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第二章 一ノ谷の戦い 決戦前

 平家は木曽義仲に大敗して都落ちし、西国へ逃れていた。

 だが、義仲と頼朝が争っている間に、平家は着々と復権の準備を重ねていた。


 平家の戦術というのは、まず先手として、一族とその直参からなる強力な部隊が敵に一撃を加える。

 そして体勢を崩した敵軍を、大量に集めたかり武者(雇い入れた武士)によって掃討するというものだった。


 この必勝態勢が築けなかった富士川の戦いや倶利伽羅峠(くりからとうげ)、篠原の戦いなどと違い、この時期の平家では平知盛(たいらのとももり)や重衡(しげひら)といった強力な武将が勇躍した。

 体力を使う城攻めでの勝利が続き、疲労からか知盛が重衡と前線を交代するほどに勝ち続けた。


 一方の源氏軍は、頼朝はいまだ鎌倉に鎮座していた。

 このころには、弟の範頼・義経に前線部隊と京の治安維持を任せる方針が固められていたと思われる。

 その京の近く、福原(ふくはら)(現在の兵庫県神戸市付近)に平家の軍が集結していく。


 戦場の南側は瀬戸内海である。この時はすでに平家が制圧している。

 戦場の中央が福原。平家の本陣がある。

 東側が生田(いくた)。ここへ範頼の大手軍(主軍)が東側から攻め込んだ。

 西側が一ノ谷(いちのたに)。こちらは義経率いる搦(から)め手軍が攻め込んだ。


 少々滑稽だが文字を図にして簡単に表現すると、


―――――――――――――――山―――――――――――――

義経軍→(一ノ谷) | (福原)平家本陣 | (生田)←範頼軍

―――――――――――――――海―――――――――――――


 というような位置関係になる。


 この戦いの中央部分は福原であり、鎌倉軍の主軍は東(生田)の範頼軍なのだが、とかく西の一ノ谷が注目される。

 ただし、「鵯越の逆落とし」は地形や描写のおかしさなどから、創作ではないかという意見が根強い。


 一応吾妻鏡にも逆落としのことは書かれているのだが。

 少数の兵で崖を馬で駆け下りただけで戦況を決定的に有利にできるかというと疑問であるため、本作では玉葉を中心史料にして書いてある。

 そちらのほうが、いちかばちかの逆落としなどよりずっと効果的で、源氏軍を勝利へ至らしめたことに納得される戦術であるからである。


 ただし戦闘の様子については、軍記物語の描写も参考にさせていただく。

 

全然小説っぽくなくてすみません。

前回の義仲編で決戦前が長かったので、テンポよく進められればと思い…


富士川の戦いは、水鳥が飛び立つ羽音に驚いて平家軍が逃げ出した…ということで有名なやつですが、あれは単に平家軍が臆病だったとは限らなくて。


文中にあるように、平家の必勝戦術というのは、「直参郎党軍が一撃くらわして、大量のかり武者で平押し」みたいな形だったようなんですが、富士川の時って福原遷都やらなんやらのせいで大手軍の進発やかり武者の動員が遅れたようなんですよね。

そうすると平家直参軍団が敵に突っ込んでも、孤立してやられちゃうかもなわけで、いつもの必勝戦術が使えないわけです。

なので、水鳥が騒いで敵が奇襲にきたっぽいとなると、平家の大将としても「今戦ったら兵数も少ないし不利だ、引こう」と判断しても別におかしくはないと(武家の評価は結果がものをいうので、なんにせよ勝てなければ清盛は怒ったでしょうが)。


倶利伽羅峠でも大敗した平維盛、水島の負けについてもぼろくそいわれることが多いので、ちょっとフォローでした。

福原遷都による混乱はそもそも清盛さんのせいですよ、と。


実際、上記戦術が可能な時の平家は強い強い。

それを裏づけるのが、本文中にある、知盛が過労になるほどの進撃ぶり。

ただこの時本当に連戦(しかも城攻め)だったようで、知盛はだいぶ大変だったでしょう。



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