四十二 王昭君、左遷ではなく外交官
地味な女房が地方の貴人に嫁がされそうになり、周囲から「都落ち」と笑われる。彰子は王昭君の故事を語り、遠方へ行く女性は犠牲者ではなく、文化を運ぶ外交官になれると励ます。さらに嫁ぎ先で役立つ知識・贈答術・文書作法を教える。女房は誇りを取り戻し、彰子の評判は地方へ広がる。
「都を離れる」と聞くと、人はすぐ負けだと思う。
前世でも、そういう空気はありました。本社から地方支社へ。花形部署から現場へ。東京から地方拠点へ。企画から実務へ。中央から、遠い場所へ。
もちろん、本人が望まない異動ならつらいと思います。慣れた人間関係も、情報の入り方も、評価のされ方も変わる。都心の会議室では見えていたものが見えなくなる。逆に、見たくなかった現実が見えるようになります。
でも、それを周囲が勝手に「左遷」と呼ぶのは違います。人の人生は、距離だけで格付は出来ません。遠くへ行くことは、終わりではない。むしろ、そこでしかできない仕事があります。
文化を運ぶ。情報をつなぐ。都の作法を地方へ伝える。地方の実情を都へ戻す。双方の誤解を減らす。それは立派な外交です。
……という話を、まさか平安宮中の女房にする日が来るとは思いませんでした。
その日、藤壺の空気は少しざらついていました。原因は、一人の女房です。名を、浅茅の君といいます。控えめな人でした。
目立つ美貌ではない。歌合で前へ出るタイプでもない。清少納言のように一言で場をさらう機知もない。紫式部のように深い物語を書くわけでもない。
でも、よく見ています。誰が疲れているか。どの文がまだ返されていないか。几帳の位置が少しずれていないか。香が強すぎないか。紙が湿気を吸っていないか。そういう細かなことに気づく女房でした。
藤壺の仕組みが増えるにつれ、こういう人材はとても大事になっていました。派手ではない。でも、いなくなると困る。
前世の会社で言えば、部署の地味な実務を全部つないでいる人です。その人が休むと、初めて全員が「あれ、これ誰が分かるの?」となるタイプです。
その浅茅の君に、縁談が来ました。相手は、地方の貴人。都からは遠い。家柄は悪くない。むしろ、地方ではかなり力を持つ家らしいです。
でも、宮中の女房たちの反応は冷たかった。
「まあ、遠国へ?」
「それはまた……寂しいこと」
「都を離れるのですものね」
「藤壺にお仕えしていたのに、地方の館へ下るとは」
「実質、都落ちではございませんこと?」
言葉は柔らかい。でも、棘があります。都にいることが上。地方へ行くことが下。帝の近くにいることが価値。遠ざかることは負け。そういう前提が、空気の中にありました。
浅茅の君は、最初は微笑んでいました。けれど、その笑みは薄かった。目の奥が少し揺れている。常盤がそっと私に報告してきました。
「定子方の女房たちも、噂しております」
「何と?」
「『藤壺の地味な女房には、遠国がお似合い』と」
菅原の君が扇を握りしめた。
「ひどいですわ」
小少将も眉を寄せる。
「地方へ嫁ぐことが、それほど笑われることでしょうか」
春枝は紙箱を抱えたまま不安そうに言った。
「でも、都を離れれば、紙も文も届きにくくなりますね」
有子が真面目に補足する。
「情報も遅れます。宮中の作法と地方の作法では違うことも多いでしょう」
若菜が小さく言う。
「香の材料も、同じようには手に入らないかもしれません」
澄子は灯を見ながら呟いた。
「夜の暗さも、都とは違うのでしょうね」
女房たちの声は、だんだん心配に変わっていった。でも、浅茅の君本人は黙っている。その沈黙が、痛かった。私は扇を手に取った。
ぱちり。
藤壺が静まります。
「浅茅の君」
「はい」
彼女は静かに頭を下げた。
「あなたは、この縁談をどう思っていますか」
周囲が息を呑みます。こういう場で本人の気持ちを聞くのは、意外と珍しいかもしれません。縁談は家と家の話であり、女房本人の感情は後回しにされがちだからです。
でも、私は聞きました。聞かずに励ましても、それは押し付けになります。浅茅の君は、しばらく黙っていました。やがて、小さな声で言いました。
「怖うございます」
「何が怖いですか」
「都を離れることも、知らぬ家へ入ることも、怖うございます。けれど……」
「けれど?」
「皆様に、都落ちのように言われることが、一番こたえます」
藤壺が静かになった。
「私は、華やかな女房ではございません。ここでも目立つことはできませんでした。だから、遠国へやられるのだと……そう思われているようで」
菅原の君が泣きそうになる。常盤が悔しそうに唇を噛む。赤染衛門は筆を置いた。浅茅の君は、さらに言いました。
「私自身も、そうなのかもしれないと思ってしまいます」
これは、危険です。他人の言葉は、繰り返されると内側に入ります。
「地味」
「都落ち」
「遠国がお似合い」
そんな言葉を浴び続けると、自分でもそう思い始める。評価の毒です。私は静かに言いました。
「浅茅の君。王昭君を知っていますか」
「おう、しょうくん……でございますか」
女房たちも首を傾げました。唐物や漢籍に詳しい者は少し反応したが、多くは知らない顔です。私は続けます。
「漢の時代、王昭君という女性がいました。宮中にいた女性ですが、遠い北方の国へ嫁ぎました」
菅原の君が身を乗り出します。
「遠い国へ……」
「ええ。伝承では、彼女は美しいにもかかわらず、宮中で重く見いだされず、遠方へ送られたとも語られます」
浅茅の君の顔が少し曇る。その反応を見て、私はすぐに続けました。
「でも、私はそれだけの話だとは思いません」
赤染衛門が、静かに筆を構えた。
「姫様」
「はい」
「覚になりますね」
「なります」
「題は」
「王昭君、左遷ではなく外交官」
「……また難しい言葉が」
「外交官、だめですか」
「意味は分かりますが、雅に直します」
「お願いします」
赤染衛門は少し考え、筆を置いた。
「『遠方へ嫁ぐ女房の役目を考える覚』でいかがでしょう」
「採用します」
浅茅の君は、戸惑ったように私を見る。
「私に、役目があるのでしょうか」
「あります」
私は即答した。
「都を離れる女性は、ただ送られるだけの人ではありません。文化を運ぶ人です」
藤壺の女房たちが、少しざわめく。
「文化を、運ぶ」
「ええ。都の言葉、文の作法、贈答の礼、香の扱い、衣の色、物語の読み方、季節の感じ方。あなたが身につけてきたものは、嫁ぎ先では価値になります」
浅茅の君の目が揺れた。
「私が、価値を?」
「はい」
「けれど、私は目立った才もなく……」
「目立つ才だけが価値ではありません」
私は少し強めに言いました。
「あなたは、場を見る力があります。人が疲れていることに気づく。物の置き場を整える。文の遅れを見逃さない。香や灯の加減を見る。それは、遠い土地で家を整える時に必要な力です」
有子が頷いた。
「浅茅の君は、記録の抜けにもよく気づいてくださいました」
春枝も言う。
「紙の湿りを見て、箱の位置を変えてくださったこともございます」
若菜が続ける。
「香が強すぎる時、私より先に気づいてくださいました」
澄子も小さく頷く。
「灯の煙が人の方へ流れていると、いつも直してくださいました」
小少将が微笑む。
「几帳の陰で顔色が悪い者に、そっと座る場所を変えてくださいましたね」
浅茅の君は、目を見開きました。自分では当たり前だと思っていたことを、周囲が覚えていました。その驚きが、顔に出ています。私は言いました。
「それは、外交に向いています」
「外交……」
「遠い家に入る時、まず必要なのは、華やかに目立つことではありません。相手の場を読むことです。何を大切にしている家か。誰が実務を握っているか。どの習慣を尊重すべきか。どこに都の作法を入れれば喜ばれるか」
赤染衛門の筆が走ります。
「無理に都風を押しつければ、嫌われます。何も持ち込まなければ、あなたの価値が伝わりません。相手を見て、少しずつ橋をかけるのです」
浅茅の君は、じっと聞いています。
「王昭君は、遠方へ嫁ぐことで、二つの世界をつなぎました。物語では悲しみが強調されることもあります。けれど、遠くへ行く女性は、犠牲者で終わる必要はありません」
私は微笑んだ。
「あなたは、藤壺の文化を運ぶ外交官になれます」
浅茅の君の顔が、少し変わった。都落ちの女房。地味だから遠くへやられる人。その言葉の上に、新しい名前が置かれた。文化を運ぶ外交官。
名前が変わると、役目が変わる。役目が変わると、背筋が変わる。常盤が小声で言いました。
「左遷が、急に格好よくなりました」
「左遷ではありません」
「失礼しました。赴任です」
「まぁ近いです」
赤染衛門がすかさず雅に直す。
「『遠き地への御役目』で」
「それです」
ここから、藤壺は一気に実務に入った。いつものことです。感動だけで終わらせない。励ましたなら、準備までやる。
「まず、嫁ぎ先で役立つ知識を整理します」
有子が筆を構える。
「一つ、相手方の家系。二つ、土地の産物。三つ、都との文の往来にかかる日数。四つ、季節ごとの贈答品。五つ、避けるべき話題」
有子が真剣に書く。
「避けるべき話題も、でございますか」
「重要です。都の感覚で地方を下に見る言葉は禁句です」
浅茅の君が頷いた。
「はい」
「『都ではこうです』ばかり言わないこと。代わりに、『藤壺ではこのようにしておりましたが、こちらではいかがでしょう』と尋ねる」
赤染衛門が補足する。
「押しつけず、差し出す言い方ですね」
「そうです」
次に、贈答術。春枝が目を輝かせる。
「紙ですか」
「紙も含みます」
「含みます!」
「喜びすぎない」
私は浅茅の君に向き直りました。
「地方では、都の紙や香が喜ばれることがあります。でも、高価すぎるものをいきなり贈ると、相手に負担をかけます」
春枝が真面目に頷く。
「贈り物は、重すぎても困らせますね」
「ええ。最初は、季節の文に小さな香や薄様を添える程度。相手が返しやすいものにします」
小少将が言う。
「衣の色目も、都の流行をそのまま押しつけるのではなく、その土地の景色に合わせるとよろしいかもしれません」
「素晴らしい」
若菜が続ける。
「香は、材料が違えば同じものは作れません。土地の香木や草花を知って、そこに都風を少し混ぜるのがよいかと」
「それです」
澄子が言う。
「灯や室内のしつらえも、寒さや湿気で変わるでしょう。都と同じ明るさにしない方がよいかもしれません」
「大事です」
菅原の君が、感動した顔で言った。
「浅茅の君が、遠い地で小さな藤壺を作るのですね」
「小さな藤壺を押しつけるのではありません」
「では」
「その土地に合う、新しい場を作るのです」
浅茅の君は、ゆっくり頷いた。
「新しい場……」
最後に、文書作法です。これは重要です。
地方へ行った後も、都とのつながりを保つには文が必要です。しかも、文は単なる近況報告ではありません。情報であり、関係維持であり、評判作りです。
「月に一度、藤壺へ文をください」
私が言うと、浅茅の君は驚いた。
「私が、姫様へ?」
「はい」
「よろしいのですか」
「もちろんです」
常盤が身を乗り出す。
「地方情報網ですね」
「言い方」
「地方の風聞を、淡く都へ」
「少し黙りましょう」
赤染衛門が微笑んだ。
「しかし、常盤の言うことにも一理ございます。遠方の様子を知ることは、藤壺にとっても価値があります」
「そうです」
私は浅茅の君に言った。
「季節、産物、土地の習慣、女性たちの暮らし、都の物語や香がどう受け止められたか。そういうことを書いてください」
「私が見たことを、ですか」
「あなたの目で見たことを」
浅茅の君の目に、少し光が戻った。
「私の目で」
「ええ。あなたの目は、細かいところに気づきます。それは藤壺に必要な情報です」
赤染衛門が覚に書き加える。
――遠き地よりの文は、都を離れた嘆きのみならず、その地の趣と人の心を知らせるものとする。
「さすがです」
「ありがとうございます」
準備は数日にわたって続いた。有子は、嫁ぎ先の家系と文の宛名書きの控えを作った。春枝は、重すぎない贈答用の紙を選び、季節ごとに分けた。
若菜は、都の香をそのまま持たせるのではなく、土地の香と合わせやすい基本配合を書いた。澄子は、灯と湿気の扱いを簡単にまとめた。
小少将は、地方の景色に合いそうな色目の案を作った。菅原の君は、物語を語る時に相手を疲れさせないよう、短く話す要約を作ろうとして、長くなりすぎて赤染衛門に削られた。
常盤は、誰に文を送れば都とのつながりが保てるか、人間関係図を作った。紫式部は、浅茅の君のために短い文を書いた。それは、華やかな餞別の歌ではありませんでした。
遠い土地で、知らぬ風に吹かれても、自分の目で見たものを信じなさい。
そんな意味の、静かな言葉でした。浅茅の君は、それを大切に懐へ入れていました。
出立の日。
藤壺の女房たちは、いつもより少し早く集まりました。浅茅の君は、以前より背筋が伸びていた。
不安が消えたわけではありません。怖いものは怖い。都を離れる寂しさもある。
でも、その顔はもう「都落ち」と笑われて傷ついた女房の顔ではありませんでした。任務を持つ人の顔でした。私は彼女に、小さな箱を渡しました。
「これは?」
「藤壺の紙と、香と、文の控えです。多すぎないようにしました」
春枝が横で少し不満そうだった。
「本当はもっと入れたかったのですが」
「重すぎます」
「はい……」
若菜が小さな香包を差し出す。
「寂しい時に、少しだけ焚いてください。でも、その土地の香も、きっと好きになってください」
澄子が言う。
「灯が合わない時は、芯を短く。明るすぎると疲れます」
小少将が笑う。
「土地の山や川の色を、衣に取り入れてみてくださいませ」
有子が文の束を渡す。
「宛名と日付は、こちらに。困った時は、この順に」
常盤が小声で言う。
「噂は、すぐ信じず、三人から聞いてから」
「常盤が言うと説得力がありますね」
「はい」
菅原の君は泣いていた。
「浅茅の君、いつかあなたの遠き地の物語を聞かせてくださいませ」
「はい」
浅茅の君も少し涙ぐんだ。最後に、赤染衛門が言った。
「都の作法は、あなたの鎧ではなく、橋にしてください」
浅茅の君は深く頭を下げた。
「はい」
私は彼女を見つめる。
「浅茅の君」
「はい」
「あなたは下るのではありません」
周囲が静かになる。
「運ぶのです。藤壺で学んだこと、あなた自身の目、細やかな手、そのすべてを」
浅茅の君の目に、涙が浮かんだ。
「行ってまいります」
「行ってらっしゃい」
その背を見送りながら、私は思った。王昭君も、きっと怖かっただろう。遠い国。違う言葉。違う風。違う習慣。都から離れる寂しさ。自分が選ばれたのか、送られたのか分からない苦しさ。
それでも、彼女は歴史に残った。悲劇の美女としてだけではなく、境界を越えた女性として。浅茅の君も、そうなれる。誰かに笑われた「都落ち」を、自分の役目に変えられます。
――数か月後。
浅茅の君から、最初の文が届きました。紙は少し粗い。でも、丁寧に選ばれていた。香は都のものとは違う。土地の草の匂いが混じっていました。
文には、嫁ぎ先の家の様子が細かく書かれていた。都の香は珍しがられたこと。しかし強いものより、土地の草花に合わせた淡い香が喜ばれたこと。
文の作法を少し整えたら、女性たちが自分でも季節の文を書くようになったこと。都の物語をそのまま読むと長すぎるので、短く語り、続きは次の夜にしたら皆が集まるようになったこと。
土地の織物の色が美しく、小少将に見せたいこと。そして最後に、こうあった。
――私は、こちらで小さな橋をかけ始めたように思います。
藤壺の女房たちは、その文を聞いて泣いた。菅原の君は当然泣いた。春枝も紙を見て泣いた。若菜は香に泣いた。
小少将は織物の話で泣きそうになった。常盤は「これは良い噂になります」と言って泣かなかったが、目は潤んでいた。
有子は丁寧に控えを取った。赤染衛門は、静かに文を閉じた。紫式部は、少しだけ微笑んだ。
その後、浅茅の君の評判が、地方から都へ戻ってきた。
「都から来た女房が、館を見事に整えている」
「文の書き方を教えてくれる」
「香が上品だ」
「押しつけがましくなく、こちらの習慣も大切にする」
「藤壺に仕えていた方らしい」
藤壺の名が、都の外へ広がりました。宮中の評判だけではありません。地方の有力者の家に、藤壺の文化が根を下ろし始めたのです。
浅茅の君は、都落ちの女房ではなくなった。藤壺から派遣された文化外交官です。
……と心の中で言うと、赤染衛門に見透かされた。
「姫様」
「はい」
「また妙な役職名をお考えですね」
「少しだけ」
「雅に直すなら、『藤壺の趣を遠き地へ伝うる人』でしょうか」
「完璧です」
私は扇を手に取った。女房たちがこちらを見る。
「都を離れることは、負けではありません」
赤染衛門が筆を構える。
「どこへ行くかより、何を運ぶか。何を見て、何をつなぎ、何を戻すか。それが人の価値を決めます」
有子が浅茅の君の文を大切に箱へ収める。春枝が、その文に合う紙を選んで返事の準備をする。若菜が、地方の草花に合う香を考える。
小少将が、土地の織物に合わせる色目を思い浮かべる。常盤が、噂を少しずつ正しい方向へ流す。菅原の君が、浅茅の君の遠き地の物語を書こうとして、赤染衛門に「本人の許可を」と止められる。
紫式部は、静かに一行を書いた。
――遠方へ嫁ぐ女房の役目を考える覚。
左遷ではありません。都落ちでもありません。犠牲者でもない。文化を運ぶ人。橋をかける人。遠い場所で、新しい場を作る人です。宮中の誰かが笑った道を、藤壺はキャリアに変えました。
そして、その道の先から届いた一通の文こそが、都のどんな噂よりも、静かで、強い返事でした。
〜 出典 〜
『西京雑記』巻二・王昭君
元帝後宮既多、不得常見、乃使畫工圖形、按圖召幸之。諸宮人皆賂畫工、多者十萬、少者亦不減五萬。獨王不肯、遂不得見。匈奴入朝、求美人爲閼氏。於是上按圖、以昭君行。及去召見、貌爲後宮第一、善應對、舉止閑雅。帝悔之、而名籍已定、方重信於外國、故不復更人。乃窮案其事、畫工皆棄市。
(テスト向け訳文)元帝の後宮にはすでに多くの女性がいたため、皇帝は一人ひとりに会うことができなかった。そこで絵師に宮女たちの肖像を描かせ、その絵を見て、夜のお相手を選んでいた。宮女たちは皆、絵師に賄賂を贈った。多い者は十万銭、少ない者でも五万銭は渡していた。しかし、王昭君だけは賄賂を渡そうとしなかった。そのため、皇帝に一度も召されることはなかった。やがて匈奴が朝廷を訪れ、皇帝に「王妃となる美女を一人いただきたい」と願い出た。元帝は肖像画を見て王昭君を選び、匈奴へ嫁がせることにした。ところが、出発前に実際に王昭君を見てみると、彼女は後宮でも第一の美貌の持ち主であり、受け答えは見事で、立ち居振る舞いも上品だった。元帝は深く後悔した。しかし、すでに王昭君を送ることは正式に決まっており、外国との約束を破るわけにはいかなかったため、別の女性に替えることはできなかった。そこで元帝は徹底的に調べさせ、肖像画を描いた絵師たちが賄賂を受け取っていたことを突き止めた。絵師たちは全員、斬首の上、棄市(さらし首)に処した。
〜 舞台背景 〜
王 昭君(おう しょうくん、紀元前51年 - 紀元前15年)は、中国生まれの官女で後に匈奴の君主呼韓邪単于、復株累若鞮単于の妻(閼氏単于妻)。姓を王、諱は檣(『漢書』匈奴伝下)または嬙(『西京雑記』)、字を昭君。後世に晋の司馬昭に贈られた避諱により王明君・明妃ともいう。通常は王昭君と呼ばれるが、地元(フフホトの方)では単に昭君と呼ばれている。荊州南郡秭帰(現在の湖北省興山県)出身で、楊貴妃・西施・貂蝉と並ぶ古代中国四大美人の一人に数えられる。史実上の実在ははっきりしないが、平和と中国の為に我が身を捧げた自己犠牲的女性だとの解釈が多い。。出典:wikipedia




