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銀の姫君と蒼の魔法使い  作者: 苫古。
とある侍女の手紙
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第2の月・水麗月(ユマ) 13日



親愛なるお姉さまへ



 今日ね、妙なものを変態王子から押し付けられたのよ、お姉さま。

 丸い薄紫の石を嵌め込んだ、小さな金の台座のブローチなの。

 侍女服のサッシュに付けて欲しいって言いながら、あの男、あたしを捕まえて勝手に付けちゃったのよ。

 もちろんその場で、こんなの要らないからお返ししますって、抗議したんだけど。

 でもね、ハーヴェ・ルドがあたしを気の毒そうな目で見降ろしながら、ちょっぴり小馬鹿にした口調で言うの。

 今、このブローチはこんなに流行ってるのに、君だけ持ってないのが気の毒で、って。


 …… 確かにね? 最近、このブローチを身に着けている子が、すごく多くなってるのは本当なの。

 色はみんなそれぞれ違うんだけど、デザインは一緒で。とっても綺麗で、ずーっと羨ましいと思ってたわ。

 でも、どうしてかしら。

 持っている子は、みんなどこで買ったのか教えてくれないの。

 一度だけ、どうやって手に入れたのって聞いてみたことがあるんだけど、「秘密ッ」って笑って誤魔化されちゃった。


 だから正直、もう手に入らないって諦めてたこのブローチが手に入って、すごく嬉しかったの。

 結局、にこにこしてしまいそうなのを必死で自制しながら、お礼を言って受け取ったわ。仕方ないですね、っていう顔を一生懸命作ったんだけど、ちゃんと出来てたかしら?

 ハーヴェ・ルドも、少しはいいところがあるのか…… どうかは未だ謎だけど、今回はちょっぴり嬉しく思ったのでした。



 このまま、あたしに関わらなくなってくれれば、もっと嬉しいんだけど。




ご機嫌なあなたの妹、クレア=ハイルより




追伸

 今日、ブローチを着けていたら、いろんな人たちに「どうやって手に入れたんだ」と聞かれました。

 ストーカー王子から貰ったものとは言いにくいので、あたしもみんなのように「秘密ッ」と答えておいたわ。

 ほんとに…… これは何としても守り続けなきゃいけない秘密よ、お姉さま。






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第2の月・水麗月(ユマ) 15日



親愛なるお姉さまへ



 忙しくて、先日書いた手紙を出せていなかったので、今日の手紙も一緒に同封します。


 前の手紙に書いていたブローチなんだけど、流通が多くなったのかしら?

 というのも、もう2つも新しいブローチを手に入れたからなんだけど。


 夕べ、エルストに呼び出されたの。

 食堂に居たところを、突然つかまったのよ。あたしたち使用人の食堂と、魔道師団の食堂は別だから、目立つことこの上なかったわ。

 普段は、表立ってあまり関わりを持たないようにって、散々言ってるクセにね。変なエルスト。

 妙に焦ってるみたいだったから、魔女様関連のことで何かあったのかと思ったんだけど、どうもそうじゃなかったみたい。

 これから図書館で借りてきた本を読むからイヤ、って断ったんだけど、エルストは食い下がるし、周りの侍女仲間も「行け! 何がなんでも行け!」って煩くて。


 そして、連れて行かれた例の裏庭で、新しいもう一つのブローチを貰ったの。

 今度のブローチには、灰色の石が入っていたわ。台座は、同じ金色。

 あの時、柔らかい石の色合いが何かに似てると考えていたんだけど、そういえばこの色、エルストの瞳の色と同じなんだわ。珍しい石色だけど、偶然ね。


 何はともあれ嬉しかったわ。

 だから、さっそく王子から貰ったブローチの横に着けていると、エルストが何とも奇妙な表情で見てくるので、あたし、どうかした? って聞いたの。

 すると、そのもう一つのブローチをどうやって手に入れたのか、って。


 お姉さま。その時のあたしが答えられるはずもなく、ひたすら黙秘を貫くしかなかったって、容易に想像して貰えるわよね。

 …… 前から、ずいぶんとハーウェ・ルド被害にあってる話を聞かせてきたのに、これを当の王子から貰っただなんて、口が裂けても言えないでしょう?


 いつも通りにだんまりで交わそうとしたんだけど、何をどうしたのか、エルストったらやたらしつこく問い詰めてくるし。

 その時の気分は、この前裏庭に行ったことを不条理に責めてきたハーヴェ・ルドの時と同じだったわ。

 本人にもそう言ってやったら、どうしてかピタリと口を閉じちゃった。

 どうも、何かを真剣に考え込んでるみたいだったから、その隙に、ブローチのお礼だけ伝えて帰ったの。



 そんなわけで、あたしは2つ目のブローチを手に入れたわけだけど。



 なんと、びっくり!

 今朝、いつものように神殿の礼拝堂へ行った先で、すっかり話友達になっている例の神官さまから、もう1つ頂いちゃったの。


 今度のは、水色の石がとっても綺麗。


 澄んだ明るい色合いが、本当に清らか。

 まるで神官さまみたいですね、とお礼の言葉と一緒に伝えたら、何だかものすごく照れていらっしゃったわ。

 やっぱり、人生を掛けて女神様に仕えようという崇高な志を持つ方は、内面が清らかでいらっしゃるのね。

 ああいう殿方も世の中にはいるんだって思うと、心の底から安心できる今日この頃です。


 どこかの王子にも、見習って欲しいものだわ。




とってもご機嫌なあなたの妹、クレア=ハイルより




追伸

 今朝、うきうきと3つのブローチを着けていたら、モナエや他の侍女たちから、悪女扱いを受けました。

 どうしてよ!


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