上は言わないで」
危ない。前世の年齢が漏れます。
一方で、定子方の反応は微妙でした。
「花橘の君が藤壺に取り込まれたとか」
「せっかくの美貌を、儀礼の飾りにしているそうですわ」
「もったいない」
「美しい女房なら、もっと男君たちを動かせるでしょうに」
だが、その声には以前ほどの強さはありませんでした。なぜなら、花橘の君が恋愛騒動を起こさず、むしろ藤壺の評判を高め始めたからです。
美貌を武器として使うと、短期的には強い。だが、噂が荒れます。美貌を場の設計に組み込むと、個人の熱狂は減る。しかし、御殿の格が上がります。藤壺が選ぶのは後者です。私は扇を手に取りました。
ぱちり。
女房たちがこちらを見ます。
「美貌は、否定すべきものではありません」
花橘の君が静かに頭を下げる。
「ですが、管理されない美貌は火種になります。誰が見ても美しい人ほど、誰のものでもない形で場に置く必要があります」
赤染衛門が筆を構えた。
「つまり」
「個人の恋の道具にしない。御殿の儀礼、しつらえ、印象を高めるために使う」
小少将が頷く。
「美貌を、場の一部にする」
「はい」
若菜が香炉の灰をならしながら言った。
「強い香を薄めて、場に馴染ませるようなものですね」
「良い比喩です」
澄子も言う。
「灯も、一つだけ強すぎると他が見えません。全体が美しく見える明るさがよいです」
「その通りです」
花橘の君は少し笑った。
「私は、香と灯の仲間になったのですね」
「藤壺では、かなり重要な仲間です」
「それなら、悪くありません」
赤染衛門が、最後の一行を書いた。
――美しき人は、争いの種とせず、御殿の趣を照らすものとする。
西施の名は、美の象徴です。けれど、その美が権力と欲望に利用された時、国は傾きました。
だから藤壺では、西施を作りません。美貌を持つ女房を責めない。隠さない。腐らせない。ただし、個人戦の武器にはしない。
交渉の矢面に立たせず、儀礼の場に置く。近すぎる微笑を避け、御殿全体の品格へ変える。恋の火種を、場を照らす灯に変える。
花橘の君は、その後、藤壺の儀礼演出役として見事に働きました。女房たちは、彼女の美貌を羨むだけでなく、配置や距離の取り方を学ぶようになりました。
常盤は、恋愛騒動が減って少し物足りなそうでしたが、リスク管理上は喜ぶべきです。
菅原の君は、花橘の君を主人公に悲劇を書きかけて止められていました。紫式部は、その様子を静かに見て、何かを物語に沈めていた。
私は思います。美しさは、罪ではない。でも、美しさをめぐって人が勝手に物語を作り、欲望をぶつけ、誇りを賭け始めると、罪より厄介なものになります。
だから必要なのは、美貌を責めることではありません。美貌の置き場所を設計することです。
呉は滅んだ。藤壺は傾けない。
人を奪い合うための美ではなく、人を集わせるための美へ。
それが、藤壺の流儀です。
〜 出典 〜
『呉越春秋』勾践陰謀外伝
十二年越王謂大夫種曰、孤聞呉王淫而好色、惑亂沈湎、不領政事。因此而謀、可乎。種曰、可破。夫呉王淫而好色、宰嚭佞而曳心。往献美女、其必受之。惟王選択美女二人而進之。越王曰、善。乃使相者國中、得苧蘿山鬻薪之女。曰西施鄭旦。飾以羅穀、教以容歩、習於土城、臨於都巷、三年学服而献於呉。
(テスト向け訳文)十二年、越王は大夫の種に言った。「私は聞いている。呉王は酒色に溺れ、政治を顧みなくなっているそうだ。この隙を突いて計略を巡らせれば、呉を滅ぼせるだろうか。」種は答えた。「滅ぼせます。呉王は女好きで、宰相の伯嚭はへつらい者で欲深い人物です。美女を献上すれば、必ず受け取るでしょう。ですから王は、とびきり美しい娘を二人選び、呉へ送り込んでください。」越王は言った。「よし。そこで国中に人を遣わして探させたところ、苧蘿山で薪を売って暮らしていた娘を見つけた。それが西施と鄭旦であった。二人に美しい絹の衣を着せ、礼儀作法や美しい立ち居振る舞いを教え、都で三年間にわたって教育を施したのち、呉へ献上した。
〜 舞台背景 〜
西施(せいし、生没年不詳)は、中国の女性。美人として知られ、王昭君・貂蝉・楊貴妃を合わせて中国古代四大美女といわれる。本名は施夷光。中国では西子ともいう。紀元前5世紀、春秋時代末期の諸曁(現在の浙江省紹興市諸曁市)生まれだと言われている。現代に広く伝わる西施と言う名前は、出身地である苧蘿村に施と言う姓の家族が東西二つの村に住んでいて、彼女は西側の村に住んでいたため、西村の施という由来から西施と呼ばれるようになった。越王勾践が、呉王夫差に、復讐のための策謀として献上した美女たちの中に、西施や鄭旦などがいた。貧しい薪売りの娘として産まれた施夷光は谷川で洗濯をしている姿を見出されたといわれている。策略は見事にはまり、夫差は彼女らに夢中になり、呉国は弱体化し、ついに越に滅ぼされることになる。出典:wikipedia




