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「俺は王様になる男だ!」という勘違い男と結婚させられました。なれるわけないんです。だって彼は…。  作者: 佐古鳥 うの


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3、玉座が俺のものになるなら貴様を妻と呼んでやってもいいぞ。



そこからの記憶は曖昧だった。

両親が捕らえられ俺も騎士達に羽交い締めにされ身につけていたものをすべて剥ぎ取られた。

そのままタウンハウスに連れて行かれたが自室ではなく何もない客室で外から鍵をかけられた。


それから何日も閉じ込められたまま過ごした。食事は一日一回しかなくそれも両手で持てるくらいの盆に乗せられるだけしか用意されない。

品目も少なく味もなく家畜の餌よりも酷い内容だった。


しかし我儘を言っても変えてもらえないことは最初の数回で理解したので仕方なく食べた。

こんな冷めきった不味いものをこの俺に食べさせるなんて不敬だ。外に出たらこれを作ったヤツと指示したヤツを罰してやる!


そんな怨念を糧に日々を無意味に暮らしていたらある日食事の時間以外でドアの鍵が開いた。


やっと解放される!と喜んで出たが部屋の外は俺の屋敷とは思えないくらい空っぽになっていて別の家に見えた。思い出深い品々もすべてなくなり哀しくなった。

部屋に戻りたいと言っても許されず水を浴びせられ、好みではない服を着させられ、髭も乱暴に剃られ髪も適当に後ろに撫でつけられただけだった。


そうして連れてこられたのは久しぶりの王宮で謁見の間だった。

玉座に座る叔父上は何年も会ってなかったわけではないのに一気に老け込んでいて具合が悪そうだった。


「シンプリント。お前に訪ねたいことがある。リリエンヌ王女の手紙が届いたことはあるか?」


「?いえ、閉じ込められてからというもの部屋を出ることも誰かと会うこともできませんでした。

あ!叔父上聞いてください!私は不当に閉じ込められ囚人のような暮らしを強いられたのです!食事は一日一回、この馴染まない質素な服と同じで大公家の嫡男に相応しくない扱いをされました!!」


「ああそうか。それは後で聞こう。閉じ込められる前の話だ。あて先は兄上でもいい。リリエンヌ王女から一度も手紙が届かなかったのか?」


まずいな。もしかして筆跡の確認か?手紙のやり取りどころか結婚証明書のサインすら覚えていないぞ。

だが手紙のやり取りをしていないのは本当なので正直に答えると叔父上の顔色が益々悪くなり宰相達の顔色も青くなっていった。


どうやら先日亜人連合の捕虜となっていたホジャマカルタ大公家の使用人と領地の代官を解放してもらい引き取ったのだがどうもあの女からの手紙が有る無しで今の状況が変わると言うのだ。


しかも代官と使用人達で意見が食い違っていて、代官はあの女から手紙を受け取り大公家に送ったと言い、使用人達は受け取っていないと言う。


ということはアレはまだ人質生活を送っているということか!

俺がこれだけ苦しい思いをしているのだから名ばかりでも妻であるアレが苦しくひもじい生活をするのは当然と言えば当然だな!いっそ自分よりもつらい生活であればいい。


そうすればこの鬱屈した気分も少しは晴れやかになるというものだ、とほくそ笑んでいると叔父上に睨まれ背筋を正した。


「今の話を聞いて何がおかしいか気づいたか?」

「おかしい、とは?」

本当にわからず首を傾げると叔父上の目が昏く責めるようなものになった。


「王女からの手紙は人質になる前だ。捕虜だった使用人は全員カントリーハウスに詰めていた。その全員がなぜ王女の手紙を受け取らず代官が受け取り大公家に送っている?」

「そ、それは…」


言い訳を考え目を泳がせたがうまい言葉など出てくるはずもない。リリエンヌを廃虚同然の要塞に閉じ込めるよう命令したのは自分なのだから。

でもまさか本当に誰も世話をしに行かなかったとは思わなかったが。まぁ人望がなかったのだろう。


ここはひとつ殊勝な態度で謝っておこうか。心の底から反省しているように見せれば大抵の人は許されてきたし叔父上も許してくれるだろう。


「私に無礼な態度をとったので反省を促すために要塞に行くよう指示しましたが、使用人達にはアレの世話をするようにと命令も出していました。それを勝手に判断し仕事を放棄したのは使用人達の責任です」


「…はぁ。それはそうだろう。ティメンタ(要塞)に詰めている者は一人もおらず移動命令も出されていないのだからな」


「ホジャマカルタ大公家の執事が言うにはリリエンヌ王女が連れてきた使用人がいたとのことですが、ルエッタルト王国の者達はリリエンヌ様をホジャマカルタ大公家に送り届けたと後、全員帰国したことを国境警備隊が確認しております」


「そうだな。契約でも我が国に留まるのはリリエンヌ王女のみで他のルエッタルト王国の者が残っているはずかないのだ」


叔父上の諦めのような溜め息にしめしめとほくそ笑む。叔父上も結局甥の俺が可愛いのだ。

アレの手紙に何が書かれていたかは知らないがたいしたことは書かれていないだろう。


「手紙には亜人連合の行動予想と被害を抑える方法、そして会談をするならば通訳をするという申し出が書かれていたそうだ」


代官が中を検めたから間違いないらしい。


「会談?亜人と?はっバカバカしい!奴らが我が国の言葉を理解できるはずがない!そんな知能など備わってないのですから。時間の無駄ですよ」

「ああ。我々もそう思っていた。一ヶ月前まではな」


一ヶ月前、国王軍が大敗し敗戦が決定したという。その手紙を事前に知っていれば対策をたてることもこちらが有利な状態で和平交渉に持ち込むこともできたかもしれなかったと嘆かれた。


「そんな、たかが亜人如きに負けるなんて………って、え?叔父上、なぜ手紙の内容を知っているのですか?」


知っているのなら確認など必要なかったのでは?眉をひそめると憐憫の目を向けられた。


「お前がリリエンヌ王女をどう見て、どう扱っていたかを確認するためだ。

シンプリント。お前はなぜリリエンヌ王女と婚姻を結んだ?この婚姻はお前が嫌だと言えば回避できるものではあった。先王も王后もお前にも甘かったからな」


王女である彼女を娶れば王位が手に入ると期待したのだろう?と言われ、ヒュッと息を呑んだ。


「我々もお前を政治の駒として利用したしリリエンヌ王女もある程度は理解しているだろう。お前も利用するつもりで望んで迎えたはずだ。

なのになぜ歩み寄らなかった?なぜ王女を廃墟に閉じ込め命を危険に晒した?反省を促すためと言ったが期間はどれほどと見積もっていた?食事の采配は?生活の世話は?

見知らぬ土地に心細い想いをしていた伴侶をなぜ無礼を働いたなどと嘘をつき誰もいない要塞に閉じ込めた?そんな場所でなぜ王女が一人暮らせると思えた?お前は人の心がないのか?」


お前は望んで娶っておきながら死ねと言ったのだぞ、と責められたじろいだ。だがそれ以上に怒りが湧いた。


「……アレが、アレが呪われた王女だからです。私に相応しい聡明で美しい王女なら大切にしていました。呪われた王女など次期国王になる私に相応しくない!!」


そこまで言ってハッと我に返る。恐る恐る叔父上を見れば目を伏せていて俺を見ていなかった。


「…私は救うべき相手を間違ったのだな。それが敗因だったのだろう」


意気消沈したまま叔父上は退位を宣言した。まさかこのタイミングで言われるとは思わず戦慄した。そして心臓がバクバクと騒ぎだした。

この重要な場にいるのはシンプリントと宰相達重鎮のみだ。ここには叔母上も甥っ子達もいない。成人していないことも含めて呼ばれなかったのだろう。


だとすれば。

もしや。

ここで次の王位の指名があるのでは。と期待した。


この中で自分が一番王位継承権が高い。あれだけ言われたのに都合の悪いことは頭の隅に追いやり蓋を閉めて見えなくしていた。

そのためシンプリントは目を輝かせながら『シンプリントに王位を継がせよう。国王を任せられるのはお前しかいない』という言葉を今か今かと待ちわびた。



『話し合いは終わったか?』

けたたましい音と共に大扉が開かれ闖入者が現れた。


俺は驚き尻餅をついたが急いで立ち上がり、急いで警戒態勢を取ってから撃退するよう騎士らに命令した。が誰も聞かなかった。


おい!俺は次期国王なんだぞ?!なぜ命令した通りに動かない?!

そう怒ったが彼は自国が敗戦したことをすっかり忘れている。


侵入者は五人。一人は顔を隠すベールを被っており全身黒いドレスを纏っているから女ということしかわからなかった。それ以外は全員亜人の姿をしている。


一人は血のような赤い髪を持つ鬼でもう一人は恐ろしい角と牙を持ち褐色の肌をした大男、執事のような格好をした白髪の鬼、肩に梟を乗せた小柄で陰険そうな顔つきのドラゴニュートだった。


「わきゃっ」

『……チッ話にもなんねーな』


神聖な場に穢れた亜人が足を踏み入れるな!と威嚇するように叫んだら大男に張り手を食らわされ壁まで吹っ飛んだ。

危うく死ぬところだったが白髪の鬼が治癒魔法をかけてくれた。だが能力が低いのか複雑骨折した体までは治してはくれなかった。


痛い痛いと騒げば沈黙の魔法をかけられどんなに口を開いても声にはならなかった。なんて奴らだ。この外道め!


『今日からこの国は我が国の属国と相成った。文句も不満もあるだろうが恨むなら己の無力さと、戦の女神がいたにも関わらず埋もれさせ勝てるかもしれなかった機会をみすみす逃した己の見る目の無さを恨むことだ』


黒いドレスの女は通訳なのか言語が違う赤鬼の言葉をこの国の言葉で話した。流暢な話し方と正しい発音にこの国の者か?と訝ったが声を出そうにも音が出ず問いただせなかった。


「約束は守ります。ですから家族は…」

『貴様がこの国の王だったな。継承権を放棄し人里離れた場所で大人しく生涯を終えると約束するなら応えよう。継承権を放棄しない者とお前はこの世界から退場してもらうがな』


なんと!王子達が継承権を放棄すると聞こえた。ならばならば!やはりこの俺が次の国王なのでは??


『他の貴族も我らに服従するならばこれ以上の血を流さないと約束する。だがその場しのぎで甘言を宣い、反乱の機会を伺うようならば許さない。

俺達鬼族は嘘を見破るスキルを持っている。騙そうとしたヤツは他よりも制裁が重くなることを覚悟しろ』


叔父上が玉座を降り臣下が立つ場所で膝をついた。宰相らも続き立っているのは亜人だけとなった。空いた玉座には赤鬼にエスコートされた黒いドレスの女が座りベールを脱いだ。


「次の国王が決まるまでの間、繋ぎとしてわたくしがこの国を管理することとなりました。

実権はドラゴンが治めるドゥイーダルダが握ることになりますが管理は同種族でというのがあちらの習わしですので人族が選抜されるでしょう。

引き継ぎまでに復興と人員整理をする予定です。生き延びたければ無駄口を叩かず真面目に働くことをお勧めします」


「…まかさお前、リリエンヌか…?」


生意気な口調、愛嬌をどこかに落としてきた陰気な顔、不快な声。どれもが気に食わなくて記憶から消去していた名ばかりの妻だ。

そうだ、こんな顔をしていたなと見ていると死んだような虚ろな目がこちらに向いた。


「なぜ、貴様のようなヤツが玉座に…」

「仮初の立場です。先程も申しましたが次の国王が決まるまでの繋ぎであり、あちらの言語を話せ意思疎通ができるから選抜されただけです」

「だとしても貴様は他国の者ではないか!……そうだ!この私が玉座に座ってやろう!その玉座は正統な王位継承者である私に相応しいものだ!!」


正しいものを正しい形に戻す。それがあるべき形だと訴えたのに女は怪訝な顔をするだけで返事をしなかった。地頭が悪いからか俺の言葉が理解できていないようだ。

その程度の覚悟でよく玉座に座ろうと思えたものだ。亜人に唆されて調子に乗り、面白がって座ったのだろうが玉座はそんな軽いものではない。

まぁ甘やかされて育ってきた、なんの責任もない底辺の王女だから玉座の重みも理解していないのだろう。


「処刑されたいのですか?継承権を放棄しなければ処刑すると宣言されたばかりですが」

「何を言っている!貴様如きが玉座に座れるのならば貴様の夫であり正統後継者の俺が玉座に座るべきだろう!そのほうが歴代王家も父上や母上もお喜びになるはずだ!」


『ダメだな。話にならん』


コイツ頭がおかしいんじゃないか?と赤鬼がジェスチャーするがシンプリントはやはりこいつら亜人共は我々の言葉を理解していないのだと確信した(勘違いした)


「王家を含め周りの方々はこの方を甘やかし続けてきたのですね。いずれ処分するのだから。今だけは見逃してやろう。そうやって目を瞑ってきた。

だからわたくしを助けるよりも戦に賭けてしまわれたのですね」


「返す言葉もありません…」

嘆息を吐くリリエンヌに元国王となった叔父上は白い顔で頭を垂れた。


「手紙の件ですが処分したのはホジャマカルタ大公家の使用人達です。ええ、あなた方が優先的に身代金を用意し解放した嘘つき達ですよ。燃やして証拠隠滅までしたそうです。

わたくしが現状の不満を書き綴ったと勘違いしたのでしょう。もしくは主人に鑑みてもらえないわたくしを見下し嫌がらせをしたかったか。どちらにしても浅慮でございましたね」


『嘘つきの刑はなんだったかの?』

『舌を抜くんじゃなかったか?』

『今後の憂いをなくすためにさっさと首をはねたほうがいいと思う』

『王女の手紙を勝手に燃やしたんだ。それだけでも罪になるのに連絡をわざと遮断し自国を敗戦に導いた。死以外の選択肢などないだろう』


「嘘つき達の処分をこちらで検討したいのですが…まだ守られますか?」

「いいえ。後程…彼らの家族二親等までを引き渡しますのでどうぞご自由に処分なさってください」


「俺の話を聞け!!」


『随分と元気だな。全快させたのか?』

『いえ止血と痛みを感じなくする魔法薬を投与しただけです。量を間違えたでしょうか?』

『自力で沈黙の魔法を解くとかどんだけ喋りたいんだよコイツ。喋らないほうがもう少し長く生きれたかもしれないのに』

『生きたくないんだろ?自国の窮状を知らず遊び呆けていたそうじゃないか』

『ああそういう……死ぬなら大人しく死ねばいいのに』


キャンキャン騒いでいたシンプリントを全員が無視していたが、視線を向けられる少し恥ずかしげに咳払いをした。



「ゴホン!おい…いや我が妻よ!よくぞ生きて戻ってきた!だがその玉座は貴様には恐れ多いものであろう。ならば正統後継者であるこの私が貴様の代わりに座ってやろう!だから今すぐそこを退くがいい。

亜人共には自分よりも相応しい高貴な血筋で夫であるこの俺が座るべきだとうまい具合に伝えておけ。無能な貴様でもそれくらいはできるだろう?何問題はない。下賤なそいつらは我が国の言葉を理解できないほど低能なのだからな!」


この言葉も理解できず「我々を讃えて笑っているのだろう」勘違いするだろうからな!ははははっ!と笑ったが追従する者はいなかった。


おかしい。いつもなら『さすがはシンプリント様です』、『シンプリント様の仰るとおりですわ』と小リス達が笑ってくれていたのに。


そこでこの場にいるのが高位貴族の男達ばかりだということに気づいた。そういえばシャシャリデールはどこだ?と見回したが自分好みの愛くるしい姿の令嬢はどこにもいなかった。






【シャシャリデール・ポンコツード子爵令嬢】

享年十六歳。親から発破をかけられてたのと沢山貢いでもらうために肉体関係を許していたことが判明。またセビルリタ(シンプリントの母)が子爵から賄賂を受け取っていたことを暴露したため父娘仲良く首と胴体がさよならした。

愛称を先に考えてから名前決めたんですがシャシャリデールって思ったよりも違和感なくていい名前だなと(笑)シャシャも可愛い。


どうでもいい話ですが、パパ活の本番有りってパパ活大人って言うの初めて知りました。P活って普通っぽく聞こえるからそれは改名してほしいなぁ。

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