二十七 泣く女房、笑う彰子
新人女房が古参から雑用を押しつけられ、泣いている。彰子は『落窪物語』の継子いじめのような構図だと見抜き、雑用を可視化する表を作る。誰が何をどれだけしているか明らかになると、古参女房の搾取が露見。彰子は罰するのではなく、仕事を公平に分配し、得意分野で評価する制度を作る。
いじめは、たいてい美しくありません。
当たり前です。
美しいいじめなど、あってたまるものではありません。けれど宮中では、ときどきそれが美しい布に包まれます。
指導。作法。慣例。年長者の教え。若い者への試練。御殿のため。姫様のため。
そういう言葉をかぶせると、ただのいじめが少しだけ正当なものに見えてしまう。
前世でもありました。
新人だから雑用は当然。若いのだから動いて。まだ仕事が分からないのだから、これくらいやって。先輩の背中を見て覚えて。私たちも昔はそうだった。
はい。出ました。
「私たちも昔はそうだった」。
危険な言葉です。自分が苦しんだことを、次の人にも味わわせる理由にしてしまう。もちろん、雑用そのものが悪いわけではありません。
誰かが部屋を整える。紙を運ぶ。水を用意する。灯を替える。使った道具を片づける。文を届ける。香炉を掃除する。そうした仕事がなければ、御殿は回りません。雑用は、御殿の土台です。
問題は、それが見えないことです。
見えない仕事は、軽く扱われる。軽く扱われる仕事は、弱い人に押しつけられる。押しつけられた人は疲弊する。疲弊しても、誰も気づかない。
これが、いじめになります。
感情の問題だけではありません。業務設計の問題です。
……などと言うと、赤染衛門に「また御殿を役所になさるのですか」と言われそうですが、今回は言わせてもらいます。
いじめは、業務設計で潰せます。少なくとも、潰せる部分があります。
その新人女房が泣いていたのは、藤壺の北側にある小さな控えの間でした。名前は、若菜。最近入ったばかりの女房です。家柄は高くありません。でも、動きが丁寧で、物を扱う手つきが柔らかい。声も控えめで、新入りらしく何でも一生懸命に覚えようとしていました。
ただ、少し気が弱い。頼まれると断れない。
嫌と言う前に、自分が我慢すれば済むと思ってしまう。私は、気になっていました。こういう子は、雑用を抱え込みやすい。そして案の定です。常盤が最初に気づきました。
「姫様。若菜殿が、近頃ずいぶん疲れております」
「何をしているの?」
「雑用が多すぎます」
「誰の分?」
「……いろいろな方の分を」
常盤の言い方に、含みがありました。
「いろいろ?」
「はい。特に古参の一部女房から、細かな用をかなり頼まれているようです」
赤染衛門が、眉を寄せました。
「大輔の君や弁の君ではございませんね」
「違います。教育係の方々ではなく、役目が少し曖昧な古参の女房たちです」
私は扇を置きました。役目が曖昧な古参。危険です。
役割が明確な人は、自分の仕事に責任を持ちやすい。
けれど役割が曖昧な人は、自分の存在価値を守るために、下の者へ支配的になることがあります。
もちろん全員ではありません。でも、起こります。
「若菜を呼んで」
「はい」
しばらくして、若菜が来ました。目が赤い。泣いた後です。袖口に水の跡があります。手も荒れています。紙を扱う女房の手ではなく、水仕事をしすぎた手です。
「若菜」
「はい……」
「何を頼まれているのか、教えて」
若菜はびくりとしました。
「いえ、私など、新入りですので」
「教えて」
「でも、皆様のお役に立つことですし」
「教えて」
三度目で、若菜はようやく口を開きました。
「朝は、灯の後始末を。あと、香炉を洗って、紙箱の近くを掃いて、文を届けて、戻ったら水を替えて、御簾の端を直して、昼には古い紙の整理を」
「誰に頼まれたの?」
若菜は口ごもりました。私は声を柔らかくしました。
「叱るためではないわ。見えるようにするため」
「見えるように?」
「ええ。今、あなたの仕事が見えていない」
若菜は、少しずつ名前を挙げました。右近の君。中務の君。兵衛の君。
どれも、古くからいる女房です。
特別な大役はありませんが、長く御殿にいるため発言力はあります。そして、自分たちの細かな用を若菜に回している。典型的です。私は思いました。これは、『落窪物語』の継子いじめに似ています。
落窪の姫君は、継母にひどい扱いを受け、部屋に押し込められ、雑用をさせられ、衣も奪われる。もちろん、若菜はそこまでではありません。でも構図は同じです。力のある者が、弱い者に見えない負担を押しつける。
本人は「仕方ない」と思い、周囲も「新人だから」と流す。そのうち、負担が人格評価にすり替わる。
――あの子は雑用向き。
――気が利く。
――頼みやすい。
――断らない。
違います。それは搾取です。
「姫様」
赤染衛門が低く言いました。
「いかがいたしましょう」
「表を作ります」
「やはり」
「やはり?」
「いえ、予想通りにございます」
今回は、赤染衛門も止めませんでした。若菜は驚いています。
「表、でございますか」
「ええ。誰が何をどれだけしているか、見えるようにする」
春枝が紙を用意しました。有子が筆を取ります。常盤は明らかに楽しそうですが、これは楽しむ案件ではありません。
「常盤」
「はい」
「これは噂ではなく、聞き取り。面白がらない」
「……はい」
少し反省した顔をしました。まず、若菜の一日を書き出しました。朝一番、灯の後始末。香炉洗い。水の交換。紙屑の整理。文の取り次ぎ。御簾の端の直し。女房の衣箱運び。昼の湯の準備。古い紙の分別。夕方の灯の準備。使い終えた筆洗い。夜の香炉片づけ。
多い。多すぎます。
赤染衛門が顔をしかめました。
「これは、新入り一人に寄せすぎでございます」
若菜は小さくなりました。
「私が遅いから、時間がかかるのかと」
「違うわ」
私は言いました。
「量が多い」
次に、誰が頼んだかを書きます。右近の君から三件。中務の君から四件。兵衛の君から二件。その他、名前の出ない細かな用が多数。そして、各仕事にどれくらい時間がかかるか。
これは澄子が観察して補いました。
「香炉洗いは、丁寧にすれば一つにつきかなり時間がかかります。特に強い香の後は」
春枝も言います。
「古い紙の分別は、雑にできませぬ。紙質を見なければなりません」
有子が言います。
「筆洗いも、次に使う者のためには丁寧さが要ります」
つまり、どれも「ちょっとお願い」で済む仕事ではない。積み重なると、一日を食います。私は表の上に題を書きました。
雑務見える化表
赤染衛門が、少しだけ目を閉じました。
「姫様。題が直截すぎます」
「では、御殿支度分担表」
「そちらでお願いいたします」
赤染衛門が雅に修正しました。ただし、私の中では雑務見える化表です。翌日、私は関係する女房たちを呼びました。右近の君、中務の君、兵衛の君。三人とも、古くからいる女房です。
表向きは穏やか。
しかし、若菜が呼ばれているのを見て、少し気まずそうな顔をしました。自覚はあるのです。
「今日は、御殿の支度仕事について確認します」
私は静かに言いました。三人は頭を下げます。
「近頃、若菜に細かな仕事が多く集まっているようです」
右近の君が、すぐに言いました。
「姫様。若菜殿は新入りゆえ、御殿の動きを覚えるためにも」
「覚えることは大事です」
私は遮らず、しかし流されません。
「ですが、覚えるための仕事と、ただ押しつけられている仕事は違います」
右近の君の口が止まりました。中務の君が言います。
「私どもも、昔は先輩方の用を多く」
「そうでしょう」
私は頷きました。
「あなた方も大変だったと思います」
三人が少し意外そうにしました。責められると思っていたのでしょう。
「でも、自分が大変だったことを、次の者へそのまま渡す必要はありません」
部屋が静まりました。私は表を広げました。
「こちらをご覧なさい」
有子が丁寧に書いた表。誰が、何を、何度頼んだか。どれくらい時間がかかったか。若菜の本来の学びの時間がどれだけ削られたか。それが明らかになっています。
三人の顔が変わりました。右近の君は、少し青くなりました。
「これほど……」
中務の君も、口を閉じます。兵衛の君は、目を伏せました。
「一つ一つは小さい」
私は言いました。
「でも、重なると一人を潰します」
若菜は、隣で小さく震えています。
「姫様、私は……」
「若菜は悪くない」
私ははっきり言いました。
「頼まれた仕事を断れなかったことは、今後学べばよい。でも、悪いのは見えない仕事を一人に寄せた仕組みです」
右近の君が唇を噛みました。
「私どもが、いじめたと仰せでございますか」
その問いに、部屋が緊張しました。ここで「そうです」と言えば、感情の争いになります。違うと言えば、若菜の苦しみを消すことになります。だから私は、少しだけ笑いました。
「いじめかどうかは、心の中を覗かねば分かりません」
三人がこちらを見ます。
「でも、結果として若菜に負担が偏っていました」
私は表を指しました。
「心がどうであれ、偏りは直します」
感情を裁くのではない。業務を直す。それが今回の方針です。次に、仕事を分類しました。雑用、と一言で片づけない。御殿を回す支度仕事として、種類を分けます。
一、灯火管理
二、香炉管理
三、水・湯の準備
四、紙屑と古紙の整理
五、文の取り次ぎ
六、筆洗い
七、御簾・座の整え
八、衣箱や調度の移動
九、新人教育のための同行作業
十、緊急の用
赤染衛門が読み上げると、女房たちは静かに聞いていました。
「これらは、誰かがやらねばならない仕事です」
私は言いました。
「だから、軽んじません」
若菜の目が揺れました。
「ただし、一人に寄せません」
私は続けます。
「仕事ごとに担当を分けます。得意な者が主となり、日ごとに補佐を交代する」
春枝が紙関係。
香炉は澄子が管理方針を作る。筆洗いは有子が手順を教える。灯火は弁の君の指示のもと交代制。文の取り次ぎは常盤が注意事項をまとめる。衣箱の移動は小少将が必要時に人を割り振る。新人教育の同行は大輔の君が計画する。
そして、若菜は全部を一人でやるのではなく、各仕事を順番に学ぶ。
「若菜」
「はい」
「あなたには、まず香炉と紙の扱いを学んでもらいます。手つきが丁寧だから」
若菜が目を見開きました。
「私の手つきが……?」
「ええ。雑に扱わないところは、強みです」
若菜の目に涙が浮かびます。
「雑用向き、ではなく?」
「違う。丁寧な仕事に向いている」
同じ行動でも、評価の言葉で意味が変わります。
「頼みやすい子」として消費するのではなく、「丁寧な仕事ができる子」として育てる。これが大事です。私は右近の君たちを見ました。
「あなた方にも役をお願いします」
三人は驚きました。
「私どもに?」
「ええ。右近の君は灯火の扱いが上手い。中務の君は座の整えに慣れている。兵衛の君は文の取り次ぎで失礼が少ない」
三人の表情が変わりました。責められると思っていたところへ、得意分野を言われたのです。
「それぞれ、手順を若い女房たちに教えてください」
右近の君が、戸惑いながら言いました。
「罰では、ないのですか」
「罰したいわけではありません」
私は答えました。
「仕事を正しく配りたいのです」
中務の君が目を伏せました。
「しかし、若菜殿へ負担をかけたのは事実にございます」
「そうね」
私は頷きました。
「では、まず謝りなさい」
部屋が静まりました。三人は、若菜へ向き直りました。右近の君が頭を下げます。
「若菜殿。私の用を多く頼みすぎました。すまぬことをしました」
中務の君も。
「私も、自分の忙しさを言い訳にしておりました」
兵衛の君も、静かに頭を下げました。若菜は、泣きそうな顔で何度も首を振りました。
「いえ、私こそ、遅くて」
「違う」
私は言いました。
「謝罪を受け取る時、自分を悪くしない」
若菜がはっとしました。
「はい……」
「謝った人の責任まで、あなたが持たなくていい」
若菜は、涙をこぼしながら頭を下げました。
「はい」
支度仕事の分担は、すぐに効果を出しました。まず、若菜の顔色が戻りました。全部を抱えなくてよくなったからです。香炉の扱いでは、彼女の丁寧さが本当に活きました。灰を整える手つきが静かで、香の残り方にも気づく。
澄子が感心しました。
「若菜殿は、香炉の底に残る匂いをよく覚えておりますね」
「強い香の後は、少し苦みが残る気がして」
「それは大事です。次の香を邪魔します」
若菜の顔が少し明るくなりました。春枝も、紙の扱いを教えます。
「この紙はまだ使えます。こちらは下書き用へ。こちらは燃やす前に確認」
「はい」
「手が丁寧です。急がず、でも迷いすぎず」
「はい」
若菜は少しずつ、自分の仕事に誇りを持ち始めました。
一方、右近の君たちも変わりました。
最初は気まずそうでしたが、自分の得意分野を教える役を得たことで、ただ新人に用を頼む立場ではなくなりました。右近の君は灯火の扱いを教えます。
「灯は明るければよいものではありません。御簾の内では、影が強すぎるとお顔が疲れて見えます」
中務の君は座の整え。
「座は、身分だけでなく、その日の役目で少し変わります。筆を取る者は、光が入る側へ」
兵衛の君は文の取り次ぎ。
「文を受ける時は、相手の前で香を強く嗅ぎすぎないこと。あまりに値踏みして見えます」
なるほど。彼女たちにも、確かに知識があります。それが、今までは「自分の仕事を新人に回す」形でしか出ていなかった。
役割を与えれば、知識は教える力になる。これもまた、再配置です。ただし、すべてがすぐに美しく解決したわけではありません。
古参の中には、不満も残りました。
「昔は、若い者が雑用をするのが当然でしたのに」
そう漏らす人もいました。
私はそれを聞いて、全員を集めました。
「若い者が支度仕事を学ぶのは大事です」
私は言いました。
「でも、学びと押しつけは違います」
女房たちは静かに聞いています。
「支度仕事は、御殿を支える大切な仕事です。だからこそ、誰か一人に隠して押しつけるものではありません」
私は続けました。
「新人にさせるなら、何を学ばせるためかを明らかにする。終わったら教えた者が確認する。できるようになったら評価する」
赤染衛門が頷きます。
「雑務を教育に変えるのですね」
「そう」
「見えない負担を、見える技能に」
「その通り」
これが大事です。雑用という名前をやめる。支度仕事。基礎仕事。御殿を保つ技能。そう名前を変えるだけでも、扱いが変わります。
「ただし」
私は少し声を低くしました。
「誰かを泣かせてまで仕事を押しつけることを、藤壺では認めません」
部屋が静まりました。
「『昔はそうだった』は理由になりません」
右近の君たちが、静かに頭を下げました。これで、線は引けました。罰ではない。でも、許容もしない。藤壺の基準を示す。
数日後、若菜が私のもとへ来ました。
「姫様」
「どうしたの」
「香炉の灰を整えました。澄子様に見ていただき、次の香が立ちやすいと」
「よかったわね」
若菜は、小さく笑いました。前より少し、顔が明るい。
「私、ずっと、何でも頼まれるのは自分に価値がないからだと思っておりました」
「うん」
「でも、姫様が、丁寧な仕事に向いていると仰ってくださって……」
彼女は袖を握りました。
「初めて、自分の手が嫌ではなくなりました」
私は少し黙りました。自分の手が嫌ではなくなった。それは、大きなことです。いじめは、人に自分を嫌わせます。自分が鈍いから。自分が弱いから。自分が断れないから。自分が役に立たないから。
そう思わせる。
でも、本当は構造が悪いことも多い。若菜の手は、悪くなかった。ただ、使われ方が悪かったのです。
「これから、香炉係の補佐をお願いします」
「はい」
「ただし、抱え込みすぎないこと」
「はい」
「困ったら早めに言う」
「はい」
若菜は、深く頭を下げました。その夜、赤染衛門と心得をまとめました。題は、支度仕事を分かつ覚。内容はこうです。
一、雑用と呼んで軽んじない。御殿を支える支度仕事と見る。
二、誰が何をどれだけしているか、見えるようにする。
三、一つ一つは小さくても、重なれば一人を潰す。
四、新人に任せる仕事は、何を学ばせるためかを明らかにする。
五、押しつけではなく、教育と確認を添える。
六、古参の経験は、新人を使うためではなく教えるために使う。
七、謝罪を受ける者は、相手の責任まで背負わない。
八、昔つらかったことを、次の者へ渡す理由にしない。
九、得意分野で役割を与え、評価する。
十、泣く者が出た時は、心だけでなく仕事の流れを見る。
赤染衛門が最後の一文を書き終え、静かに言いました。
「姫様。これは、とても大切な覚にございます」
「ええ」
「御殿が大きくなるほど、見えない仕事は増えます」
「そうね」
「今のうちに整えておくべきことでした」
私は頷きました。藤壺は、ずいぶん仕組みを作ってきました。紙箱。歌会。衣。香。恋文。物語。漢籍。地方情報。牛車動線。健康管理。でも、それらを支える日々の支度仕事が偏っていれば、御殿は歪みます。
大きな制度より、小さな掃除や灯の準備が、人を追い詰めることもある。そこを見なければならない。
深夜。私は一人、香炉を見ていました。若菜が整えた灰は、確かに美しい。表面がなだらかで、香が静かに立つ。派手な才ではありません。でも、こういう手が御殿を支えます。
落窪の姫君は、物語の中で救われます。
でも現実には、誰かが見つけなければ、泣いている新人はそのまま沈みます。王子様のような少将が来るとは限らない。ならば、御殿の中で救う仕組みを作るしかありません。
私は扇を閉じました。
泣く女房、笑う彰子。
笑う、といっても、若菜を笑ったわけではありません。いじめを雅な慣例に包んでいる構図を見た時、少し笑ってしまったのです。
ああ、また構造が悪い、と。
なら、構造を直しましょう。感情論で怒鳴ることもできます。誰かを罰することもできます。でも、それだけでは、また別の新人が泣くかもしれません。
だから、仕事を見えるようにする。誰が何をしているかを明らかにする。押しつけを教育へ変える。古参の力を支配ではなく指導へ変える。新人の弱さを、丁寧さという強みに置き直す。
いじめは、感情だけで起こるのではありません。
見えない仕事、曖昧な役割、断れない空気、昔からの慣例。そうしたものが絡んで起こります。
ならば藤壺は、そこをほどきます。明日も御殿が静かに回るように。誰かの涙が、見えない仕事の底に沈まないように。
藤壺は、支度仕事まで見える御殿になります。
〜 出典 〜
『落窪物語』継子いじめ
北の方、「常に着せ奉れど、はふらかし給ふにや、飽くばかりもえ着継ぎ給はぬ」と申し給へば、「あなうたてのことや。親にとく後れて、心もはかばかしからずぞあらむかし」といらへ給ふ…
〜 舞台背景 〜
『落窪物語』(おちくぼものがたり)は、10世紀末頃に成立したとされる中古日本の物語である。全4巻。作者は不明[1]。源順、源相方などが候補に挙がっており、巻四は清少納言が書き加えたとする説まであるが、いずれも確定に至っていない。題名の「落窪」は、主人公の薄倖な女君が置かれた居室の名前に由来する。美しい容貌を持つ主人公の落窪の女君が、その名の通り寝殿の隅にある、畳の落ち窪んだ陋屋に住まわされ、継母からのいじめにあうが、結末は右近の少将に見初められ結ばれるという、シンデレラとも似通った構図を持つ継子いじめ譚。『落窪物語』は『源氏物語』に先立つ中古の物語で『枕草子』にも言及がある。恩讐のけじめをはっきりさせているやや単純な筋ながらも、継子いじめの筋を軸に、当時の貴族社会を写実的に描写した物語として評価されている。出典:wikipedia




