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永遠にレベル1の俺だけ、格上補正が消えない〜経験値が全部SPに変わる呪いスキル『停滞』で、上には行けないけど横にはどこまでも強くなる〜  作者: かしおり
第2章「盗人と霊薬」

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9/11

第9話 備えの夜

 ギルドから戻ったその夜。


 俺は宿の自室にこもり、明日から挑む格上狩りに向けて、腰を据えて“備え”を整えることにした。


 偽装のおかげで、俺の秘密は、ひとまず守られた。

 次に潜るのは、初級――Dランクの、赤錆坑道。

 出てくる魔物は、レベル16から30。永遠にレベル1の俺から見れば、どれもこれも、桁違いの格上だ。


 ②の仮説――格上ほど、SPが跳ね上がる。それを確かめるには、絶好の狩り場だろう。


 ……だが、格上ということは、裏を返せば、油断すれば、あっさり死ぬということでもある。


 だから、飛び込む前に。

 今の自分の手札を、いちど、きちんと並べて見直しておきたかった。


「ステータス、オープン」



ステータス────────────────

クロウ

LV 1

HP 108/108

MP 115/115

ATK 4

DEF 103

MAG 116

MND 115

AGI 122

LUK 118


・固有スキル

停滞 LV1


・取得スキル

風魔法 LV1 魔力強化 LV1 HP強化 LV1 防御力強化 LV1

MP強化 LV1 敏捷強化 LV1 幸運強化 LV1 精神力強化 LV1

鑑定 LV1 毒耐性 LV1 麻痺耐性 LV1 睡眠耐性 LV1

回避アップ LV1 索敵 偽装 LV3


・装備

旅装のマント(DEF+10 AGI+5) 守りのブローチ(石化無効)


SP 34▽

────────────────────



 こうして並べてみると、我ながら、ずいぶんと妙なステータスだ。


 LVは、1のまま。

 なのに、能力値は、そこらの新人冒険者とは比べものにならない。

 魔法で当てる前に殺し、高い敏捷と幸運で被弾を避ける。その戦い方の土台は、もう、できている。


 だが、赤錆坑道の魔物は、レベル20前後。

 今のMAG116では、一撃で仕留めきれない相手も、出てくるかもしれない。

 鑑定も、LV1では、名前とレベルしか見えない。格上の手の内を読むには、心許ない。


 ……磨くべきところは、まだ、いくらでもある。


 SPは、34。

 偽装に大きく使ったばかりだが、それでも、これだけ残っている。


 この34を、どう振り分けるか。



 俺は、SPの横で光る、▽に意識を向けた。


 一覧には、まだ取っていないスキルの取得候補に混じって、いま持っているスキルを“鍛える”――レベルアップの項目も、並んでいる。


 この仕組み自体は、もう知っていた。昼間、ギルドで偽装を、LV3まで引き上げたばかりだ。取るのは安いが、鍛えるとなると跳ね上がる――と、その身で、味わったばかりだった。


 だが、こうして腰を据えて、必要なSPを、端から端まで、じっくり見比べるのは、初めてだ。



 取得したてのスキルを、LV2に上げるのに必要なSPは、4。

 LV3には、16。

 そして、その先――偽装を上げた俺すら、まだ届いていない領域。

 LV4には、64。

 そして、LV5には――256。


 ……見事なまでの、四倍刻みだ。


 新しくスキルを“取る”のは、たったの1で済むのに。

 それを“鍛える”となると、SPは、一段ごとに、跳ね上がっていく。


 思えば、偽装を、LV3まで引き上げただけでも、ごっそりとSPが消えていった。道理で、あれだけ余裕のあった手持ちが、一気に、心許なくなったわけだ。


 なるほど。

 これが、この世界のスキルというものの、深さであり、重さ、ってわけか。



「まずは、足りない手札を、補うか」


 迷わず、二つ。



《スキル「MP回復速度アップ」を取得しました。》


《スキル「隠密」を取得しました。》



 MP回復速度アップは、長丁場の狩りに欠かせない。魔法を撃ち続けるには、MPの戻りが速いに越したことはない。

 隠密は、身を隠すためだ。人の出入りもある格上のダンジョンで、狩る相手を選び、危ない相手をやり過ごすには、これがいる。


 取得SPは、どちらも、1。

 締めて、2。……SPは、残り32だ。



「次は、鍛える番だな」


 まずは、俺の主砲――魔力強化。


「スキル取得……いや、スキルレベルアップ。『魔力強化』」



《スキル「魔力強化」のレベルが2になりました。》


《MAGが100上昇しました。》



 必要SPは、4。

 これで、魔力強化による上昇量は、+100から+200へ。MAGは、116から、216になった。

 格上を一撃で焼き切る、その火力が、また一段、上がった。


 ――残り、28。


 続けて、鑑定だ。


「スキルレベルアップ、『鑑定』。……二段階、一気に上げる」



《鑑定のレベルが2になりました。》


《鑑定のレベルが3になりました。》



 LV2に、4。

 LV3に、さらに、16。

 合わせて、20ものSP。取得の、実に二十倍だ。


 だが、その価値はある。

 これで鑑定は、相手の名前とレベルだけでなく、能力値も、持っているスキルも、そして――落とす品まで、見通せるようになった。

 格上と戦うのなら、この“目”は、何より心強い。


 ――残り、SPは、8。



「……よし。今夜は、ここまでだ」


 本当は、魔力強化を、もう一段、鍛えたかった。

 だが、LV3には、あと16。今の手持ちでは、まるで届かない。


 それに、その先は、LV4に64、LV5に256、と続く。

 生半可なSPを注いだところで、焼け石に水にもならない。


 大きく鍛えるのは、格上をたっぷり狩って、SPを稼いでからでいい。

 種火は、もう、十分に用意した。

 あとは、赤錆坑道という薪を、くべていくだけだ。



ステータス────────────────

クロウ

LV 1

HP 108/108

MP 115/115

ATK 4

DEF 103

MAG 216

MND 115

AGI 122

LUK 118


・固有スキル

停滞 LV1


・取得スキル

風魔法 LV1 魔力強化 LV2 HP強化 LV1 防御力強化 LV1

MP強化 LV1 敏捷強化 LV1 幸運強化 LV1 精神力強化 LV1

鑑定 LV3 毒耐性 LV1 麻痺耐性 LV1 睡眠耐性 LV1

回避アップ LV1 MP回復速度アップ LV1 索敵 隠密 偽装 LV3


・装備

旅装のマント(DEF+10 AGI+5) 守りのブローチ(石化無効)


SP 8▽

────────────────────



「うん。……こんなもんだろ」


 スキルの数は、十七。

 LVを一つも上げていないのに、この手札の分厚さは、我ながら、常識外れだ。


 誰も知らないSPという資源を、独りで積み上げ、横へ、横へと、広げていく。

 その一枚一枚が、格上に挑むための、確かな“備え”になる。


「明日から……格上狩りだ」


 窓の外、Dランクのダンジョンが待つ、山あいの方角を、俺は静かに見つめた。


 停滞という横道は、まだ、始まったばかり。


 だが、その道を歩くための足腰は――少しずつ、けれど確かに、鍛え上がってきていた。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は【20時】に更新します。


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